分子テストが乳癌再発リスクと化学療法によるベネフィットの両方を予測 | 海外がん医療情報リファレンス

分子テストが乳癌再発リスクと化学療法によるベネフィットの両方を予測

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

分子テストが乳癌再発リスクと化学療法によるベネフィットの両方を予測

Molecular Test Can Predict Both the Risk of Breast Cancer Recurrence and Who Will Benefit From Chemotherapy(http://cancer.gov/newscenter/pressreleases/breastgeneassay)
(2004/12/10)新たな試験方法で、乳癌再発リスクや誰が化学療法に最も効果があるかを予測することが可能。


国立衛生研究所の一部である国立癌研究所(NCI)の後援によって、米国乳癌・大腸癌術後補助療法プロジェクト(NSABP)とGenomic Health社との協力により実施された研究によると、新たな試験により乳癌の再発を予測でき、またどういった患者に化学療法が効果的なのかを決定することができるかもしれない。これらの結果が示すのは、毎年リンパ節転移陰性のエストロゲン依存性乳癌と診断される5万人の乳癌患者の半数近くにおける再発リスクは低く、化学療法の不快感や副作用を経験する必要がないかもしれないということである。

この試験は癌関連遺伝子パネルの発現レベル(増加または減少)に基づくものである。2004年12月10日にNew England Journal Of Medicineのオンライン版で発表される試験によると、このパネルはエストロゲン依存性乳癌が再発するかどうかを予測するのに用いられる。この試験を実施した科学者は、同日にサン・アントニオ乳癌シンポジウムでも同様の試験によってどの女性患者が化学療法の利益を受けるかどうかが予測できる旨を含め、新たな試験結果を発表する予定である。乳癌再発リスクが低い患者(最近の試験では約半数)においては化学療法から得られる利益は少ないと思われる。

試験実施者は、抗癌剤のタモキシフェン(乳癌細胞に対するエストロゲンの影響を遮断)の臨床試験に参加した患者の細胞標本と医療記録を用いた。これらの患者はエストロゲン受容体陽性でリンパ節転移が陰性の乳癌と診断されている。毎年5万人以上の女性がこのタイプの乳癌(癌細胞が増殖するのにエストロゲンが必要だがリンパ節までは転移していない)と診断されている。現在米国でこういったタイプの乳癌と診断されている多くの患者がホルモン療法に加えて化学療法を受けている。

患者447例から得た標本および3件の個別の予備試験から得た250個の遺伝子を用いて、もっとも効率的な16個の癌関連遺伝子が見いだされた。試験実施者は腫瘍サンプルいおけるこれらの遺伝子発現パターンに基づき「再発スコア」を算出する公式を作成した。再発スコアは1から100までの数字で癌が再発するリスクを計るものである。

本試験に先立ち、遺伝子発現解析は通常の病理試験用に用意された組織(固定・包埋式)ではなく凍結された癌標本で行われた。発現解析はRNA(遺伝子を蛋白質に変換するために必要な分子)の測定に基づき行われ、RNAは細胞が固定・包埋された時点で変化するためである。一般に凍結組織は通常の診療では作成されていないことが多い。Genomic Health社の研究者はこういった解析をパラフィンワックス上に包埋した組織上で行う方法を生み出した。この方法により固定組織で見られる変化したRNAを用いることが可能になった。

New England Journal of Medicineで発表された試験結果では再発スコアが再発リスクを予測できることが検証されている。別のNSABPタモキシフェン臨床試験から得られた生検組織と医療記録を用いて668例の患者を再発リスクが「低」、「中」、「高」の3つのグループに分けた。51%が低リスクグループ(スコアが18未満)22%が中リスク(スコアは18以上31未満)、27%が高リスク(スコアが31以上)であった。

これらのリスクグループ分けは10年後の実際の乳癌再発率と相関関係があった。低リスクと高リスクグループの間では再発率に有意な差が見られた。低リスクグループでは10年目の再発率は6.8%であったのに対し、中リスクおよび高リスクグループではそれぞれ14.3%と30.5%であった。再発スコアが50に達するまでの再発率はスコアの上昇に伴い連続的に上昇した。こういった傾向は年齢群および腫瘍の大きさに関係なく見られた。

「恐らくこれらの結果は、もし研究者がNSABP臨床試験から生検組織を入手することができなかったら10年遅れていただろう。」とNCIの癌診断プログラムアソシエイト・ディレクターのSheila E. Taube博士は述べた。

同様の21件の遺伝子テストを用いて、NSABP臨床試験でタモキシフェンを投与されているエストロゲン受容体陽性、リンパ節転移陰性の乳癌患者にとって化学療法がどれほど有用であるかの予測が行われた。これらの結果は2004年12月10日にサン・アントニオ乳癌シンポジウムで発表される予定である。

「NCIスタッフは企業、NSABPおよびその他のNCI Cooperative Groupからの専門家と協力して試験を立証するための総合戦略を生み出した。この計画は実りの多いものであり、乳癌治療を検討するにあたり、医師と患者にとって重要なツールを提供することにつながる。」とTaube博士は述べた。

治療を伴う試験では、再発スコアが高い患者(このタイプの乳癌患者の約25%を占める)が10年非再発率という点においては化学療法から得られる利益が多かった。再発スコアが低い患者(これらの患者の約50%を占める)は化学療法から得られる利益はきわめて小さなものであった。試験集団は、化学療法が低リスクグループに対して不利益を及ぼすかどうかを決定するのに十分な規模ではなかった。

「この試験は、化学療法に伴う短期または長期の有害な副作用から何千人もの患者を救うことによって医療行為を変更する可能性をもつ。」とNCI癌治療評価プログラムの治験責任医師のJoAnne Zujewski医師は述べた。

(エリザベス 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4がんに対する標的光免疫療法の進展
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward