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頻回の経過観察の検査は大腸がんサバイバーに有益か

がんの再発を調べる経過観察の検査を年に1回以上実施しても、治療を受けた大腸がんの患者に有益でない可能性があることが最近実施された2つの研究結果で明らかになった。

 

がん治療を受けた人への経過観察の検査すなわちサーベイランスの目標は、再発の早期発見と早期治療により患者の生存率を改善することであるが、頻回に検査を実施しても再発の発見率またはがんによる死亡は変化しないことが5月22日JAMA誌に発表された2つの研究結果で明らかになった。

 

遠隔部位に転移していない大腸がんと診断された人はほとんどが外科手術で治癒可能であるが、通常術後3年以内に再発する患者もいる。

 

大腸がん治療が終了した人は、再発をできるだけ早期発見するため定期的に通院し画像検査(CTまたはMRIスキャンなど)やがんの増殖の有無を示す物質であるCEAを検出する血液検査を受けている。しかし、現在の診療ガイドラインは、推奨するサーベイランス検査やその回数について食い違いがある。

 

例えば、全米総合がん情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)は、ステージⅡまたはⅢの結腸または直腸がんの治療を受ける患者は5年間に6~12か月毎のCTスキャンを受けることに加え2年間に3~6か月毎、その後さらに3年間に6か月毎のCEA検査を受けることを推奨している。

 

「(これらの研究から得た)データにより、私たちがグループとして再び集合して、ガイドライン改定の要否を検討することを余儀なくされたことは間違いない」とシカゴ大学医療センター(University of Chicago Medical Center)の腫瘍専門医のBlase Polite医師は述べた。

 

この最新の研究やその他の研究の結果に基づき、「画像検査およびCEA検査を年に複数回実施しても生存率を有意に改善する効果をほとんど示さないというエビデンスが現在かなり多い」とノースカロライナ大学チャペルヒル校のHanna Sanoff医師はこの2つの研究の論説に記載した。

 

最善の大腸がんサーベイランス戦略とは

これら2つの新しい研究の目的は、サーベイランスの回数が多いと大腸がんの転帰に改善が見られるかを判断することであった。この2つの研究はそれぞれ異なる方法で実施された。

 

一つ目は、大腸がんの外科手術を受けた欧州の数か国の2,500人以上を無作為にサーベイランス検査が高頻回か低頻回のいずれかに割り当てた。術後3年後以内に、高頻回群はCTスキャンとCEA検査をそれぞれ5回受けた一方で、低頻回群はこれらの検査を2回受けた。

 

この研究はCOLOFULと呼ばれ、デンマーク大腸がんグループ(Danish Colorectal Cancer Group)の医学博士Peer Wille- Jørgensen氏が指揮した。

 

5年後のがん再発発見率は高頻回群と低頻回群との間に差異は見られなかった。さらに、死亡全体または大腸がんによる死亡は両群に差異がなかったことを研究者は確認した。

 

この研究結果は、がんのステージ毎に参加者を分類した場合でも同様であった。

 

もう一つの研究は、米国の大腸がん治療を受けた、複数の病院から収集した臨床腫瘍データを集めた米国立がんデータベース(National Cancer Database)に登録されている8,500人以上の後ろ向きコホート研究で、NCIが一部助成している。研究者はデータベースおよび、サーベイランス検査と再発に関する追加の情報を用い、がんの外科手術から少なくとも5年間の患者へのケアを追跡した。

 

「患者が受けた(経過観察の)検査の回数に極めて大きな差異があることが分かり」、患者の経過観察を受けた施設が検査の回数に強く影響を与えていると研究責任者のテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGeorge J. Chang 医師は説明した。

 

研究者たちは各施設を高頻回サーベイランス施設と低頻回サーベイランス施設のいずれかに位置づけた場合、低頻回サーベイランス施設の患者は平均で3年間に画像検査を1.6回、CEA検査を1.6回受けたことが明らかになった。高頻回サーベイランス施設の患者は平均で3年間に画像検査を2.9回、CEA検査を4.3回受けた。当初、進行大腸がんで治療を受けた患者は平均の検査の回数が多かった。

 

高頻回施設で検査を受けた患者でも、がんのステージに関係なくがんの再発がより早く発見されることはなかったことがChang医師らによって明らかになった。また、がん再発治療率も高頻回施設と低頻回施設の患者との間で有意な差は見られなかった。

 

全生存率についてもサーベイランスの頻度の影響を受けておらず、参加者の5年生存率は高頻回と低頻回施設ともに約74%であった。

 

これら2つの研究結果で明らかになったのは、腫瘍の性質がサーベイランスの回数に勝っていることであるとPolite医師は語った。進行の遅い大腸がんは「2年や3年でそれほど大きく変化しないため」、年に1回のサーベイランス検査でも「恐らく好機を失わない」とPolite医師は語った。サーベイランス検査を受けて次の年に受けるまでに急速に転移する大腸がんは利用可能な治療に効果を示す可能性はいずれにしても低いとPolite医師は説明した。

 

大腸がんの治療を受け、再発のリスクを高める特定の要因を持っている人はより高頻回にサーベイランスを受けるのが適切な場合があるとPolite医師はつけ加えた。そして、「詳細がさらに分かれば,最終的にリスク毎に適用するガイドラインに行きつくと思う」と語った。

 

重要だが不完全な研究

これら新たに実施された研究は重要であるが制約があるとSanoff医師は指摘した。例えば、COLOFULの研究者は研究デザインを変更し、参加者数を増やして研究が完了できるようにしたとSanoff医師は言及した。

 

また、COLOFULは欧州で実施されたため、「米国人の食習慣や運動の習慣を考慮してこの研究結果を米国の集団に適用できるかどうか」という問題があるとPolite医師は語った。

 

Chang医師の研究は、検査を高頻回または低頻回で受けた患者の転帰を比較するというよりは、検査を高頻度施設または低頻度施設で受けた患者の転帰を比較したものであったとSanoff医師は言及した。サーベイランスの回数以外に個々の施設で受けた外科的切除の積極性など複数の要因が患者の転帰に影響を与えている可能性があるという。

 

サバイバーと医師にとって重要な点

これら研究結果に基づき、Chang医師らは、大腸がん治療をした人は術後3年間に2回のCTスキャンに加え、6か月毎にCEA検査を受けるべきだという英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence)の推奨に同意した。

 

安心を求め、患者の中にはより頻回にサーベイランスを受けることを望む人もいるが、害のない検査はないとChang医師は指摘した。経過観察の検査は患者に精神的および金銭的な負担を与える可能性がある。さらに、どの検査も偽陽性のリスクが伴い、不要で余計な侵襲的検査を受けることにつながる場合がある。

 

「通院するたびにCTスキャンを受ける必要はない、というメッセージはサバイバーを元気づけるものの一つになるだろう」とChang医師は語る。

 

経過観察で重要なのは、再発を発見することだけでなく、サバイバーが経験することすべてを診ることであるとつけ加えた。この中には、がん治療の毒性について治療を受けた人の観察、健康的な生活を送ることに関するカウンセリングおよび必要であれば心理的サポートと経済的な負担を管理するための適切な資源の提供を含む。

 

このような経過観察の側面は変えるべきでないとPolite医師は語った。

翻訳松長愛美

監修畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター

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