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約2割の乳がん患者がホルモン療法を未完遂、その理由と支援

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約2割の乳がん患者がホルモン療法を未完遂、その理由と支援

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) ESMOアジア2016

ESMOアジア会議2016で発表

 

乳がん患者の20%近くは処方されたホルモン療法を途中で中断していることが、シンガポールで開催されESMOアジア会議2016において研究者らによって報告された。5,500人以上を対象とした調査によれば、若年層患者およびホルモン補充療法(HRT)を受けたことがある患者は治療法を忠実に守る可能性が低いことがわかった。

 

「エストロゲン受容体(ER)陽性の乳がん患者において、タモキシフェンのような術後ホルモン療法は、特に長期間(5〜10年)服用した場合、再発を予防し、生存率の絶対値を5~10%改善します」と、筆頭著者のWahyu Wulaningshi博士(英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの生涯健康・加齢MRCユニット研究員、Philippine and Indonesian Scholars (PILAR) Research and Education(フィリピンおよびインドネシアの研究者(PILAR)研究教育)共同創設者)は話す。

 

「こうした治療を始める患者はかなり高い割合で、治療を最後まで続けていません。治療の中断は生存に悪い影響を及ぼす可能性があるという科学的根拠があります。そこで私たちは的を絞った方策を立てるべく、治療不順守(治療中断)の理由を調査しました」と、Wulaningshi博士は続けた。

 

研究に登録された女性5,544人は、アロマターゼ阻害剤またはタモキシフェンの処方を少なくとも1度受け、5年間の追跡調査データがあるER陽性乳がん患者である。スウェーデンの人口の60%近くを占めるウプサラ-エレブル、ストックホルム-ゴットランド、および北部スウェーデンの地域登録台帳から女性を特定し、処方情報を入手した。このデータに基づいて、治療順守への影響要因に関する情報をスウェーデン国民登録台帳から調査した。治療順守は調剤した薬剤によって判定した。すなわち、5年間で必要とされる薬剤の80%未満しか受け取っていない患者を不順守に分類した。

 

5年間で20%の女性が治療不順守となった。多変量解析によれば、治療不順守に対するもっとも強い独立予測因子は、若年齢、HRT投与歴、配偶者の有無、社会経済的地位(雇用形態)であった。

 

50才未満の女性は、50~65才の女性より、治療を順守していない可能性が50%高く、不順守の全事例のうち5%は若年層であることに起因するものであった。HRT投与歴のある女性は、投与歴のない人よりも不順守である可能性が57%高く、未婚女性は、既婚女性よりも不順守である可能性が33%高かった。雇用に関して言えば、無職の女性は、ブルーカラー層の女性に比べて不順守である可能性が60%高かった。ホワイトカラー層の女性はブルーカラー層の女性患者に比べて内分泌療法を順守する可能性がわずかに低かったが、その絶対差は無視してよいレベルであった。

 

Wulaningshi博士は言う。「妊娠可能年齢の乳がん患者の一部は、内分泌治療が妊娠可能性に及ぼす潜在的な影響を心配していると思われ、彼女らが薬の服用をやめる確率が高い理由になっていると考えられます。乳がんの診断後に妊娠・出産を望む女性は、それに応じた治療選択肢についてより多くの情報が必要です」。

 

Wulaningshi博士は続ける。「乳がんのホルモン療法を受ける前にHRTを受けた女性において、何らかの生物学的差異があるかどうかを調べる研究が必要です。そういった患者はホルモン治療の副作用を起こしやすい可能性があります。服用量を調整するなど、患者に合わせた治療アプローチにより、患者の治療順守が改善するかもしれません」。

 

Wulaningshi博士は、未婚の患者にはホルモン療法を続けるための社会的および精神的サポートが少ないかもしれないと推測する。

 

「私たちの研究では、ホルモン療法の初回処方時と、その後の来院時に、ホルモン療法の有効性とその重要性に関する情報を特に伝えるべき患者グループを特定しました。患者支援団体の拡充により、患者が治療継続の障壁を乗り越えるられるよう支援できると思われます。治療順守の促進は、これらの患者により良い転帰をもたらすはずです」。
今回の知見に対するコメントとして、Lim Siew Eng博士(シンガポール 国立大学がん研究所(NCIS)血液腫瘍学部、上級顧問)は以下のように述べた。「経口ホルモン療法の不順守は、より高い再発率につながります。そして、それは、乳がんの転帰に影響するリスク要因の中で最も重要かつ修正可能な要因です」。

 

「この大規模研究において、疾病要因や治療要因ではなく、主に社会経済的要因が、治療不順守リスクとして確認されました。診断前のHRT投与歴もリスクとして確認されました。こうしたリスク要因に基づいて、より厳格な治療順守モニタリングとより良好な副作用管理を行えば治療順守率が改善するグループを絞り込める可能性があります」。

原文掲載日

翻訳小澤弥生、山田登志子

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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