2010/12/14号◆特集記事「タバコの煙がどのように病気を引き起こすかについて、公衆衛生局長官からの報告」 | 海外がん医療情報リファレンス

2010/12/14号◆特集記事「タバコの煙がどのように病気を引き起こすかについて、公衆衛生局長官からの報告」

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2010/12/14号◆特集記事「タバコの煙がどのように病気を引き起こすかについて、公衆衛生局長官からの報告」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年12月14日号(Volume 7 / Number 24)


日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
タバコの煙がどのように病気を引き起こすかについて、公衆衛生局長官からの報告

先週、米国公衆衛生局長官のDr. Regina M. Benjamin氏から、タバコの煙がどのように病気や死亡を引き起こすかについての詳細報告書が発表された。基礎研究をまとめた700ページのレポートでは、直接的であれ間接的であれタバコの煙への暴露は、直ちに身体細胞にダメージを与え、病気や死亡の原因となり得ることが示されている。
「安全なタバコなど無いということがこの報告書で明確になっています」と米保健社会福祉省長官Kathleen Sebelius氏は12月9日の記者会見で述べた。短時間の受動喫煙への暴露ですら、血管にダメージを与え、心臓発作などの心障害を引き起こす可能性がある。国としても「タバコが1本吸われるたびに、国民の健康が損なわれるのです」と同氏は語った。

本レポート『How Tobacco Smoke Causes Disease: The Biology and Behavioral Basis for Smoking-Attributable Disease』(タバコの煙がどのように病気を引き起こすか—喫煙に起因する疾患のための生物学および行動原理)は、歴代の公衆衛生局長官による、喫煙についての報告書の30本目である。このシリーズは、喫煙の有害性についてのエビデンスを綿密にまとめた1964年当時のレポートが転機となり始まった。その後のレポートは主にどの疾患が喫煙によって引き起されるのかに焦点をあてたものであった。

今回のレポートは喫煙に関連するダメージがどのようにして起こるのかに主な焦点をあてた初めてのもので、炎症や酸化ストレスなど類似の分子メカニズムを通して、タバコの煙がほとんどすべての臓器に及ぼす悪影響を詳しく述べている。

「重要なのは全ての米国人が、喫煙がどのように身体に影響するかを理解することです」とBenjamin氏は会見で述べた。一般の人々に対し喫煙による害の科学的な裏づけを説明することで喫煙を減らす試みを促すこと、また何度も禁煙に挑むことになる喫煙者が大半だが、禁煙を試みることをあきらめないように、喫煙によって自身の身体に何が起きているかを生物学的に理解する必要があると同氏は述べた。

Benjamin氏の母親は喫煙者で癌のために死亡し、叔父は喫煙が原因の肺気腫により呼吸介助を要したという。禁煙するのに遅すぎることはなく、早ければ早いほうが良いのだと彼女は強調した。「禁煙によって、身体はタバコから受けたダメージを修復するチャンスを与えられるのです」。

喫煙、あるいは受動喫煙では、7000種類以上もの化学物質や化合物の複合混合物を身体に取り込むことになり、そのうち少なくとも69種類が発癌物質であることがわかっている。それらの発癌性化学物質への暴露のたびにDNAが損傷を受け、癌を生じさせる恐れがある。タバコの煙に含まれる他の化学物質には心臓障害や、肺気腫といった慢性的な肺疾患を招く可能性がある。

【拡大】

「各臓器に与える喫煙の害を列挙していくと、タバコの害についてのエビデンスは圧倒的なものになります。全く恐ろしい物質なのです」とジョンズホプキンス大学の頭頚部癌研究部門の部長で本レポートの筆頭学術監修者であるDr. David Sidransky氏は述べた。

「それは、例えば若年の心臓発作といった私たちが考えてもみないような悪影響です。本当に恐ろしいです」。レポートでは、受動喫煙への暴露が乳幼児突然死症候群に関連しているとのエビデンスも掲載されている。生殖毒性にも言及しており、母親の喫煙による低出生体重児出産リスクの増加といった内容も含んでいる。低出生体重は乳幼児の死亡リスクを高める。

依存症の生物学的研究についても取り上げられている。「このレポートに掲載された研究では、依存症が生物学的、分子生物学的に信じがたいほど複雑であることが示されています。唯一の確実な答えは、タバコに決して手を出さないことです。分子生物学的にも、タバコ中毒になるかどうかは前もってわからないからです」とSidransky氏は述べた。

本レポートは研究者向けであるため、わかり易い言葉で要訳されたイラスト付きの冊子も用意され、スペイン語にも翻訳されることになっているとBenjamin氏は述べた。ページにまとめられたレポートの要訳1には、臨床医が患者の禁煙を手助けするためのアドバイスも書かれており、こちらも入手可能となっている。

Benjamin氏は複数の臨床医を訪問し、訪問先の喫煙患者に、細胞とDNAレベルに変化が起きることを説明し、次のように述べた。「患者に情報を提供し、情報に基づいた決断をしてもらわなければなりません」。

複数の研究で、喫煙者の大半が禁煙したいと考えており、禁煙プログラムやサービスが役に立つことが示されていると、保健社会福祉省の副長官Dr. Howard K. Koh氏は説明した。The national tobacco quitline(禁煙電話相談) 1-800-QUIT-NOWは、そのようなサービスの1つである。Comprehensive state tobacco control programs(州の包括的タバコ規制プログラム)や、受動喫煙への暴露から人々を守る州や地方の法律は有意な効果を上げている。カリフォルニア州は、包括的な州独自のプログラムの他に厳しい禁煙法を全米で一番古くから導入しており、肺癌発症率が他の州より速やかに低下をしているとBenjamin氏は述べた。

それでも喫煙は依然として米国における回避できる死の1番の要因であり、毎年440,000人以上の人々が命を落とす結果を招いている。この新しいレポートは「蔓延する喫煙を終わらせるためのさらなる国家的な推進」への取り組みの1つであるとKoh氏は述べた。

このレポートの知見は、世界中の人々にも届くように期待されている。「公衆衛生局長官のレポートは米国や世界におけるタバコ規制への取り組みの、科学的な根拠となります」とNCIのタバコ規制研究支部のDr. Cathy Backinger氏は述べた。「みなさんの癌リスクを減らす最善の方法は、タバコを吸わない、また他人からの受動喫煙を避けることであると、このレポートは強く訴えています」。

タバコに関する公衆衛生局長官の最初のレポートが1964年に発行されて以来、研究者らのあいだではタバコの煙がどのように病気を引き起こすのか理解が深まってきたと、最新のレポートの寄稿編集者で南カリフォルニア大学予防医学部およびノリス総合がんセンターのDr. Jonathan Samet氏は述べた。

今回のレポートは、タバコについてのメッセージにこれまでと根本的な違いはないが、依存症の生物学的仕組みや依存体質があるのかどうかなどをさらに解明する取り組みに影響を与えると、Samet氏は強調した。これらが解明されれば、タバコに関連する疾患予防の取り組みをさらに標的を絞って行えるようになる。「引き続きこの問題に注目してください」と同氏は述べた。

— Edward R.Winstead

【右上部画像下キャプション訳】
ナショナルプレスクラブで記者に応じるDr. Regina M. Benjamin氏(Christopher Smith氏提供写真)
〜画像原文参照〜

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岡田 章代 訳
野長瀬 祥兼(工学/医学) 監修

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