H.ピロリ菌には標準的な3剤併用療法が4剤併用より優位/ミシガン大学 | 海外がん医療情報リファレンス

H.ピロリ菌には標準的な3剤併用療法が4剤併用より優位/ミシガン大学

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

H.ピロリ菌には標準的な3剤併用療法が4剤併用より優位/ミシガン大学

ラテンアメリカでの研究より

新しい研究結果から地域ごとに異なる治療法が必要かもしれない

ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、消化性潰瘍の原因として知られる細菌であるが、同時に胃癌の主要な原因でもある。胃癌は世界で最も死亡率の高い癌のひとつである。

今回、ラテンアメリカ地域の7施設で大規模な臨床試験が実施され、少なくとも今回対象となった母集団では、H.ピロリの除菌には標準的な3剤併用療法の方が、2つの4剤併用療法よりも効果が高かった。これらの4剤併用療法はヨーロッパとアジアにおける研究でその優位性が認められていた。

「今回の研究は、最近の文献とは少し異なる結果となりました」と、本研究の共著者であるミシガン大学の William D. Chey医師は言う。「実際、4剤併用療法を評価したほぼ全ての他のランダム化コントロール試験では、10日間連続服用および5日間併用のいずれの場合も4剤併用の方が高い有効性を示しました」

しかし、それらの文献のほとんどはイタリアと台湾で実施されたものである、とChey氏は指摘する。今回の新しい研究は7月20日付のLancet誌オンライン版に掲載され、H.ピロリの除菌には他の地域で実施された研究結果を基準とするのではなく、その地域で有効な方法に従うことが重要であると示唆している。著者らは、抗菌剤に対するH.ピロリの耐性に地理的変異が生じ、それが一因で母集団により結果が異なるのではないかと推測する。

NCI提携機関のひとつであるSWOG(米国南西部癌臨床試験グループ)により設計された本研究は、チリ、コロンビア、コスタリカ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグアの都市部および農村地域で行われた。

研究者らは、H.ピロリ保菌者であるボランティア1463人を3つの治療群にランダムに割り付け、この種の試験としては最大規模の臨床試験を実施した。

3つの治療群は、4剤併用5日間服用群(アモキシシリン+クラリスロマイシン+メトロニダゾール+ランソプラゾール)、同じ4剤を10日間で2期に分ける連続服用群(アモキシシリン+ランソプラゾール5日/クラリスロマイシン+メトロニダゾール+ランソプラゾール5日)、そして標準治療である抗菌剤2種+プロトンポンプ阻害薬1種(アモキシシリン+クラリスロマイシン+ランソプラゾール)であり、参加者らはそのいずれかの治療を受け、治療開始6週後、H.ピロリ感染の有無を検査した。

その結果、3剤14日間服用した参加者の除菌率は82.2%であった。それに対し、過去の研究で3剤併用療法よりも高い除菌効果を示した、4剤5日間併用群の除菌率は73.6%、10日連続服用群では76.5%であった。

本試験は胃癌発症を減らす取組みの一環として行われた。

「最終的に、H.ピロリの完全除菌によって胃癌を予防できるかどうかという議論を進めることが目標です」と、主著者であり SWOG 統計センターおよびフレッドハッチンソン癌研究センター(ワシントン州シアトル)の疫学者であるE. Robert Greenberg医師は述べている。「結論を出すまでには、考えなければならないことや、集積すべき情報が、まだまだたくさん残されています」

胃癌予防が複雑になっているのは、H.ピロリの感染が人に対し悪影響だけでなく、例えば小児喘息やアレルギー性疾患罹患率の低下、食道癌発症率の低下などの、有益な影響をもたらすかもしれないというエビデンスが,少ないながら結論がでずに存在するからである。

H.ピロリ治療法の効果を比較する、米国内で実施された大規模研究が存在しないため、米国でH.ピロリの治療にあたる医師に対してどの治療法を推奨すべきかが、早急に解決しなければならない問題である。「今回の臨床試験を行う前は、私はその問題の答えは明白であると考えていました。しかし試験結果が出た今は確信が持てなくなりました」と、Chey氏は述べた。

胃癌に関する統計国際癌研究機関(IARC)によると、2008年、胃癌は世界で多い悪性腫瘍の第4位、癌死の第2位、推定99万人が新たに発症し、約73万8千人が死亡。初発胃癌のうち72%は発展途上国で発症。

本試験はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ・基金(助成OPP43930) より資金提供を受けた

Chey氏の他共著者は以下の通りである G. L. Anderson, Ph.D., and J. J. Crowley, Ph.D., SWOG Statistical Center; G. E. Goodman M.D., Fred Hutchinson Cancer Research Center; D. R. Morgan M.D, M.P.H., University of North Carolina; J. Torres, Ph.D., Instituto Mexicano del Seguro Social, Mexico City, Mexico; L. E. Bravo, M.D., Universidad del Valle, Cali, Colombia; R. L. Domniguez, M.D., Hospital Regional de Occidente, Santa Rosa de Copán, Honduras; C. Ferreccio, M.D., M.P.H., Pontificia Universidad Católica de Chile, Santiago, Chile; R. Herrero, M.D., Ph.D., Fundación INCIENSA, San José, Costa Rica; E. C. Lazcano-Ponce, M.D., Ph.D., and E. Salazar-Martínez, M.D., Dr.Sc., Instituto Nacional de Salud Pública, Cuernavaca, Mexico; M. M. Meza-Montenegro, Ph.D., Instituto Tecnológico de Sonora, Ciudad Obregón, Mexico; R. Peña, M.D., Ph.D., and E. M. Peña, M.D., Centro de Investigación en Demografía y Salud, León, Nicaragua; P. Correa, M.D., Vanderbilt Medical Center; M. Elena Martínez, Ph.D., University of Arizona Cancer Center; M. Valdivieso, M.D., and L. H. Baker, D.O., University of Michigan

出典 Lancet誌, DOI:10.1016/S0140-6736(11)60825-8, オンライン版 July 20, 2011

参考 SWOG(米国南西部癌臨床試験グループ)は米国で最も大きな共同臨床試験団体のひとつであり、NCIから主に資金提供を受けている。癌の予防、発見、治療の発展、癌サバイバーのQOLの向上のために臨床試験を計画、実施している。4000人以上の加盟臨床研究員が19のNCI指定癌センターを含む500以上の提携機関で研究を行っている。本部はミシガン大学(ミシガン州アナーバー)、事務局はサンアントニオ、テキサス、統計センターはワシントン州シアトルにある。( Frank DeSanto記)

スペイン語はこちらより参照可能 EN ESPAÑOL

******
武内 優子 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
******

原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  3. 3リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  4. 4ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  9. 9専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  10. 10免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要

お勧め出版物

一覧

arrow_upward