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定期的な血液検査で、がん患者の生存期間を予測

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定期的な血液検査で、がん患者の生存期間を予測

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) ESMOアジア2016

ESMOアジア会議2016で発表

 

定期的な血液検査が緩和ケアを受けているがん患者の生存期間を予測できることを、シンガポールで開催中のESMOアジア会議2016において研究者らが報告した1

 

「緩和ケアを受けているがん患者は、誠実かつ正確な予後情報を求めていますが、この情報は、慎重に、また希望を持ち続けたいという患者の願望を尊重する形で共有されなければなりません」と述べたのは、筆頭著者で京都大学の腫瘍内科医、釆野優(Yu Uneno)氏である2,3

 

「進行がんの患者とその家族は、治療、終末期をどこで過ごすか、そして緩和的化学療法をいつ中止するか、について決定を下さなければなりません」と釆野氏は続けた。効果のない治療を続けることは、命を脅かす有害事象を増加させ、生活の質を低下させ、ホスピスの紹介を遅らせ、患者の望む場所で最期を迎える機会を奪います。予後の正確な予測は、がん患者と介護者の終末期ケアを改善します」。

 

生命予後の予測は、薬物治療を行うべきかどうかの決定因子となる。数週間以上生存する見込みのない患者において、細胞毒性を有する化学療法は、辛い副作用のため行われることはほとんどない。緩和ケアでは、鎮静剤のミダゾラムが症状緩和に用いられるが、2週間以上の投与で耐性が生じるおそれがある。したがって、持続的なミダゾラムの投与は数週間以内に死亡する可能性のある患者にのみ推奨され、予測生存期間が1カ月を超える場合は禁忌となる可能性がある。

 

呼吸困難やせん妄などの主観的な症状を用いた既存の予後予測モデルは、医師によって点数が異なることがある。これらの症状は一時点でのみ評価され(たとえば治療開始時)、モデルの使用はその時点に制限される。

 

今回発表されたSix Adaptable Prognostic (SAP)モデルは、日常診療で定期的に測定される3つの血液検査測定値(アルブミン、好中球、乳酸脱水素酵素)を用いる。このモデルは、治療開始後の任意の時点で使用することができる。患者の状態が変わり得ることを考えると、これは重要な特性の一つである。SAPモデルは、日本の京都大学医学部附属病院で化学療法を受けた約5,000人のがん患者を対象に開発された。このモデルは、化学療法を受けているがん患者において1~6カ月以内の死亡を予測し、化学療法開始後の任意の時点で医師が予後を再評価することを可能にした。

 

本研究では、緩和ケアを受けているがん患者を対象にモデルの予測値を調査した。本研究は、実際の進行がん患者の生存を予測する4つのモデルの性能を比較した、日本・予後予測の指標検証(J-ProVal)試験のサブ解析としてデザインされた4

 

このサブ解析には1,015人の患者が含まれ、うち385人は病院の緩和ケアチームによるケアを受け、464人は緩和ケア病棟に入院し、166人は在宅緩和ケアサービスを受けていた。研究者らは、受信者動作特性(ROC)分析を行い、緩和ケアを受けているがん患者におけるSAPモデルの死亡予測性能を計算した。1〜3カ月以内の死亡を予測する曲線下面積(AUC)は、0.75〜0.80の範囲であった。

 

「SAPモデルは、1〜3カ月で死亡する可能性のある患者を予測する優れた性能を有していることがわかりました。予測は75〜80%の症例で正確でした。 SAPモデルは、医療従事者と患者にとって有望な意思決定支援になり得ます。生存の正確な予測は、患者が最期に備える十分な時間を確保することを可能にし5、また効果的な緩和ケアの計画にとっても不可欠です」、と釆野氏は述べた。

 

この調査結果に対し、シンガポール国立がんセンター緩和医療部のコンサルタントであるGrace Yang氏は、「抗がん治療設備の急速な増加は、がん患者が複数の化学療法、免疫療法または分子標的療法を受けられることを意味します。がん患者は、身体症状や大きな経済的負担を伴うことなく、生涯最後の日まで積極的な治療を受ける可能性があります。がん患者の予後に関する情報は、さらなるがん治療の有益性と負担を検討するのに役立つでしょう」とコメントした。

 

「患者の予後を知ることは、抗がん治療だけでなく、症状を緩和する治療の長所と短所のバランスについての意思決定をも容易にするでしょう。たとえば、効果の発現時間と持続期間、副作用とリスクプロファイル、および経済的負担がそれぞれ異なる疼痛緩和治療を決定する場合などです。がん患者の生存期間が予測できるようになるにつれて、それによる倫理的および心理的影響を検討するさらなる研究が必要になるでしょう」。

 

参考文献 

1 Abstract 484O_PR – ‘Validation of the set of six adaptable prognosis prediction (SAP) models for cancer patients in palliative care settings: A sub analysis of the Japan-prognostic assessment tools validation (J-ProVal) study’ will be presented by Dr Yu Uneno during the Proferred Paper session ‘Supportive and palliative care’: on Sunday, 18 December, 09:00 – 10:45 (SGT).

 

2 Kirk P, et al. What do patients receiving palliative care for cancer and their families want to be told? A Canadian and Australian qualitative study. BMJ. 2004;328:1343. doi:   10.1136/bmj.38103.423576.55

 

3 Kutner JS, et al. Information needs in terminal illness. Soc Sci Med. 1999;48:1341–1352.

 

4 Baba M, et al. Survival prediction for advanced cancer patients in the real world: A comparison of the Palliative Prognostic Score, Delirium-Palliative Prognostic Score, Palliative Prognostic Index and modified Prognosis in Palliative Care Study predictor model. Eur J Cancer. 2015;51:1618–1629. doi: 10.1016/j.ejca.2015.04.025.

 

5 Steinhauser KE, et al. Preparing for the end of life: preferences of patients, families, physicians, and other care providers. J Pain Symptom Manage. 2001;22:727–737.

原文掲載日

翻訳工藤章子

監修小杉和博(緩和ケア内科/川崎市井田病院)

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