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遺伝子の不活性化によってテモゾロマイドの効果が上がる可能性

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遺伝子の不活性化によってテモゾロマイドの効果が上がる可能性

Silenced Gene May Make Temozolomide More Effective for Some Brain Cancer Patients
(Posted: 03/28/2005) 2004年の臨床試験で、多形性膠芽腫と呼ばれる脳腫瘍の治療に、放射線にテモゾロマイドを加えることでより多くの患者の延命させることを確認した。この関連試験で、研究者らはMarch 10, 2005, issue of the New England Journal of Medicineに、テモゾロマイドで延命したほとんどの患者の腫瘍には特定の遺伝子が産生されていたと報告した。


要約
2004年に、多形性膠芽腫と呼ばれる脳腫瘍の放射線治療にtemozolomideという薬剤を加えると、より多くの患者の延命が可能になったと臨床試験で確認されました。これに関連する試験で、temozolomideによって生存が延びた殆どの患者の腫瘍では特定の遺伝子がオフになっていたと研究者は報告しています。 この結果からどの患者にtemozolomideを投与すれば良いかを決定するのはまだ早すぎますが、その方向に向けての第一歩となりました。

出典  2005年3月10日New England Journal of Medicineより(ジャーナル要旨参照)

背景
悪性神経膠腫は最も一般的な原発性の脳腫瘍であり、毎年米国で診断される1万8000以上の原発性の悪性脳腫瘍の半分以上を占めます。

これらの腫瘍を有する患者の予後は良くありません。 中程度(grade III)の悪性神経膠腫患者の生存期間の中央値は3年から5年です。 最も悪性度の高い悪性神経膠腫(gradeIVの神経膠腫あるいは多形性膠芽腫)患者の生存期間の中央値は1年未満です。

2004年6月、大規模な国際的、無作為化臨床試験において、temozolomide(TemodarR)という薬剤を放射線治療に加えた場合、多形性膠芽腫患者の生存期間の中央値がおよそ2ヶ月延長されたとの結果が発表されました(関連例参照)。 temozolomideを加えた放射線治療は、現在、これらの腫瘍に対する初回治療の標準療法であると考えられています。

MGMTと呼ばれるたんぱく質を過剰発現(余剰生産)している癌細胞には、temozolomideのような薬剤は殺細胞効果が弱いということが、以前の実験室での研究で証明されていました。MGMTたんぱくを合成する遺伝子がオフになっているため、MGMTたんぱくを全く含まない細胞に対しては、本薬剤はより良い効果を現しました。加えて、予備的な臨床試験において、患者の腫瘍内のMGMT遺伝子のスイッチがオフの時、temozolomideと放射線の併用療法を受けた患者の生存が延びたという結果が示唆されました。本試験では、この関連性が国際的な無作為化試験に登録した患者にも当てはまるかどうかが検討されました。

試験
最初の試験では、573人の患者が、放射線治療単独、又は放射線治療とtemozolomideの併用のどちらかの投与を受ける群に無作為に割り振られました。研究者は、MGMT遺伝子が患者の腫瘍内でオンかオフか見極めるために、両グループの部分集団計307人の患者から、腫瘍組織の遺伝子検査を行いました。 その後、2つのグループの生存率が比較されました。

この試験の筆頭著者は、スイス、ローザンヌにある University HospitalのMonika E. Hegi博士です。

結果
技術的な理由で、腫瘍がテストされた307人の患者のうち206人の患者だけでMGMTの遺伝子がオンかオフであったかどうかの判定ができました。患者が受けた治療の如何にかかわらず、その206人の部分集団では、MGMTの遺伝子がオフ(18.2ヶ月)の患者のほうが遺伝子がオン(12.2ヶ月)の患者よりも生存期間の中央値が6ヶ月長いという結果でした。

最もが良かったのは、MGMTの遺伝子がオフの患者で、放射線に加えtemozolomideを受けた患者でした。それらの患者の生存期間の中央値は21.7カ月でした。 対照的に、遺伝子がオフで放射線単独の治療を受けた患者での生存期間の中央値は15.3ヶ月でした。

MGMT遺伝子がオンの患者では、放射線単独の治療を受けた患者の中央値生存は11.8ヶ月で放射線とtemozolomideとの治療を受けた患者の中央値生存は12.7ヶ月でした。–その差は偶然によって生じる差とさほど変わりません。

病気が進行するまでの生存期間を調べてみると、同様の傾向が見られました。遺伝子がオフでtemozolomideでも治療を受けた患者の無進行生存期間が最も長く10.3ヶ月、遺伝子がオフで放射線単独治療の患者の無進行生存期間は5.9ヶ月でした。遺伝子がオンの患者では、放射線とtemozolomideでの治療が5.3ヶ月、放射線単独治療では4.4ヶ月後に進行が始まりました。

制限事項
試験に登録された患者のおよそ3分の1でしか、MGMT遺伝子がオンかオフかの判定が実施できませんでした、と国立癌研究所、癌研究センター、神経腫瘍学(Neuro-Oncology)部門長Howard Fine医師は言っています。

その上、MGMTの遺伝子の状態を決定するテストは標準化されておらず、別の研究者が違う研究室で試験を行った場合、違う結果になる恐れがあります、とFine医師は言います。

MGMTの遺伝子がオフの患者で生存期間が長かったことについて、他の理由も完全には除外できません、とFineは言い足します。例えば、遺伝子がオフということは、病気がそれほど攻撃的でない場合に付随するマーカーである可能性もあり、従って、MGMT遺伝子そのものの働きとは無関係に、放射線療法や化学療法により感受性があるかも知れません。

コメント
この研究の結果が「関心をもたれています」が、それらを確認するために今後の研究が必要であるとFine医師は、述べます。「それらが最終的に有効なら、これらの結果は、患者が特定の治療に反応するかどうかを同定して癌治療を個別化するというゴールに向けた重要な一歩となるでしょう。」と彼は言います。「しかしながら、現段階では、MGMT遺伝子の状態によって治療法を推奨するのにはまだ早すぎます。」

多形性膠芽腫の患者全てが放射線治療に加えてtemozolomideでの化学療法を受けるのを勧めます。「この薬剤は忍容性が高く、他に推奨できる治療法もないので、temozolomideをすべての患者に推奨するのは妥当です。」と彼は言います。

ニューヨークのMemorial Sloan-Kettering Cancer Center のLisa M. DeAngelis医師もこの見解を支持し、 「temozolomideによる毒性は僅かで、有用性が明らかなので、現在この薬剤をすべての患者に投与するのは妥当です。」と彼女は付随の論説に書いています。

(HAJI 訳・島村義樹(薬学) 監修)

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