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一部の乳癌患者は、放射線治療の追加で延命する

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一部の乳癌患者は、放射線治療の追加で延命する

http://cancer.gov/clinicaltrials/results/additional-radiation0205
(02/01/2005) Jan. 19, 2005, the Journal of the National Cancer Instituteによると、乳房摘出術と化学療法に加えて放射線治療を受けた中~高リスクの早期乳癌女性は、手術と化学療法のみの患者に比べ、20年後の追跡調査においても生存の可能性が大きい。


要約
早期乳癌患者のうち中等度から高度のリスクの女性では、乳房切除術と化学療法に加え放射線治療を行ったほうが、手術と化学療法だけが施行された女性より20年後の経過観察でより高い生存率を示しました。カナダの研究者からの論文です。

出典  
Journal of the National Cancer Institute, January 19, 2005.

背景
リンパ節転移のある乳癌で乳房切除術をうけたすべての女性にとって、術後(補助)放射線治療の有用性についてはまだ明らかではありません。現在のガイドラインでは、5cm以上の腫瘍か4個以上のリンパ節転移陽性例で放射線治療を行うべきとされています。この群の患者は乳癌の再発のリスクが最も高い群です。これより腫瘍が小さいか、転移陽性リンパ節が4個より少ない場合は再発リスクがより少ないと判断されてきました。この中等度のリスクを有する群では、潜在的な二次発癌のリスクや、心毒性、その他の問題点を放射線治療による利点を上回るかどうかは明らかになっていません。

試験
この試験は乳房切除術と化学療法に加えて、リンパ節と胸壁に放射線治療を行うことで患者の長期生存率を改善するかどうかを調査するために行われました。ステージIかIIで転移陽性リンパ節が1個以上の閉経前の乳癌の女性318例が対象となりました。患者は放射線治療を加える群と、乳房切除術と化学療法のみの群とに無作為に振り分けられました。患者はカナダのブリティッシュコロンビア州で1979年から1986年に治療を受けました。15年の経過観察による初期の報告では、放射線治療を受けた患者のほうが乳癌が原因で死亡する割合が低い傾向がありましたが、全生存期間では、放射線治療を受けなかった患者より改善はみられなかったとされました。最新の報告では、20年後の経過観察による結果がわかりました。この報告の筆頭著者は、カナダのモントリオールのMcGill University Health Center の Joseph Ragaz, M.D.,です。

結果
20年の経過観察の結果、318例中190例が死亡した(うち、170例は乳癌での死亡、20例は他の原因による死亡)。放射線治療を受けなかった患者の生存が37%であったのに対して、放射線治療を受けた患者では47%が生存していました。放射線治療を受けなかった患者のほうが乳癌のの再発をより多く認めました。放射線治療を行うことで、乳癌での死亡は32%、全体としての死亡では27%減少しました。

そのうえ、1個から3個までの転移陽性リンパ節のある中等度のリスクの患者は、4個以上の転移陽性リンパ節のあるもっと高リスクの患者と同じ程度、放射線治療によって恩恵がありました。『我々のデータは、術後治療を決める際の診断後、すみやかに放射線治療を始めることが重量であることを示している』と、Ragazらは書いています。患者の癌が再発してから、後で放射線治療をするのは、普通は病気を治すことにはならないと彼らはつけくわえています。

コメント
放射線治療を施行しない患者では乳癌の再発率が高いことから、顕微鏡的な病変が、乳房切除術と化学療法の両者から生き残っていて、それが後日の再発の原因だと著者らは主張しています。『我々のデータから、30%以上の患者で、この転移のもととなるものを効果的に根絶できることが示された』と著者らは書いています。この再発率の減少は放射線治療を受けた患者の生存率の優位性をうまく説明できます。

放射線治療が乳癌再発を少なくするという結果は重要な意味を持ちますと米国国立癌研究所癌研究センターの放射線腫瘍学部の部長であるC. Norman Coleman博士は述べています。『放射線治療は局所の残存する癌を除去するだけでなく、他の組織や臓器へ癌がひろがるリスクを減らすということを示しています』とも言っています。さらに、従来の研究の結果と同様、放射線の副作用はその利点を打ち消すものではなかったと付け加えています。

制限事項
Coleman博士は、この試験の結果は、乳癌再発の中等度のリスクを有するリンパ節転移が比較的少ない患者に対しては放射線治療が有用かもしれないという初期成績を裏付けるものだと述べています。しかし、はじめから再発のリスクが低い場合、治療の有益性を示すことが困難なので、不確実性は残ります。付記された論説で、カナダのハミルトンにあるJuravinski Cancer CenterのTimothy Whelan 博士、Mark Levine博士は中等度のリスクを有する乳癌患者での有益性についての残った不確実性に絞った臨床試験を導入するように主張しています。

また、この研究で患者を登録し始めた1979年以降も乳癌の治療に関しては多くの変化がありました。この研究で用いられた多剤併用化学療法のレジメン(サイクロホスファマイド、メソトレキセート、そして5-フルオロウラシル)は今日ではほとんど用いられません。この研究での患者はタモキシフェンのホルモン治療は受けていません。なぜなら、タモキシフェンが乳癌再発を防ぐ効果があることを示した調査結果がどこにも示される前だったからです。

小さな乳癌(直径4cm以下)の女性では、乳房温存療法(乳腺腫瘤摘出術のみ、もしくは乳腺腫瘤摘出術に術後放射線治療を加えるもの)が、乳房切除術と同等の長期生存率であることが、ここ数年の他の研究により示されています。しかしながら、米国のいくつかの地域では、多くの乳癌患者が乳房切除術で治療され続けています。

(平 栄(放射線腫瘍科) 訳)

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