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DNAシーケンシング試験により希少がんに既存薬の適用が可能に

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DNAシーケンシング試験により希少がんに既存薬の適用が可能に

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2017

DNAシーケンシング(塩基配列決定)により、標準治療がない希少がんの患者が、同じ遺伝子変異を有する異なるがん種の患者に有効な既存の治療を受けることができるかもしれない。2017年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)総会で発表予定の、多剤および多腫瘍臨床試験(1)の初めての結果において、この種のプレシジョン(高精度)医療を用いたがん臨床試験は実行可能なだけでなく、登録された適応症以外で既存薬による利益が得られる患者集団を特定できる可能性があることが示された

 

オランダの40以上の病院のネットワークであるCentre for Personalized Cancer Treatmentオランダがん個別化治療センター)は、データベースを作成するため、転移がん患者から生体組織を系統的に採取し、次に全ゲノムシーケンシング(WGS)によって解析を行った。現在このデータベースには、あらゆるがん種に対する治療を受けた約2,000人が登録されている。

 

「非常に多くの患者の全ゲノムを配列決定することにより、腫瘍とDNA変異との間に共通点があることがわかりました。例えば、ERBB2(Her2)遺伝子(変異)は主に乳がん患者のためにスクリーニングされますが、他のがん種の患者にも存在することがわかっています」と、CPCTを代表して本試験を主導する臨床試験責任医師で、アムステルダムにあるオランダがん研究所教授のEmile Voest氏は述べた。

 

「このような患者を同定することができるようになった今、問題となるのは、有効な可能性のある既存の薬の利益を患者が享受するにはどうすればいいのかということです。このことが、現在製薬会社10社の19種類の薬剤を含む、このDrug Rediscovery Protocol(薬剤再発見プロトコル)の基礎となっています」とVoest氏は報告した。

 

2016年後半に本試験が開始されて以来、審査のために250件以上の症例が提出され、これまでのところ、これらのうち約70人が適格であることがわかっており、治療を開始している。標準治療の選択肢がない固形がん、膠芽腫、リンパ腫または多発性骨髄腫の成人患者を、腫瘍タイプおよび試験薬に基づく複数の並行コホートを用いた本試験に登録した。

 

「特定の遺伝子異常やがん種を有する患者が感受性を示す特定の薬剤に対し、他のがん種だが同じ変異を有する患者でも同等に活性が認められる可能性があることを示す非臨床のエビデンスおよび症例報告があります。しかし、組織の背景が非常に重要であることもわかっています。それが、遺伝子変異だけではなく、特定のがん種に基づいて試験コホートを作っている理由です」とVoest氏は説明した。

 

各コホートに対する治療の有効性は、2段階のプロセスで解析される。「第1段階で、同じがん種および遺伝子変異を有する患者8人の最初のグループが治療に反応した場合、第2段階では臨床的利益のより強固な徴候を得るため、コホートを患者24人に拡大します」とVoest氏は述べた。「今回の試験での臨床的利益は、完全奏効、部分奏効(50%以上の腫瘍縮小)、または16週間以上の病勢安定のいずれかと定義しています」。

 

現在まで、試験参加者の37%で臨床的利益が認められており、20の試験コホートのうち6つが第2段階に進んでいる。「われわれは、免疫療法剤、PARP阻害剤、および抗体複合剤などのいくつかの抗がん剤で、まぎれもない成功を収めています」とVoest氏は報告した。

 

「周知のとおり、新薬の開発は非常にコストが高いので、われわれのチームはこのような結果を大変嬉しく思っています。この試験では、既存薬の適応症を拡大し、最大限に活用するためのプラットフォームを提供しています」と同氏は述べた。「DNAシーケンシングに基づいてすでに利用可能な薬剤を使用することは、個別化医療への全く斬新なアプローチとなります。このような希少な患者グループのために、どうすればこの分野の新しい知見をできるだけ早く診療に置き換えることができるのかを調べるため、われわれは規制当局と協議しています」。

 

キャンサーリサーチUK、マンチェスター研究所Richard Marais氏は、本試験について次のようにコメントした。「治療のために患者を層別化する方法を変えるかもしれないということが、この試験を非常に面白いものにしています。つまり遺伝子プロファイルと治療選択肢をマッチさせるということです。このチームが変異を探し、そのうちいくつかはその変異を標的とする薬剤があるとします。その薬剤を見つけた場合、その適応症ではなく遺伝子に基づいて患者を治療します。この方法は非常に有効です。この試験は、既存の薬剤に対する新たな適応症を同定するのではなく、現在標準治療がない患者のための治療を見つけることに関するものなのです」と同氏は述べた。

 

「遺伝子配列決定は、がんケアにおける標準治療になり始めています。例えば、すべてのメラノーマ(悪性黒色腫)患者の約半数がいわゆるBRAF変異を有していることがわかっているので、われわれはその変異を探して、関連する患者にBRAFを標的とする薬剤を投与します。しかし、このような希少ながん種または希少な変異に対し、治療薬が標的とすることができる特定の変異を見つけるために、何百もの遺伝子をシーケンシングする必要があります。同センターは、ゲノム全体を塩基配列決定するので、これらの標的を見つける能力があるのです」とMarais氏は説明した。

 

「この方法は非常にコストが高いので、この試験で、費用対効果が高く、患者に対し効果がある可能性があることを示す必要があります。試験参加者の10%だけでも層別化すれば、追加コストの不要な方法にできると考えられます。世界中の医療システムにとって、これは、先行投資が高いにもかかわらず、患者の利益と、患者の治療コストを削減する可能性が非常に大きいことを意味します」と同氏は述べた。「その意味で、ここで示されている数字は非常に印象的です。これらの数字は間違いなく原理の証明を示しています」。

 

参考文献

1.Abstract LBA59_PR ‘Expanding the use of approved drugs: The CPCT’s Drug Rediscovery Protocol (DRUP)’ will be presented by Dr. Emile Voest during the  Proffered Paper and Poster Discussion Session, ‘Translational Research’, on Saturday, 9 September 2017, 09:00 to 10:45 (CEST) in Pamplona Auditorium.

 

原文掲載日

翻訳生田亜以子

監修花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

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