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早期乳がんの一部は小さくても悪性度が高い

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早期乳がんの一部は小さくても悪性度が高い

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) ESMO 2017

マドリードで開催されるESMO 2017大会で発表される予定の早期乳がんの臨床試験によると、小さいがんでも悪性度の高いことがある。小さいがんの4分の1近くは悪性度が高く、化学療法により利益が得られることがわかった。悪性度の高いがんは、70 遺伝子特性(遺伝子の発現状態)で特定可能であった。

 

「この結果は、小さいがんはすべて悪性度が低く、術後化学療法は不要という思い込みに疑問を投げかけました。」筆頭著者であるベルギー・ブリュッセルの欧州癌研究治療機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer、EORTC)Dr. Konstantinos Tryfonidisは述べる。

 

EORTCと乳がんの国際共同試験グループ(Breast International Group、BIG)が共同で管理、統括するMINDACT試験には、早期乳がん(リンパ節転移陰性または陽性リンパ節数1~3)の患者6,693人が登録した。先に報告されたとおり、MINDACT試験の結果、Adjuvant! Onlineを用いて病理的に再発リスクが高いと判定された患者の約46%では化学療法が必要なかった可能性が示されている。これらの患者は、早期乳がんの臨床転帰予測を補助する遺伝特性解析であるMammaPrintでは遺伝的に再発リスクが低かった。

 

ESMO 2017で発表される部分解析は、MINDACT に登録した患者のうち1 cm 未満の原発乳がん(pT1abpN0)826人を対象とした。病理的リスクおよび遺伝的リスクを評価した結果、196人(24%)では病理的リスクは低いが遺伝的リスクが高いことがわかった。これらの患者は、化学療法を受ける群と受けない群に無作為に割り付けられた。

 

試験の結果、化学療法を受けた群で5年後までに再発した患者は極めて少なく、無遠隔転移生存、無病生存および全生存の割合が高いことが示されたため、化学療法で利益が得られたといえる。

 

「がんが小さい患者の4分の1近くには遠隔転移のリスクがあり、化学療法で利益が得られることがわかりました。」試験の上級著者であり、MINDACT共同試験責任医師、ポルトガル・リスボンのChampalimaud臨床センター乳腺部長Dr Fatima Cardosoは述べる。「これらの腫瘍は、病理的な基準のみでは悪性度が低く化学療法は不要と診断されてしまうことがあるため、これは特筆すべきことです。そうではなく、小さい腫瘍の24%は生物学的に悪性度が高く、小さいがんがすべて同じではないことが示されました」。

 

ベルギー・ブリュッセルのJules Bordet Institute 医療サポートチーム長兼学術推進チーム長のDr Evandro de Azambujaは、ESMOで発表された結果にコメントを寄せ、以下のように述べる。「本試験により、乳がん患者では腫瘍の大きさのみでなく、生物学的特性も重要であることが示されました。本試験の腫瘍はすべて小さく(1 cm未満)、リンパ節にがんは認められず(リンパ節転移陰性)、原理上は予後良好を示していました。ところが、その4分の1近くは遺伝的に高リスクと判定され、化学療法により利益が得られました」。

 

「小さくリンパ節転移陰性の腫瘍は、病理的に低リスクと分類されたとしても悪性度が高い可能性があります。」Dr. de Azambujaは述べる。「この患者集団で補助療法の要否を判断する際には、腫瘍生物学を考慮する必要があります。決定にあたっては、患者の年齢、全身状態、併存疾患や患者の選択を忘れてはなりません」。

 

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【抄録】

小さくリンパ節転移陰性の乳がん(pT1abN0)がすべて同様とは限らない:EORTC 10041/BIG 3-04(MINDACT)試験の部分解析結果

 

背景:pT1abN0に分類される乳がんは、再発リスクが全体的に低いため、術後全身療法の必要性については意見が分かれる。術後療法でベネフィットが得られる部分集団を特定する最善のツールはみつかっていない。

 

方法:本解析は、MINDACT試験に登録した患者のうち、腫瘍がpT1abN0に分類され、遺伝リスクG(MammaPrintで判定)及び臨床的リスクC(Adjuvant! Onlineの改良版で判定)の評価結果が得られた部分集団を対象とした。いずれの評価でも低リスクと判定された患者(CL/GL)には化学療法を行わず、いずれの評価でも高リスクと判定された患者(CH/GH)には化学療法を推奨した。遺伝的評価と臨床的評価の結果が一致しなかった患者(CH/GLまたはCL/GH)は、いずれかの結果に応じて化学療法を受ける群と受けない群に無作為に割り付けた。今回、pT1abN0乳がん患者について、化学療法治療有無による5年後の無遠隔転移生存率(DMFS)、無遠隔転移期間(DMFI)および全生存率(OS)を、遺伝的リスクG及び臨床的リスクCの結果に応じて報告する。

 

結果:MINDACT 試験に登録した患者のうち、pT1abN0乳がん患者は826/6693人(12.3%)であった。310/826人(37.5%)が60歳以上、 525/826人(63.6%)が閉経後であった。727/826人の試料が中央病理診断に供され、585/727人(80.5%)が浸潤性乳管がん、662/727人(91.1%)がER陽性、46/727人(6.3%)がHER2陽性、81/727人(11.1%)人がグレード3であった。免疫組織染色によるサブタイプ分類では、426/727人(58.6%)がLuminal A、193/727人(26.5%)がLuminal B、38/727人(5.2%)がLuminal B/HER2陽性、8/727人(1.1%)がHER2陽性、37/727人(5.1%)がトリプルネガティブであった。ほとんどの患者(820/826人、99.3%)が臨床的低リスク(CL)であった。全体では、624/826人(75.5%)がCL/GL、196/826(23.7%)がCL/GH、5人がCH/GL、CH/GH症例はなく、1人は不明であった。CL/GHのpT1abN0乳がん患者の5年後のDMFSは、化学療法を受けた群で97.3%(95% CI:89.4~99.3)、化学療法を受けなかった群で91.4%(95% CI:82.6~95.9)であった。5年後のDMFI及びOSは、それぞれ化学療法 を受けた群で98.8%(95% CI:91.9~99.8)及び98.5%(95% CI:89.6~99.8)、化学療法を受けなかった群で91.4%(95% CI:82.6~95.9)及び95.8%(89.1~98.4%)であった。

 

結論:生物学的特性解析によりT1abN0乳がんの術後化学療法の要否を判断することができる。これらの小さいがんとして分類される重要な集団(23.7%)は、臨床的低リスクだが遺伝的高リスク(MammaPrint)であり、化学療法による利益が得られる。

 

その他

本プロジェクトは2部構成であり、第1部ではMINDACT試験に登録された乳がん患者うち、遺伝的リスク以外は低リスクとみなされる小さい腫瘍について、MammaPrintを評価した結果を解析した。BluePrint及びTargetPrint、並びに従来の乳がん特異的免疫組織染色によるサブタイプも確認した。MINDACT試験の主要解析は当時公表されていなかったため、本パートはSABCS 2014に応募しポスター発表とした。第2部でプロジェクトの主軸となるパートが、ESMO 2017に応募したものであり、小さい(1 cm未満)、リンパ節転移陰性の乳がん患者について、病理リスク評価(改良Adjuvant! Online)または遺伝的リスク評価(MammaPrint)に応じた補助化学療法の有無によるDMFS、DMFI及びOSの点から転帰結果を発表する。両パートの結果をESMO 2017大会ですべて詳細に発表する予定である。

原文掲載日

翻訳石岡優子

監修小坂泰二郎(乳腺外科/彩の国東大宮メディカルセンター)

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