2011/01/11号〜発行250回記念号〜◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2011/01/11号〜発行250回記念号〜◆癌研究ハイライト

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2011/01/11号〜発行250回記念号〜◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2011年1月11日号(Volume 8 / Number 1)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜
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癌研究ハイライト

・骨髄線維症治療が期待される新たなJAK2阻害剤
・非浸潤性乳管癌(DCIS)の治療法に大きな差
・リンパ腫における重要な遺伝子変異を同定

骨髄線維症治療が期待される新たなJAK2阻害剤

Janus-activated kinase 2(JAK2)タンパク変異と関連する増殖促進シグナルを阻害するよう設計された試験段階の薬剤が、骨髄線維症患者の一部で臨床症状を軽減し持続的反応をもたらした。骨髄線維症は骨髄が線維組織により置換される疾患である。この第1相用量増加試験で評価が行われたのはTG101348という選択的JAK2阻害剤で、1月10日付けJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

本試験には患者59人が登録され、このうち28人が用量増加試験に参加した。大部分の患者は脾臓の腫大などの一次的症状が改善した。骨髄線維症では血液細胞の産生が阻害されることから、重度の貧血、虚弱、倦怠感を呈することがあり、脾臓および肝臓の腫大もしばしばみられる。 消耗性の慢性骨髄増殖性疾患である骨髄線維症の治療用にFDA承認を受けた薬はない。

骨髄線維症は単発で発症する(原発性骨髄線維症)ことがあるほか、他の良性の骨髄増殖性疾患、すなわち本態性血小板血症および真性赤血球増多症の後期に発症することもある。現在のところ骨髄線維症患者に対して行われているのは症状を和らげるための姑息的治療である。

TG101348は全般的に忍容性が高かったが、特に高用量のときには一部の患者で貧血をおこした。用量調節により患者に貧血を起こさず治療効果を達成できるか、追加の試験を現在計画中である。計画中の別の試験では、真性赤血球増多症患者に同薬を投与する予定である。

「本研究が発する重要なメッセージは、TG101348などの選択的JAK2阻害剤を真性赤血球増多症でさらに追求すべきということである」。主任研究者でメイヨークリニックのDr. Ayalew Tefferi氏はこう述べた。

次いで、もう一つのメッセージは、現在までに試験が行われたJAK2阻害剤はそれぞれ治療効果や副作用が互いに異なることに注意をはらうべきであるという。たとえば貧血が起こりそうな患者には、貧血の副作用のない薬剤を考慮すべきだと同氏は述べた。

2010年9月、INCB018424という実験段階の薬剤を進行した骨髄線維症の患者に使用した試験で良好な結果が得られたことが報告された

TG101348と異なり、INCB018424はJAK2だけでなくJAK1も阻害する。JAK2阻害剤は、2005年にJAK2遺伝子が活性化する変異が真性赤血球増多症患者の90%、原発性骨髄線維症および本態性血小板血症患者の60%で発見されたことを受けて開発に至った。

付属の論説では、JAK2阻害剤の開発はフィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性疾患に対する「標的治療の新時代の先駆けとなった」とし、患者の多くは治療開始後1カ月以内に症状の改善が見られ、しかもこの改善は持続的なものであるとみられると、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Srdan Verstovsek氏は書いている。しかしJAK2阻害剤は悪性クローンを根絶させるわけではないため、最善の使用方法を確認するためさらに研究が必要であるとも述べた。

非浸潤性乳管癌(DCIS)の治療法に大きな差

非浸潤性乳管癌(DCIS)は非侵襲性ながら侵襲性の乳癌に進行する可能性がある状態であるが、治療法が外科医によって大きく異なり、この違いが癌の再発に関連していると1月3日付けJournal of National Cancer Institute誌の電子版で報告があった。

非営利のランド研究所に所属のDr. Andrew Dick氏を筆頭とする研究者らは、ニューヨーク州Monroe郡もしくはデトロイトのHenry Ford Health Systemで治療を受けたDCIS患者994人の医療記録を調査した。収集したデータは、腫瘍の大きさ、切除縁(切除した組織の縁から癌細胞までの近さ)の幅など疾患の特徴のほか、外科的手術、放射線治療、タモキシフェンなどの治療、ならびに転帰(主として同じ乳房での再発)であった。 患者のほぼ全員が一次治療として乳房温存手術を受けていたが、そのうち半数以上の患者は残った癌細胞の除去のため追加手術として乳房温存手術(BCS)もしくは乳房切除手術を1回以上受けていた。

術後補助療法として放射線治療を行うと再発が減少することが臨床試験で確認されているにもかかわらず、最終手術として乳房温存手術を受けた患者のうち放射線治療を受けたのは60%にすぎなかった。 再発率は、乳房切除手術を受けた患者で最も低く、乳房温存手術を受け放射線治療を受けなかった患者が最も高く、BCS後に放射線治療を受けた患者でその中間となることがわかった。

最終手術後に切除断端陽性、または切除縁が小さい場合も、切除断端に癌細胞が存在しない患者と比べ再発リスクが高かった。 治療法および切除縁が外科医によって大きく異なることにより、再発リスクに大きなばらつきが生じているという知見も得られた。著者らは、放射線治療を採用する外科医が増え、切除断端陽性例や切除縁が小さい事例を減らせば、5年後および10年後の再発率を15〜30%減らせると推測している。

女性患者が侵襲性の低い治療法を推奨する外科医を好む傾向にある可能性や、外科医により意思決定が大きく異なること、各治療法のリスクと効用についてのコミュニケーション不足などがこれらの結果に影響を与えたかについては本研究では明らかにならなかった。しかし、「選択した治療法と切除縁の状態が転帰の予測に重要であることから、外科医によって異なるこれら説明不能の要素が患者の転帰に深く関与しているかもしれない」、と著者らは結論づけている。

リンパ腫における重要な遺伝子変異を同定

癌と関連する複数のシグナル伝達経路を活性化して一部のリンパ腫の増殖を加速させる再発性の遺伝子変異が同定された。MYD88という遺伝子に起こるこの変異は、活性化B細胞様(ABC)サブタイプ—びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のうちもっとも治療が困難とされている—患者のおよそ3分の1で発見された。追加の実験で可能性のある治療戦略が示されたと、NCI癌研究センターのDr. Louis Staudt氏らが12月22日付Nature誌で報告した

MYD88タンパクは通常は生体の免疫応答に関わっている。一方、MDY88の変異型であるL265Pは、自発的にタンパク質複合体を構築し、NF-κBおよびJAK-STATシグナル伝達経路を通じリンパ腫細胞の生存を助けることがわかった。調査した155人分のABC DLBCLサンプルのうち、29%に同じMYD88変異があり、これは他のDLBCLサブタイプや他のリンパ腫ではまれであるか存在しないものだった。

また、MYD88のL265変異が構築したタンパク質複合体IRAK4の構成成分を阻害することにより、MYD88の変異したリンパ腫細胞が死ぬことがわかった。製薬各社が炎症および自己免疫疾患の治療薬としてIRAK4阻害剤を開発中であるが、これらをリンパ腫で試験することが可能かもしれないと研究者らは述べた。 本知見を得るために、研究者らはまずABC DLBCLの生存に必要な遺伝子を同定した(RNA干渉と呼ばれる技術による)。

MYD88およびIRAK1(IRAK4と関連する遺伝子)が不可欠な遺伝子であることを同定したのち、患者サンプルにおけるこれら遺伝子の配列決定を行い、再発性のMYD88の変異(L265)を発見した。MYD88の変異が癌でどのような役割を果たすかの解明が次の課題である。

Staudt氏は、MYD88の変異が現在のところDLBCLで見られるものでもっとも多い変異であることに触れ、「DLBCLの病理の重要な部分が解明されました」と述べた。リンパ腫細胞は免疫調節経路の一つを事実上「ハイジャックして」増殖している、とも述べた。

MYD88の変異は癌細胞における重要な2つのシグナル伝達経路をコントロールし、「癌細胞が少しの投資で最大の効果を得られる可能性がある」ことから、この変異はしばしば起こっているのではないかとStaudt氏は推測している。

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橋本 仁 訳
大渕 俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)監修
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