2011/01/25号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2011/01/25号◆癌研究ハイライト

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2011/01/25号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年1月25日号(Volume 8 / Number 2)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト
・消化管間質腫瘍(GIST)の新たな治療選択肢が示唆される
・大腸癌再発リスクの遺伝子検査の有効性
・一般的な腎臓癌発症に関与する新たな遺伝子変異
・インターフェロン-γはマウスモデルにおいて紫外線誘発メラノーマの進行を促進する
・関連記事:大腸癌検診の受診率増加が健康格差報告書で示される

消化管間質性腫瘍(GIST)の新たな治療選択肢が示唆される

分子標的薬ソラフェニブ(ネクサバール)が、米国食品医薬品局(FDA)認可の2つの薬剤に反応しなくなった消化管間質腫瘍(GIST)患者への新たな選択肢になるかもしれないと、先週サンフランシスコで開催された2011年Gastrointestinal Cancers Symposium(消化器癌シンポジウム)で報告された。 3

8人が参加した第2相臨床試験では、イマチニブ(グリベック)およびスニチニブ(スーテント)に抵抗性を示した患者の13%でソラフェニブ服用後に部分奏効(腫瘍の50%以上の縮小)、55%に病勢安定(腫瘍増殖の停止)を認めた。無増悪期間および全生存期間の中央値は、それぞれ5.2カ月と11.6カ月であった。1年後、患者の44%が生存していたが、2年後には21%となった。

ソラフェニブの標的となるのは複数の分子であり、この標的のなかには数種のチロシンキナーゼ変異体(調節不能となった同タンパク質は多くの癌と関連)も含まれているが、イマチニブおよびスニチニブには感受性がないことがわかっていると、試験責任医師であるシカゴ大学のDr. Nicholas Campbell氏は記者会見で説明した。

この試験のプロトコルは早い段階で修正され、イマチニブとスニチニブの両方に抵抗性を示したGIST患者を参加者として募集した。試験全体では6人がイマチニブに抵抗性を、32人が両薬剤に対する抵抗性を有していた。 NCIが支援するこの試験では、60%以上の患者が有害事象のためにソラフェニブの投与量を減らさなければならなかった。

有害事象として、血圧の大幅な上昇、重篤な皮膚発疹などがあったが投薬量を減らしても薬の有効性には変化はみられなかったとCampbell氏は述べている。 この試験結果では、イマチニブおよびスニチニブ抵抗性の腫瘍を有するGIST患者の治療において、ソラフェニブが「明確な臨床的効果」を示していると同氏は結論づけた。

また、今後、さらにGIST治療のためのソラフェニブ試験が必至であるとも述べている。現在、2種類のチロシンキナーゼ、PDGFおよびKITの変異がソラフェニブに対する反応と関連するかどうか判断するため、この試験の患者について予備解析が進められている。

大腸癌再発リスクの遺伝子検査の有効性

初期ステージ大腸癌患者の再発リスクを評価する遺伝子検査が開発され、現在のところ試験段階にあるが、このほど2回目の検証がなされたことが、先週サンフランシスコで開催された2011年Gastrointestinal Cancers Symposium(消化器癌シンポジウム)で報告された

この検査はColoPrintと呼ばれ、18の遺伝子の活性度に基づいたリスクスコアを提供するものである。検査の開発と最初の検証試験は昨年発表された報告書に示されている。

ステージ2の大腸癌患者の大多数は外科手術のみで治療される。しかしこれらの患者の約20%は再発を経験する。彼らがアジュバント(術後)化学療法を受ければ再発リスクを下げ利益を得るかも知れない。新しい試験は、この遺伝子検査が「化学療法を受ける必要がないであろう患者の特定を容易にする」可能性を示したと、ドイツのミュンヘンにある工科大学付属病院のDr. Robert Rosenberg氏は記者会見で述べた。この試験は、検査の製造会社であるAgendia社から一部資金提供を受けている。

予後予測のため病理学および臨床的因子を使用したこれまでの試みは成功していない。今回の試験では、ミュンヘン工科大学付属病院においてステージ2あるいは3の大腸癌で外科手術を受けた患者233人の腫瘍組織をColoPrint検査で分析した。腫瘍における遺伝子活性のパターンに基づき、この検査は患者の再発リスクが高いか低いかを示すスコアを算出する。

次に研究者らはステージ2の患者135人の予後と、リスクスコアを比較した。ステージ2の患者の73%は検査により低リスクと判定され、このうち術後5年以内あるいはその後に再発を経験した患者は5%であった。検査では、残りの27%のステージ2の患者は高リスクとされ、8年以上の平均追跡調査期間中に20%の患者が再発を経験していた。

この遺伝子検査は、臨床的危険因子とは関連しない独立した結果を示すようだと、Rosenberg氏は説明した。 3回目の検証試験となるPARSC(Prospective Analysis of Risk Stratification by ColoPrint−)試験はすでに始まっている。この試験はAgendia社からの資金提供を受け、実診療において遺伝子検査の使用が実現可能かどうかを評価するものである。また通常使用されている臨床的指標に比べて、ColoPrint分析の方がより正確な再発リスク評価が可能かどうかも検証される。

一般的な腎臓癌発症に関与する新たな遺伝子変異

もっとも一般的な腎臓癌である腎淡明細胞癌(ccRCC)の3分の1以上でPBRM1という遺伝子に変異が発見された。国際的研究チームであるウェルカムトラスト・サンガー研究所のDr.Ignacio Varela氏らによる一連の研究の中で、研究者らはPBRM1が腫瘍抑制遺伝子であることを同定し、その遺伝子機能を失うことにより、制御不能の細胞増殖といった腎細胞の癌化を助長するのかもしれないと示した。この結果は1月19日Nature誌電子版に掲載された。

研究者らは初めに、同一患者による正常組織と7個のccRCC腫瘍細胞検体について、エキソームと呼ばれるタンパク産生ゲノムの一部の配列を解析した。7検体で合計156個の変異を確認したが、複数の検体で変異が認められたのはPBRM1だけであった。さらに36の非ccRCCを含む257の腎細胞癌検体についてPBRM1遺伝子配列を解析したところ、88例に変異がみられ、その全例がccRCCであり、著者らはその発現率の高さに驚いたと記述している。

また、PBRM1変異は乳癌、肺癌、胆嚢癌、膵臓癌の細胞株にもみられた。膵臓癌マウスモデルによる遺伝子データの解析によるとPBRM1遺伝子の不活性化が膵臓腫瘍発現を加速する可能性が示された。 SiRNAを用いccRCC細胞のPBRM1活性を阻害したところ、細胞分裂、細胞コロニー形成(物理的支持体のない成長・分裂能)が促進され、転移に必要な細胞移動能が増大した。

PBRM1は、クロマチンリモデリングかかわるタンパク質をコードしている。クロマチンリモデリングによって、通常はタンパク質と強固に複合体を形成しているDNAに対し転写因子がアクセスできるようになる。PBRM1で制御された細胞シグナル経路の分析により「PBRM1活性が染色体不安定性と細胞増殖に関する経路を制御している」と著者らは記した。また、ccRCCにみられる他のいくつかの遺伝子もクロマチンリモデリングに関与していると述べた。

「これは、非常に有望な結果となった」とNCIの癌研究センター泌尿器腫瘍支部主任研究員であるDr. Marston Linehan氏は述べた。Linehan氏は、PBRM1以外では唯一、多くのccRCCで重要な役割を果たしている遺伝子である、腫瘍抑制遺伝子VHLを同定した研究チームの一員でもあった。「この結果は腎臓癌の基本的病態に全く新たな見解を与え、有効な治療法を示してくれることになるであろう。PBRM1変異は腎淡明細胞癌の重要な役割を果たしており、腎淡明細胞癌の発生にはVHLとPBRM1の両方とも変化する必要があるかも知れないと考えられる」と結論づけた。

インターフェロン-γはマウスモデルにおいて紫外線誘発メラノーマの進行を促進する

免疫系タンパク質であるインターフェロンγは、マウスにおいて、メラノーマが発生するメラノサイト(色素産生細胞)の増殖、生存、あるいはその両方を促進することによりメラノーマを進行させる可能性がある。日光やその他の要因による紫外線(UV)がメラノーマを発症させる機序を理解するために行われたこの研究の結果は 、1月19日号のNature誌電子版に発表された。

これまで癌に対する免疫システムの先天的防衛機構の一部であると考えられてきたインターフェロンγが、メラノーマの進行を促進するという知見は予想外であった。 NCIの癌生物学・遺伝学研究所のDr.Glenn Merlino氏とDr. M.Raza Zaidi氏を中心とした研究者らは、人間の皮膚が日焼けする相当量の紫外線B波(UVB)が、マウスの皮膚にメラノサイトの異常増殖および移動を引き起こすことを発見した。またUVB曝露により、インターフェロンγに反応するとされる遺伝子が継続的に活性化されたが、このような遺伝子には腫瘍細胞が免疫系によって検出および攻撃されることを回避するように作用する可能性があるものが含まれる。インターフェロンγの活性を阻害することでメラノサイトの増殖および移動に及ぼすUVBの影響が軽減された。

研究チームは、白血球の一つで、UVB曝露後に皮膚へ移動するマクロファージによりインターフェロンγが産生されることを示した。正常なマウスの皮下にマクロファージとマウスメラノーマ培養細胞を注射したところ、マクロファージはメラノーマ腫瘍の成長を顕著に促進させたが、インターフェロンγの活性を阻害するとこの作用は消失した。また、調査したメラノーマ患者27人のうち70%においてインターフェロンγ産生マクロファージが同定されたが、これはインターフェロンγがマウスだけでなくヒトにおいても、この種の癌に関与している可能性を裏づけるものであった。

Merlino氏は癌患者に対するインターフェロンやその他サイトカインの高用量療法は必ずしも有効ではなく、有害になることもあり、しばしば消耗性の副作用を伴うこともあると述べた。そして「この新たな研究により、ある特定の腫瘍関連炎症細胞によって産生された、低量で生理的に適切量のインターフェロンγが、実際はメラノーマの成長を促進することがある」ということがマウスにおいて示されたと述べた。

しかるに、これがヒトにも当てはまるなら、 「インターフェロンγの伝達経路阻害は、一部のマクロファージ過剰メラノーマ患者において、より有効で、毒性の少ない免疫治療の代替療法としての可能性を示すものである」。さらに、研究室で現在取り組んでいる、日焼け直後のインターフェロンγ抑制という方法が、紫外線曝露で誘発されるメラノーマの有効な予防策となることが証明されるかもしれないとも同氏は記している。

関連記事:大腸癌検診の受診者増加が健康格差報告書で示唆米国疾病対策センター(CDC)は先日、『健康格差と不均衡についてのレポート(2011年)』を発表した。

今回のレポートは、社会指標および健康指標における格差を検証した初めてのものである。医療を受けるまでの利便性から、乳幼児死亡率、汚染された空気環境への暴露といった幅広いトピックを取り上げている。

1つのを使い、大腸癌検診における格差について述べている。2002年から2008年までの大腸癌検診の受診率の変化を見るため、CDCの研究者らはBehavioral Risk Factor Surveillance System(行動危険因子サーベイランスシステム)のデータを使用した。この間の全体的な検診の利用が10%以上(54%以下から64%以上へ)増加していることがわかったが、一部の集団においては依然として格差が認められた。世帯収入、医療保険への加入、また教育の差が検診の受診率に影響を及ぼしていた。

例をあげると、アメリカンインディアンやアラスカの先住民における受診率の増加は約4%、医療保険に未加入の人々では4.5%の増加にとどまっている。 レポートでは次のように述べている。「人種、民族、経済力による健康格差を縮められる可能性はある。しかし、最大の弱者はどのような人々なのか、介入可能な方法ですぐに修正できる格差は何か、本当に時間をかけて格差が解消しつつあるのか、といったことについて国民の認識や理解を深めることが必要である」。

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岡田 章代、武内 優子、芝原 広子、河原 恭子 訳
鵜川 邦夫(消化器内科/鵜川病院)、後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院)監修
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