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食後の摂取 ― 前立腺がん治療薬を減量できる可能性

  • 2018年5月22日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

新しい臨床研究の結果から、抗がん剤アビラテロン(商品名ザイティガ)は、指示より少ない用量を低脂肪の朝食後に服用すると、空腹時に薬剤ラベルの指示量を服用する場合と同等の効果を得られることが示唆された。

 

長期的にみて、少ない用量を服用した患者が指示量を服用した患者と同程度の期間生存できるかどうかは、研究では明らかになっていない。しかし、抗がん剤の費用が上昇し続ける懸念があり、本試験の結果は、一部の抗がん剤を食後に服用するという簡単なことが問題の対処に役立つ可能性を示した。

 

小規模臨床試験では、シカゴ大学Mark Ratain医師らは食事が及ぼす影響を利用して、転移性前立腺がん患者の標準治療で用いられるアビラテロンの必要量を減量することができるかを試験した。

 

研究者らは、アビラテロンの標準処方量の1/4を食後に服用した男性患者は、空腹時に指示量を服用した患者と同様に、前立腺特異抗原(PSA)値が減少したと3月28日付Clinical Oncology誌に発表した。PSAは前立腺がんの進行を追跡するバイオマーカーである。

 

アビラテロンには転移性がんの進行を遅らせる効果があるが、市場で最も高価な薬剤の1つであると、本研究の研究者である米国国立がん研究所がん研究センターWilliam Figg上級薬学博士は話した。「私たちは、抗がん剤の異常な高価格を健全化する方法を見つけ出そうとしています。これは利用可能な方法の1つです」と、同博士は述べた。

 

満腹時に少ない用量を

多くの経口薬が食物の影響を受ける。例えば空腹時ではなく食後に服用した方が吸収されやすい。これは、食物内の脂肪分子が胃や腸において薬を効率的に運ぶためであるとRatain医師は説明した。そのため食後に服用した場合、血流中を同じ濃度にするための薬は少なくて済む。

 

食事の影響を強く受ける薬では、この影響を故意に減少させる方法で試験することが多いと彼は続けた。これは摂取した食物の種類や量により生じる患者間の適用量のばらつきを減らすために行われる。

 

アビラテロンに対する食事の影響は以前から知られていたが、薬剤の認可に関わる大規模臨床試験では、患者は空腹時に服用することとなっていた。その結果、薬剤ラベルには患者に空腹時に服用するように表示されている。

 

新しい試験では、反対の方法をとった。研究者らは、他の標準治療中に進行が認められた72人の転移性前立腺がん患者を、表示された指示用量を空腹時に服用する群と、患者が選んだ低脂肪食後に指示用量の1/4の量を服用する群に無作為に割り当てた。

 

12週間の投与後、両群の患者の血中PSA値は同等であり、両群とも標的を攻撃するのに十分な量が投与されたことを示していたとRatain医師は説明した。

 

空腹時服用群よりも少ない用量の食後服用群のほうが血中アビラテロン濃度がやや低かったが、これは薬物への反応を左右するほどのものではないようである。しかし、研究者らはアビラテロンの血中濃度が、空腹時服用群の患者間でより大きく変動することを発見した。

 

両群とも、無増悪期間は平均9カ月であった。

 

食物と共に少ない用量を服用した場合、アビラテロンの効果が長期間持続するかをより大規模な試験で検証する必要があると著者らは記している。

 

ケンタッキー大学Jill Kolesar薬学博士とウィスコンシン大学Glenn Liu医師は試験の結果に関連する論説の中で、医師、患者、保険会社に対し、追跡調査が限定的な小規模試験をもとに用量決定をしないように警告した。

 

アビラテロンの効果を測定するためにPSA検査を用いることは、小規模試験では不確実性を生む可能性がある。というのはPSA検査の結果は通常、病院間で最大20%異なる。さらに、少ない用量の食後服用群に認められる、長期間の血中アビラテロン低濃度が及ぼす影響は、明らかになっていないと彼らは説明した。

 

試験結果はまだ仮のものだが、主治医の注意深い管理下にあるのであれば、費用が原因で空腹時に指示量を服用できない患者に対し、妥当な治療戦略を提示できるとRatain医師は考えている。

 

薬剤用量を調整する他の方法

食事の影響を利用するアイデアは新しいものではないとRatain医師は述べた。

 

これまでの研究では、腎がんおよび肉腫の治療に使用されるパゾパニブ(商品名ヴォトリエント)を食後に投与すると血流に入る薬物量が倍加することが示されてきた。慢性リンパ性白血病患者を対象に行われたイブルチニブ(商品名イムブルビカ)の試験では、食後に服用した場合、体内での処理量がイブルチニブの投与量の約1/3に相当する量増加した。

 

「今日の一部の薬の表示や、販売の方法は、患者から見ると最適のものではないかもしれません」と、Ratain医師はコメントした。

 

一部の薬の必要用量を減らすために行われた研究の対象となっているのは、食事の影響だけではない。他の試験では、体内で薬を分解する代謝速度を遅くする薬剤を抗がん剤とともに服用する試験をしているとFigg医師は指摘した。

 

他にも、本来表示されているよりも体内でゆっくりと分解する抗がん剤を服用する方法や、抗がん薬の使用サイクルを減らす方法も試験可能であるとRatain医師は述べた。

 

Ratain医師らは近年、腫瘍学における費用低減の戦略に関する試験を支援するための非営利組織「the Value in Cancer Care Consortium」を設立した。

 

さらに個別化のすすんだ治療の可能性を有して市販に至った新しい薬のために、多くの患者が年に10万ドル以上の薬を処方される。保険に加入していても、患者は治療のために年間1万ドルを超える治療費の自己負担が必要になる。

 

「私たちはアビラテロンの研究を通じて薬剤費を下げることが実現可能か試しています。そして(これらの方法に取り組み)他の薬の価格も下げようと考えています」とRatain医師は述べた。

翻訳白鳥理枝

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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