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FDA承認ゲノム検査は、がん治療や臨床試験登録の指針として有用

先月、米国食品医薬品局(FDA)は、腫瘍の遺伝子変化を同定するための2つの検査を承認した。

 

最新の承認は、12月1日のFoundationOne CDx(F1CDx)で、あらゆる固形腫瘍種において324遺伝子のがん関連の変化およびゲノムシグネチャーと呼ばれる2種類の遺伝子変化を同定することが可能なゲノム検査である。

 

他の用途においても、この承認により、5種類のがんの治療目的で使用される15種類の標的療法のコンパニオン診断検査としてF1CDxを用いることが可能になる(最後の表を参照)。コンパニオン診断を用いて、その腫瘍が特異的な遺伝子変化を有するかどうかを判定することによって、患者が特定の治療の候補になるかどうかを判断する。

 

検査の承認の根拠となったデータでは、特定の変異型を約95%の確率で正確に検出することが可能であることが示されていた。

 

同日に、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は、同時に多くの遺伝子を迅速に解析することができる次世代シーケンシング技術を用いたF1CDxおよびその他の特定の診断検査について保険適用を提案した。

 

提案された保険適用には、これらの検査を受けたことがない患者で、コンパニオン診断としてこれらの検査を用いる追加治療を希望する、再発性または転移性の固形がん患者における使用が含まれる。

 

医療保険給付金決定文書と呼ばれるCMSの保険適用の提案には、最終決定がなされるまでに30日間のパブリックコメント募集期間がある。

 

MSK-IMPACT腫瘍プロファイリング検査の承認

FDAによるF1CDxの承認は、つい先日11月15日の別の次世代シーケンシング検査の承認に続くものである。こちらも患者の腫瘍における遺伝子変化の解析を目的とする。

 

この検査はMSK-IMPACTと呼ばれ、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)においてのみ使用するために開発され、腫瘍サンプルにおける468のさまざまながん関連の遺伝子変異または遺伝子変化をスキャンすることができる。

 

現在、一つの病院で開発され、そこでのみ使用している臨床検査では、患者に提供するためにFDAの審査と承認を受ける必要がない。

 

しかし、腫瘍プロファイリング検査は患者ケアに与える影響がますます大きくなるので、これらの検査が品質と信頼性の基準を満たすことを示すためのプロセスを、各機関が整備することが重要になると、NCIがん治療・診断部門診断評価科長のTracy Lively博士は述べた。

 

「これらのような検査でFDAのラベルを取得できて非常に嬉しく思っています。これらは、特定の種類の腫瘍や特定の薬剤に限定されない非常に広範なパネル検査です」とLively博士は付け加えた。

 

「両方の検査により、医師は患者の腫瘍の広範な遺伝子異常を調べることができます。いくつかの遺伝子異常については特定の承認薬剤と関係している可能性や他の理由(臨床試験に参加する可能性のある患者を特定する場合など)で有用な可能性があります」と続けた。

 

多重遺伝子検査の最大の利点は、単一の組織サンプルから多くの情報を取得することが可能な点であるとLively博士は説明した。この点は、いくつかの異なる検査を実施するのに十分な組織サンプルを腫瘍生検から得ることが困難な場合も多いため、重要である。

 

ゲノム検査のための新しい審査ルート

F1CDx検査は、5番目にFDA承認を得たがんに対する次世代シーケンシングベースの検査であるが、有望な新技術の市場投入を促進することを目的とするFDA-CMSイニシアチブの一環として審査される最初の検査である。

 

この並行審査プログラムを用いることで、「医師ががん治療において医学的転帰を向上させ、医療費を削減する可能性がある画期的な診断を患者が早く受けることができるようにしていきます」とFDA長官のScott Gottlieb医師はプレスリリースで述べている。

 

FDAは、11月のMSK-IMPACTの承認に加えて、病院や医療機関が、組織内での腫瘍プロファイリング検査のFDA承認を確保する目的で用いる合理化された新しい規制プロセスを発表した。

 

このプロセスでは、高価で時間がかかる可能性があるFDAに対する直接申請を行う必要がない。

 

Lively博士は、多くの機関が組織内で開発したゲノム検査の承認を得るためのリソースをまだ持っておらず、F1CDxのような市販の検査に切り替えることを望まない可能性があると述べた。

 

「こうした機関やその検査を否定的に考えるべき状況ではありません」と、特定のがんを対象に開発されてきた検査や、研究センターで研究中の特定の遺伝子変異を探すための検査が多いことを同氏は説明した。

 

多くのがんを対象にした一つの臨床試験

がんの臨床試験は、乳房、大腸、肺、肝臓などの腫瘍が最初に発生した臓器ではなく、腫瘍の生存と拡大を可能にする特定の遺伝子変化に基づいて患者を登録する場合が増加している。これらの標的には、単一遺伝子の変異またはマイクロサテライト不安定性や遺伝子変異負荷(単一の腫瘍における遺伝子変異の数)などのゲノムシグネチャーを含むことが可能である。

 

これらの「バスケットトライアル」と呼ばれる試験は、「広範な(遺伝子)検査を推進する新しい概念」であるとMSKCC病理部門長のDavid Klimstra博士は述べている。

 

「MSKCCにおける臨床試験登録は、MSK-IMPACTが開始されてから急速に増加しています」と付け加えた。

 

今年初めに発表された研究によると、MSK-IMPACTでは、進行性固形がん患者の37%において利用可能な遺伝子変化が同定された。利用可能な遺伝子変異とは、承認薬剤または臨床試験中の薬剤のいずれかで標的とすることが可能な遺伝子変異のことである。

 

総合的にみると、まれではあるが利用可能なさまざまな遺伝子変異を有する患者は、「実際に重要なサブセットになります」と、MSKCC分子診断科長のMarc Ladanyi博士は述べている。

 

「これらの変化を一回に一つずつスクリーニングすることは決して費用効率が良いことではありません。パネル検査を用いることで研究命題全体が機能します」とLadanyi博士は続けた。「これらの患者を同定し、臨床試験に参加させることができます。その多くが、転帰の改善を示しているという点で非常に成功しています」。

 

F1CDxがコンパニオン診断薬として有用ながんの種類

がんの種類 標的となる変異を有する遺伝子 薬剤
非小細胞肺がん EGFR エルロチニブ(米国登録商標名タルセバ)、アファチニブ(米国登録商標名ジロトリフ)、またはゲフィチニブ(米国登録商標名イレッサ)
非小細胞肺がん EGFR オシメルチニブ(米国登録商標名タグリッソ)
非小細胞肺がん ALK クリゾチニブ(米国登録商標名ザーコリ)、アレクチニブ(米国登録商標名アレセンサ)またはセリチニブ(米国登録商標名ジカディア)
非小細胞肺がん BRAF ダブラフェニブ(米国登録商標名タフィンラー)とトラメチニブ(米国登録商標名メキニスト)の併用
メラノーマ BRAF ベムラフェニブ(米国登録商標名ゼルボラフ)またはダブラフェニブ
メラノーマ BRAF トラメチニブまたはコビメチニブ(米国登録商標名コテリック)とベラメフェニブの併用
乳がん HER2(ERBB2) トラスツズマブ(米国登録商標名ハーセプチン、米国商標名オギブリ)、ペルツズマブ(米国登録商標名ペルジェタ)、またはトラスツズマブエムタンシン(米国登録商標名カドサイラ)
大腸がん KRAS セツキシマブ(米国登録商標名アービタックス)
大腸がん KRAS、NRAS パニツムマブ(米国登録商標名ベクティビックス)
卵巣がん BRCA1、BRCA2 ルカパリブ(米国登録商標名ルブラカ)

 

翻訳会津麻美

監修花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

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