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RET融合遺伝子も転移性大腸がんの予後予測因子となる可能性

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RET融合遺伝子も転移性大腸がんの予後予測因子となる可能性

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

まれな分子変化の観点から、転移性大腸がんの分子レベルの特徴を解明する

 

2017年度ESMO世界消化器がん学会(6月28日~7月1日、バルセロナ、スペイン)の口演発表にて、イタリア、ミラノにあるイタリア国立がん研究所Fondazione IRCCSのFilippo Pietrantonio博士は、RET遺伝子再構成の有無により予後が不良で特殊な臨床病理学的・分子的特徴を持つ転移性大腸がん(mCRC)の新規でまれな分子的サブタイプを定義できる、と述べた。

 

RET融合遺伝子は大腸がん(CRC)の1%未満で発生するが、チロシンキナーゼ阻害剤投与を受けた個々の患者に関するこれまでの報告が期待できる内容であったことから、RET融合遺伝子が新たな治療標的となる可能性がある。しかし、RET遺伝子再構成陽性mCRCの臨床的・分子的特徴の大半は依然として明らかにされていない、とPietrantonio博士は研究背景で説明した。

 

研究チームは、下記を利用して、世界各地のRET融合遺伝子を有するmCRC患者を同定した。すなわち、(1)すでに発表されている分子レベルの異常を有する症例報告、(2)イタリア-韓国連携下でのスクリーニング、(3)RXDX-105 (NCT01877811)という第1相試験、および(4)Foundation Medicine社の臨床データベースである。

 

RET遺伝子再構成症例の臨床病理学的・分子的特徴を、ミラノ、ピサおよびソウルの専門医療機関3カ所でスクリーニングを受けたRET遺伝子再構成のない症例の特徴と比較した。

 

合計で、RET遺伝子再構成陽性mCRC17例(内訳:NCOA4-RET融合遺伝子10件、CCDC6-RET融合遺伝子6件、およびTRIM24-RET融合遺伝子1件)およびRET遺伝子再構成のない189例を本報告の対象とした。

 

遺伝子再構成は高齢患者でより多く認められた(p=0.016)。すなわちRAS野生型では(p<0.001)、BRAF野生型では(p=0.079)、およびMSI-H(high)では(p<0.002)となった。すべてのRET融合遺伝子は、RASおよびBRAF野生型(wt)腫瘍および、症例の56%ではMSI-H症例で認められた。腫瘍原発部位との有意な関連性は認められなかった(p=0.147)。

 

追跡調査期間中央値である28.5カ月の時点で、RET遺伝子再構成腫瘍患者の全生存期間(OS)はRET遺伝子再構成のない腫瘍患者よりも短かった(HR:3.28, 95% CI 2.32-3.29; p<0.001)。RET遺伝子再構成以外の重大な予後変数(原発腫瘍の切除、RAS遺伝子およびMMR遺伝子の状態)を含めた多変量モデルにおいて、OSがより短いこととの相関が維持される因子はRET遺伝子再構成のみであったが、それは統計学的には境界レベルであった(HR:2.41, 95% CI 0.91 – 6.34; p = 0.077)。FOLFOX療法+パニツムマブ併用療法を受けている患者の最良の効果としても病勢進行であったが、レゴラフェニブやスニチニブなどの非選択的RET阻害剤による治療では、短期間ではあったものの臨床的効果は得られた。

 

抄録提出の時点では、RET融合遺伝子陽性患者由来異種移植における非選択的阻害剤および選択的阻害剤の前臨床期活性に関するデータおよび次世代シーケンシングの分子データの処理は進行中であった。

 

右側部位での発症との有意な関係が認められない以外には、RET遺伝子再構成陽性mCRCに関する現在の知見はALK、ROS1、およびNTRK陽性mCRCについてこれまで報告された知見に類似している。抗EGFRモノクローナル抗体(mAb)などの利用可能な治療選択肢に対する感受性がきわめて限定的である可能性があることから、RXDX-105などのRET特異的阻害剤を用いた分子標的療法を今後の研究の優先事項とすべきである。

 

また、Pietrantonio博士は2017年度ASCO年次総会でRAS、BRAF wt mCRC の抗EGFR mAbに対する初期抵抗性を明らかにする症例対照研究から得たデータを発表した研究チームの一員である。

 

抗 EGFR 単剤療法が奏効するのはRASおよびBRAF wt CRC腫瘍患者の40~50%のみである。抗EGFR mAbに対する初期抵抗性のゲノム予測因子として下記のさまざまな分子変化が示唆されている。すなわち、(1)EGFR以外のチロシンキナーゼ受容体 (HER2、 MET、TrkA-C、ROS1、ALK、RET)の過剰活性化をもたらす変異、(2)下流シグナル伝達経路(RAS/RAF/MAPKs, PI3K/PTEN7Akt)を恒常的に活性化させる変異である。しかし、抵抗性の予測因子として示唆されるこれらのさまざまな分子変性の妥当性はまだ確認されていない。

 

研究チームは、HER2遺伝子増幅/変異(mut)、MET遺伝子増幅、NTRK/ROS1/ALK/RET遺伝子再構成、およびmut活性化MAPK経路/PI3K/Akt 経路の陰性予測能を前向きに実証する目的で症例対照研究を実施した。抗EGFR mAbに対する抵抗性(症例)あるいは感受性(対照)が明らかになっているRASおよびBRAF wt mCRC患者を選出した。

 

候補遺伝子変異の保有率が対照で0%、症例で15%との仮説を立て、変異の保有率が等しいという帰無仮説を第1種過誤(αエラー)0.05、第2種過誤(βエラー)0.20で棄却するには症例47例、対照47例を要した。

 

高頻度変異腫瘍は自身の増殖について単一経路に依存することはほとんどないため、研究チームはマイクロサテライト不安定性(MSI)の影響も評価した。

 

合計で症例47例、対照47例を組み入れた。主要評価項目に達した。すなわち、前述の変異が症例20例(42.6%)、対照1例(2.1%)で報告された(p<0.001)。MSI-Hは、抵抗性腫瘍で感受性腫瘍よりも有意に高頻度で認められた(15% 対 0%、p<0.001)。

 

HER2遺伝子増幅は抵抗性患者7人、HER2 mutG776V、エクソン20は抵抗性患者1人、MET遺伝子増幅は抵抗性CRC患者5人、HER2およびMET遺伝子の共増幅は抵抗性患者1人、NTRK遺伝子再構成は抵抗性mCRC患者2SCYL3-NTRK1 TPM3-NTRK1RET遺伝子再構成は抵抗性患者1CCDC6-RETPIK3CA エクソン 20 mutA1035Vは抵抗性患者1人で認められた。一方、H1047Rは感受性患者1人、AKT1 mutは抵抗性患者1人(R25C、エクソン2)、およびPTEN mutは抵抗性患者3人(L247S、R233stop、およびdel P248, エクソン 7)で認められた。

 

RAS mutHotspot Cancer Panel v2による低アレル頻度で3例、新規RAS mutも抵抗性症例3例で認められた。

 

研究チームは、これらのまれな変異をまとめて評価することで抗EGFR mAbについてより良い患者選択につながることを初めて前向きに実証し、一方で、他の個別化療法に対する道を開いた、との結論を下した。

 

参考文献:

Pietrantonio F, Schrock A, Lee J, et al.RET rearrangements define a new and rare molecular subtype of metastatic colorectal cancer (mCRC); abstract O-011.Ann Oncol (2017) 28 (suppl_3): mdx262.010.DOI: https://doi.org/10.1093/annonc/mdx262.010

 

Cremolini C, Morano F, Moretto R, et al.Dissecting primary resistance to anti-EGFRs in RAS and BRAF wt metastatic colorectal cancer (mCRC):A case-control study.J Cline Oncol 35, 2017 (suppl; abstr 11508)

 

原文掲載日

翻訳三浦恵子

監修東光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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