受動喫煙率が最も高いのはアフリカ系米国人
米国がん学会(AACR)
経済的に不利な状況下にある13〜19歳の青少年の94%(大部分はサンフランシスコ在住少数民族)は、たばこの煙への曝露に対し特異的にみられるバイオマーカー(NNAL)が測定可能レベルであったとの研究結果が、米国がん学会が発行するCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌で発表された。
「青少年の受動喫煙への曝露は公衆衛生上の課題です。受動喫煙によって呼吸器感染症リスクが上昇し、喘息が悪化し、能動喫煙者になる可能性が高まります」とNeal L. Benowitz医師(カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)内科学および生体工学・治療学の教授、臨床薬理学部長)は言った。「この研究では、経済的に恵まれていない青少年集団の尿サンプルからNNALレベルを測定して、受動喫煙曝露を評価することにしました」。
「過去の研究では、われわれは尿サンプル中のコチニンの有無を確認することにより、本集団の87%がニコチンに曝露していることを示しました」と同氏は付け加える。「今回われわれは、たばこに特異的なバイオマーカーであり肺発がん物質であるNNALを用いたところ、受動喫煙の割合がさらに高いことが確認できました。この検査法では、トマト、ジャガイモ、ナスおよび紅茶などのニコチン含有食品を摂取した結果によるコチニンの可能性は排除されます」。
受動喫煙後、NNALはコチニンよりはるかに長期間、尿中に検出可能であり、また受動喫煙した人々の尿中にのみ存在する、とBenowitz氏は説明した。したがって同氏らはNNALがコチニンと比較して、受動喫煙に対するより高精度なバイオマーカーとなるのか、単に断続的に曝露した青少年を特定する可能性は高いのかを調査した。
研究者らは、ザッカーバーグ・サンフランシスコ総合病院小児保健センターで小児治療を受けた青少年465人の尿サンプル中のコチニンおよびNNALレベルを測定した。 このうち公的健康保険に加入している青少年は91%、健康保険に加入していない青少年は8%であった。人種別内訳は、ラテン系53%、アフリカ系22%、アジア系11%、白人3%であった。
全体で、NNAL検出可能レベルであった青少年の割合が94%であったのに対して、コチニン検出可能レベルであったのは87%であった。つまり、コチニンと比較してNNALバイオマーカーによると、本集団における受動喫煙の割合がさらに高くなることが示された。
過去の研究と同様、能動喫煙のバイオマーカーとして尿1ml中あたり30ng以上のコチニンを一定基準とすると、12%の青少年が能動喫煙者と判定された。82%の青少年については、NNALは検出可能レベルであったが、コチニンは尿1ml中30ngの基準を越えていなかったため、受動喫煙のある非喫煙者と判定された。
能動喫煙者と判定された人の割合は、アフリカ系米国人の青少年が最も多く、32%であった。それに加えて、非喫煙者の尿中NNALレベルもアフリカ系米国人の非喫煙者が最も高く、受動喫煙レベルがより高いことを示唆している。
「われわれのデータは、経済的に不利な青少年集団が、ほぼいたる所でたばこの煙にさらされていることを示しており、新たな公衆衛生イニシアチブによって受動喫煙を減少させる必要性を強調しています」とBenowitz氏は言う。「NNALまたはコチニンを調べる定期的な尿検査と、受動喫煙陽性者へのカウンセリング介入を並行して実施すれば、この公衆衛生上の課題に対処できるのではないか、とも本データは示唆しています」。
Benowitz氏によると、本研究は一つの医療機関で実施されており、また研究集団の大部分が少数民族であったことから、この研究結果は都市部の青少年すべてに当てはまるわけではない。
この研究は、Flight Attendant Medical Research Institute Bland Lane Center of Excellence on Secondhand Smoke(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)、およびNational Institute on Drug Abuse and National Center for Research Resources(米国国立衛生研究所)から資金援助を受けた。 Benowitz氏は、禁煙支援薬の販売または開発をおこなうPfizer社とAchieve Life Sciences社の顧問である。同氏はたばこ会社に対する訴訟で有償鑑定人を務めたことがある。
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