髄芽細胞腫の幼い小児患者が術後放射線療法を免れうる可能性 | 海外がん医療情報リファレンス

髄芽細胞腫の幼い小児患者が術後放射線療法を免れうる可能性

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

髄芽細胞腫の幼い小児患者が術後放射線療法を免れうる可能性

http://cancer.gov/clinicaltrials/results/childhood-medulloblastoma0305
(Posted:03/21/2005) the New England Journal of Medicine 2005年3月10日号で、3歳未満の髄芽腫と呼ばれる脳腫瘍に罹患した小児は、術後化学療法のみで効果的な治療が可能かもしれないことが発表された。


3歳未満の小児で小児髄芽細胞腫と言う脳腫瘍の一種を患う場合、術後、化学療法のみで効果的に治療するのは可能かもしれないことが無作為化比較対照臨床試験で明らかになりました。しかもなお、試験結果は術後の放射線療法を小児患者のグループに施したくないという傾向をもつ医師にとって最も説得力のある証拠となりました。というのも、放射線療法は重大な肉体的障害や神経認知障害を起こすという更に大きなリスクがあるからです。

出典 New England Journal of Medicine オンライン速報 2005年3月10日(ジャーナル要旨参照)

背景
小児の脳腫瘍の例は稀です。髄芽細胞腫は小児の癌で最も一般的な種類で脊髄に転移することがよくあります。現状の治療ガイドラインで推奨する方法は、腫瘍をできるだけ切除し、放射線療法を脳と脊髄に施し、最後に化学療法を施します。放射線療法は術後に残っているどんなタイプの癌細胞をも殺すのに効果的です。しかし、医師は乳幼児にそれを施すのをためらいます。というのも、放射線は重篤な悪影響をその年齢の脳の発達に及ぼすからです。これまでの試験結果では、術後の化学療法は乳幼児のグループに対する放射線療法を延期できることは明らかになっていました。今回のより大規模な臨床試験で追及されていたのは集中化学療法がその化学療法を施した後に放射線療法を施す必要がなくなるほど効果的なものかどうかということでした。

臨床試験結果
ドイツの31箇所の研究所に43人の髄芽細胞腫と診断された3歳未満の患者が登録されました(男児:28人、女児:15人)。腫瘍を手術でできる限り取り除いたあと、患者は5つの化学療法薬の複合療法を施されました。その薬の中にはメソトレキセートという脳に直接送り込まれる薬も含まれています。(監修補足:メソトレキセート髄注のこと)

薬のいくつかの投与量は患者の年齢に応じて調整されました。化学療法は全ての患者に2カ月おきに3サイクル施されました。3サイクルの後、癌が進行していない患者は治療を止めることが可能でした。3サイクルの後にも癌が進行していた患者は2度目の手術、放射線療法、または、この試験的な化学療法のいずれかが、担当医が適切と判断した上で実施されました。

この臨床試験の指導著者はドイツのウルツブルグのウルツブルグ大学小児病院のステファン・ルツコウスキーです。

結果
治療5年後、43人の患者のうち58%は癌が進行しませんでした。そして、43人中66%が生存しています。(研究者によると“病気の進行”とは腫瘍の大きさが25%以上に大きくなったものを意味します。)試験実施の頃、患者のうち14人は一連の知能テストを受けました。対照群の健常な子供たちよりも低いスコアでしたが、その試験前に行ったパイロットスタディで術後に放射線療法を受けた子供たちよりも高いスコアでした。

解析中、3つのどのサブグループに属したかによって患者に差が見られました、と研究者は言います。患者の腫瘍が完全に手術で切除されたサブグループでは82%が5年後も癌の進行が認められず、93%が生存していました。患者の腫瘍の大部分が切除され、術後も肉眼的に腫瘍の広がりが見られなかった2つ目のサブグループでは50%が5年後も癌の進行が認められず56%が生存していました。術後も肉眼的に腫瘍の広がりが見られた3つ目のサブグループでは33%が5年後も癌の進行は認められず38%が生存していました。肉眼的に腫瘍が広がっていなかった31人の患者のうち20人が幸いなことに放射線療法を受けずに済みました。

コメント
「われわれの試験結果は髄芽細胞腫を患う小児が術後に集中的な化学療法を受けるだけで長い寛解期を得られることを示しています。」と著者たちは書いています。彼らは試験結果をこう強調しています。つまり、最初の手術から明らかに腫瘍の広がりが見られなかった患者には「特に有効です」と。

「この試験結果で驚いたことは数値です」、つまり、無病生存期間の数値のことです、と癌研究のための米国がん研究所(NCI)癌センター神経腫瘍局の局長、ハワードA.ファイン医学博士は語ります。髄芽細胞腫を患う小児に関する以前の試験結果では術後に化学療法だけを受けた患者の無病生存期間の数値は15%ぐらいしかなく45%を超えることはめったにありませんでした、と同博士は語ります。

この病が稀であるため、統計学上明確な結果を得るのに十分な数の患者を臨床試験に参加させることは困難です。しかしながら、ニューヨークのスローン・ケッターリング癌センターのリサM.デアンジェリス医学博士は編集後記でこう書いています。この試験は「3歳未満の小児に対して行われたもっとも大きな試験で・・・(そして)すばらしい結果を出しています」彼女が言うには、試験結果はこうした乳幼児の患者グループに放射線療法をやらないようにする試みが有効であることを確証づけるものです。

制限事項
ファイン博士は、この発見が確実であると認められるにはもっと臨床試験を行う必要があると考えています。彼はまたこうも語っています。この臨床試験の3サイクルの療法で使われた特定の化学療法用の薬が、他の臨床試験で使われた他の化学療法の薬と比較して、より改善された試験結果を生み出したのかどうかは不明ですと。

「この病は小児人口で比較的稀であるため、十分な数の患者を臨床試験に参加させて本当に統計上意味のある比較を他の幾つかの第II相臨床試験との間にみつけることは困難です」とファイン博士は語ります。療法の後に得られた認知機能の減少に関してファイン博士はこう語っています。「我々が知る限りでは脳腫瘍を患う子供たちの認知機能は一般的に健常な子供たちの認知機能よりも高くはないです。おそらく、化学療法、および、または、腫瘍のいずれかのせいです。しかしながら、放射線が使われた場合の神経認知の転帰はもっと悪くなることもわかっています。」

(有田香名美訳・平 栄(放射線腫瘍科) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  4. 4がんに対する標的光免疫療法の進展
  5. 5コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  6. 6乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  7. 7「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  8. 8ニボルマブとISA101ワクチン併用療法が中咽頭がん...
  9. 9HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  10. 10がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加

お勧め出版物

一覧

arrow_upward