DNA修復遺伝子の生殖細胞変異は前立腺がんの生存に影響か | 海外がん医療情報リファレンス

DNA修復遺伝子の生殖細胞変異は前立腺がんの生存に影響か

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

DNA修復遺伝子の生殖細胞変異は前立腺がんの生存に影響か

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) ESMO2017

DNA修復遺伝子に生殖細胞変異をもつ去勢抵抗性前立腺がん (mCRPC)患者は、より転帰が不良である傾向があることが前向き分析により示された

 

転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)で、BRCA1、BRCA2、ATM、またはPALB2遺伝子に生殖細胞変異を持つ患者は、変異を持たない同疾患の患者に比べて若年で、統計的に有意ではないが、より短い疾患特異的生存(CSS)および、無増悪生存(PFS)を示す傾向がある。計画されていたサブグループ解析ではBRCA2変異を持つ患者のみが有意に不良なアウトカムを示す。以上の内容が2017年スペインのマドリッドで開かれた欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において発表された。

 

マドリッドのスペイン国立がんセンター(CNIO)前立腺がんユニットのElena Castro氏は、前立腺がんにおいてDNA修復遺伝子における生殖細胞変異は不良転帰と関連しているとされてきたが、すでに承認されている「生存期間を延長する治療薬(SPT)」に対する反応性、および転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の生存に関する決定的なデータがなかった。Dr Castro氏と、Dr Olmos氏がひきいる多くの専門分野にわたる研究チームが、新規に転移性去勢抵抗性前立腺がんと診断された患者で、試験登録時に未知の生殖細胞変異をもつ患者を対象に、多施設共同前向き観察的研究PROREPAIR-B試験(NCT03075735)を実施した。

 

2013年1月から2016年4月の間で、スペインの38の施設において、医師の選択でアビラテロン、エンザルタミド、ドセタキセル、カバジタキセル、Ra-223のいずれかで治療された適格患者419人が、試験に登録された。

 

治験責任医師が、患者から得た標本より、BRCA1、BRCA2、ATM、PALB2の生殖細胞変異を探し、これらの変異が、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の診断から、また「生存期間を延長する治療薬(SPT)」による初回治療からの疾患特異的生存期間(CSS)に及ぼす影響を検討した。生殖細胞変異を持つ患者(キャリア)と、持たない患者(非キャリア)を比較し、CSSハザード比(HR)が3を示すためには(α=0.05 β=0.20)、登録数は最低408例が必要であり、171例の死亡数が必要であった。副次的評価項目にはこれらの突然変異とSPTへの反応性の関連性が含まれた。

 

トータルで26人(6.2%)が、生殖細胞変異のキャリアであることが確認され、内訳はBRCA2が14人、ATMが8人、BRCA1が4人であった。初回の「生存期間を延長する治療薬(SPT)」は、変異のキャリア、非キャリアの割合は、それぞれ、タキサン63%および46%、新規アンドロゲン受容体(AR)標的治療(ART)37%および53%であった。

 

さらにキャリアと非キャリアを比較したところ、統計的に有意ではないが、キャリアはより若年である傾向が見られた。〔年齢の中央値66.5対71.6歳(p=0.16)〕

 

キャリアと非キャリアの間には、SPT開始時のベースライン特性において、統計的に有意ではないが、キャリアはECOGパフォーマンス・ステータス0が多くみられ、ステータス1は非キャリア患者に多く見られる傾向があった(92%対88%)。キャリアと非キャリアにおいて、前立腺特異抗原(PSA)の中央値は27.9対31.0ng/mLであり、転移はそれぞれ骨96%対86%、リンパ節48%対52%、内臓12%対16%であった。

 

BRCA2サブグループの患者は全体で一番アウトカムが不良である

キャリアはまた、非キャリアに比べて、ADT[アンドロゲン除去療法]開始から転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)となるまでの期間の中央値が、短期間であることが示された〔23.7対26.7カ月(p=0.22)]〕、このことはBRCA2群の患者で特に顕著でありmCRPCとなるまでの期間は18カ月であった(p=0.24)。

 

前立腺がん特異的な死亡はフォローアップの中央値36カ月の間で207人にみられた。転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)から疾患特異的生存期間(CSS)中央値は、キャリア28.5カ月、非キャリア36.0カ月であり(p=0.5)、BRCA2群の患者においては17.4カ月と、CSSはより短いことが判明した(p=0.02)。

 

タキサン治療における疾患特異的生存期間(CSS)中央値は、キャリア17.3カ月、非キャリアで24.5カ月であり(p=0.6)、BRCA2群においては12.8カ月であった(p<0.01、非キャリアとの比較)。PFS中央値は7.8対7.1カ月(p=0.4)、でありBRCA2群では5.7カ月であった(p=0.3)。

 

ART治療患者における、初回のART開始からの疾患特異的生存期間(CSS)は、キャリア25.4カ月、非キャリア26.6カ月(p=0.9)、BRCA2キャリア27.6カ月(p=0.5)であり、PFSはそれぞれ8.2対9.4カ月(p=0.8)、BRCA2サブグループ5.8カ月であった(p=0.4)。

 

結論

特異的な生殖細胞変異を持つキャリアおよび非キャリアの比較において、統計的に有意ではないが、初回のタキサンまたは初回のARTの治療開始からの疾患特異的生存期間(CSS)、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)からのCSSが悪化する傾向が認められた。

 

あらかじめ計画していたサブグループ解析では、BRCA2変異が転帰の不良と関連していることが示唆された。

 

試験の発見に対するコメントとして、英国、ロンドンのがん研究所およびThe Royal MarsdenのDr Joaquin Mateo氏は、これは、バイオマーカーの予測的な価値を評価するためにデザインされた前向き研究試験であり、われわれは、同様の、あるいは、より望ましいランダム化試験を行うなど、さらなる治療目的ではない試験を必要としている、と指摘している。しかしながら、昨年相反するデータが違う試験から報告されている。彼は、もしPARP阻害薬で治療した場合は、プラチナはこの母集団において結果を変える可能性があるのではないかと問題提起している。最近得られているデータに基づいて、彼はDDR(DNA損傷応答)生殖細胞変異をもつ患者はタキサン、アビラテロン、エンザルタミドの標準治療を中止すべきとは考えていない。

 

公開

この試験は以下の組織から研究助成を受けた。

Prostate Cancer Foundation, Fundación CRIS contra el cáncer, Fundación Obra Social La Caixa, Instituto de Salud Carlos III.

 

出典

LBA32 – Castro Marcos E, et al. PROREPAIR-B: A prospective cohort study of DNA repair defects in metastatic castration resistant prostate cancer (mCRPC).

 

原文掲載日

翻訳古屋千恵

監修林正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  7. 7乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  10. 10免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他