2011/07/26号◆思春期小児および若年成人(AYA)癌特別号・特集「臨床試験はAYA患者の癌ケア向上への架け橋」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/07/26号◆思春期小児および若年成人(AYA)癌特別号・特集「臨床試験はAYA患者の癌ケア向上への架け橋」

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2011/07/26号◆思春期小児および若年成人(AYA)癌特別号・特集「臨床試験はAYA患者の癌ケア向上への架け橋」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年7月26日号(Volume 8 / Number 15)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 思春期小児と若年成人(AYA)癌特別号・特集 ◇◆◇

臨床試験はAYA患者の癌ケア向上への架け橋

小児癌患者の生存率は過去50年間で劇的に上昇し、5年生存率は50年前10%未満であったが今日では80%となった。同時に、思春期小児および若年成人(AYA)患者の治療進歩は停滞しており、5年生存率は過去30年にわたって変化がなく約70%にとどまっている。

25年前、AYA癌患者の予後は小児癌患者に比べて総じて良好であったが、この傾向はもはや現在のAYA患者にはあてはまらない。AYA患者でもっともよく見られる20の癌種のうち、1985年以降生存率の改善を示したのは8種のみである。

この治療や予後が向上しないのは、こうした小児治療の急速な進歩を小児腫瘍医にもたらした臨床試験へのAYA患者参加数が相対的に少ないためと考えられている。 臨床試験に参加するAYA患者がきわめて少数である主な原因の1つは、主要ながんセンターでさえ、この年齢層が参加できる臨床試験が少ないことが挙げられる。

例えば、ピッツバーグ小児病院AYAオンコロジープログラムの代表であるDr.Peter Shaw氏らによる2007年の研究によれば、この病院で5年間にわたり診断を受けた新患のうち、15歳未満の全小児患者の38%が臨床試験に参加したのに対し思春期後期の患者では27%であった。15歳以上の小児患者の57%が臨床試験に登録しなかった理由は、参加できる臨床試験がなかったためであったことが判明したと同氏らは述べている。

「AYA癌についてほとんど知られていないのは、患者が臨床試験に参加していないのが主な理由です。またAYA患者が臨床試験に参加しない場合、研究者らはAYA癌患者の治療や生存についての情報を集めることができないだけでなく、AYAの癌の病態を理解するための腫瘍標本もないということになります」とNCI癌治療評価プログラム臨床試験部のDr. Nita Seibel氏はコメントした。

この見解は同様に、2006年のNCI/LIVESTRONG思春期小児および若年成人の癌医療進捗調査グループによる報告書にも表れている。この報告書は、AYA癌患者の癌に対する医療の進歩を制限する要因として、臨床試験への参加不足を明らかにした。

全国で、研究者らは臨床試験にさらに多くのAYAを登録するため革新的な方法を試しており、望ましい臨床試験―アクセスの拡大、患者ナビゲーション、地域への働きかけ、研究医と地域医間の連携―を行っている。

小児と同様にAYA患者を治療する

18~39歳の患者は多くの癌種で、成人の治療法より小児の治療法の方が優れている可能性を示唆していることから、数年前に米国全体の研究者らによるレトロスペクティブ研究が始まった。

Blood誌に掲載された2008年の研究で、シカゴ大学白血病プログラムの責任者であるDr. Wendy Stock氏らは、現在は小児腫瘍グループ(COG)の一部である小児癌グループによる小児臨床試験か、CALGB臨床試験団体による成人臨床試験のどちらかで治療を受けた16~20歳の300人を超える急性リンパ性白血病 (ALL)患者の生存を調査した。

「小児科医が行っている治療法の方が好ましいという結果に有意差があることが判りました」とStock氏は語った。同様の結果はフランス、英国、オランダのレトロスペクティブ研究で示されている。

聖ジュード小児研究病院の研究者らにより2010年に発表された別のレトロスペクティブ研究では、副作用の懸念のため、従来年長患者には投与されてこなかった薬剤による小児治療法を受けたALLの思春期後期患者の治癒率が急激な上昇を示した。

2008年の試験結果に基づき、シカゴ大学の研究者らと3つの成人多施設共同臨床試験団体(CALGB、ECOG、SWOG)の共同研究者らは16~39歳のALL患者を対象とした小児治療法を行う初の群間比較第2相臨床試験を計画した。 当試験には計画された試験参加者数300人のうち200人が参加登録した。

この試験は少なくとも、検証中の仮説と同様に、その協力的体質において重要である。さまざまな癌種が対象となっている点についての質問に対して、「単純に(そうしないと)十分な数のAYA患者がいないためで、当モデルは、米国の臨床試験団体が共同で若年成人ALL患者を対象とした臨床試験を行おうとしているものです」とStock氏は説明した。

別の臨床試験では、ユーイング肉腫に対する小児治療法が若年成人に対して有効かどうかを検証している。この試験はNCI癌臨床試験支援ユニットを通じて患者を募集している。同NCI癌臨床試験支援ユニットは、医師または所属医療センターが臨床試験協力団体の一員でない場合、同団体へのアクセスを医師らに許可するプログラムである。大部分の AYA癌患者は研究医療機関ではなく、地域の腫瘍内科医による診察を受けており、通常は腫瘍内科医の多くは臨床試験協力団体に直接的なアクセス権がないことが多いため、こうした募集方法をとっている。

「患者が10代後半から成人初期までの場合、小児腫瘍専門医に連絡することを最初に考える腫瘍内科医はほとんどいません」とShaw氏は述べた。「腫瘍内科医は通常の成人(癌患者)としてのみ考えており、(彼または彼女が)小児臨床試験の基準に適格であるかということは考慮していません。2マイル先または2つ先のビルにでも、自分の患者を登録できるかもしれない米国内COG試験の小児腫瘍医がいるかもしれないにもかかわらず、彼らは尋ねることさえ思いつきません。

癌の世界を先導する

興味深いことに、研究者らは一部のAYA患者が小児治療法による治療で恩恵を得ていることをわかってはいるが、その全ての理由は理解されていないとStock氏は述べた。「治療(治療法)の差がそれほど意味があるかどうか、われわれでさえわかりません。 治療の遵守にも差があるかも知れません。小児腫瘍専門医には、小児癌ケアの向上への方法に組み込まれた、もっと良い支援ネットワークがあります」と彼女は説明した。

小児保険制度全体は、患者が自分で意思決定ができる、あるいは自身のケアで積極的役割を果たすことは予想されないという事実に立脚しているが、AYA患者の大半が治療を受ける傾向にある成人医療はまさに正反対であり、患者は自助と自身の擁護者となることを望んでいることが前提とされている。

「子供たちは、両親がそばにいて、子供たちに服薬させたり予約を確認したりするため、これらの困難な治療をやり遂げます。高齢者には確立した支援ネットワークである家族、友人、隣人がいる傾向があります。しかし、若年成人、彼らの多くは自らそれをやらねばなりません」とStock氏は説明した。

試験実施施設のなかには、AYA患者が標準治療を受けていようが臨床試験に登録されていようが、彼らがケアを受けているあいだ中、見過ごされることがないように確認し、患者をナビゲートする役割を担うところが次第に増えている。

「小児癌における数々の偉大な成功は、臨床試験に多数の小児癌患者が関与した結果だと考えます。それらの同じ原理を若年成人に適用すれば、われわれはさらに大きな成功を得られるでしょう」と修士号取得前のソーシャルワーカーで若年成人のためのウルマン癌基金の患者ナビゲーターであるElizabeth Saylor氏は語った。彼女は18~40歳の若年成人患者に対する支援を確実にするため、メリーランド大学グリーンバウムがんセンターのソーシャルワークスタッフと多職種からなる医療チームと協力して働いている。

日々の業務において、Saylor氏はAYA支援チームの一員として、患者が臨床試験に参加しているか否かにかかわらず、必要がある限り患者が診察を受けるのを手助けし、確実に受診できるようあらゆることを確認し対応にあたっている。「われわれはそれぞれの交通手段を確認し、彼らの電話がわずかな時間で充電されることも確認しているのです。いつでも連絡がとれるように」と彼女は言った。

またSaylor氏は、臨床試験参加のための補償範囲の交渉(若年成人は適切に補償されていない場合が多い)と、試験の柔軟性の交渉を支援している。彼らの多くは自分の小さい子供がいて、がんセンターから遠く離れた所で生活しているかもしれない。 「彼らが地方のがんセンターあるいは診療所でも、自宅により近いところに通えるという臨床試験の側面があれば、可能な方法を見つけ出すよう試みています」とSaylor氏は続けた。「若年成人が臨床試験の方法を遵守でき、しかも生計がたてられるようサポートする努力をしています」。

モニタリングと支援を増やすことによって臨床試験の治療遵守を改善できることが研究で明らかになっている。例えば、ALLのAYA患者を対象として小児治療法を検証している研究で、聖ジュード病院の研究者らは患者が自宅で服用することになっている薬剤を実際に服用しているか確認するため、被験者の血液を定期的に検査した。血中濃度が低下した場合、患者とその家族は治療に遵守する重要性に気づかされる。その注意喚起後、血中濃度はたいてい元に戻る。

地域社会に臨床試験を持ち込み、臨床試験に地域社会を持ち込む

臨床試験により多くのAYAを登録する際の主な障害は、AYAを対象とした臨床試験を提供する数少ない学術的施設から、彼らが広く分散していることと孤立していることである。 「臨床試験の問題を解決するよう努力は続けられますが、われわれはAYAが診療を受ける方法についてより大幅に実態を調べなければなりません。その問題を除いて臨床試験の問題は解決できません。」とCOGの思春期小児および若年成人委員会の前委員長であるDr. Karen Albritton氏は語った。

多くの試験実施施設では、AYAに対する専用プログラムを提供することによって学術研究医と地域内科医間のコミュニケーション障害の克服を試みている。Stock氏らは、彼らのセンターに週に1度の若年成人外来を置くことを試みている。「若年成人照会の中心拠点を作るためです。彼らは心理社会的必要性および経済的問題において特有な患者年齢層です」と彼女は述べた。 「もし、われわれがAYA患者グループを支援する環境を作ることができ、そのようなものとして地域に広めることができたら、われわれは照会を集め、臨床試験に患者を登録することがうまくできるかもしれません」。

Shaw 氏はピッツバーグ大学で成人がんセンターの同僚らと協力してAYAプログラムを立ち上げ、最近、地域内科医に援助の手を差し伸べ始めた。「私は、AYA患者のために協力することの利点について話すつもりです。私は内科医に対して、自分のしていることをわかっていないと言っているのではありません。われわれはただ臨床試験のチャンスと、患者が参加できる方法を彼らに熟知しておいて欲しいだけです」と彼は言った。

Albritton氏はクック小児医療センターおよび北テキサス大学健康科学センターで地域社会に根づいたAYA腫瘍学プログラムを開始するため、最近ダナファーバー癌研究所からテキサス州フォートワースへ転居した。 「われわれは全国にある多くの町と同様に、民間の腫瘍専門医が配置された小児センターおよびいくつかの良い病院がありますが、統一された学術的腫瘍学プログラムはありません。どのようにしてわれわれはそのような地域社会の場にAYA患者を中心としたケアをもたらすことができるでしょうか」と彼女は問うた。

Albritton氏によると、彼らの解決方法は、小児病院と同様に地域の内科医に依存する分散型プログラム(いくつかの単一のセンターに集約されない)を立ち上げることである。「われわれには専門的知識がありますが地域社会と共有しないと無駄になる、一方、地域の内科医には患者がいて知識も経験もあるので、互いにパートナーになるべきだと考えました」と彼女は続けた。

「クック小児医療センターのAYAプログラムではなく、フォートワースのAYAプログラムです。これはわれわれ全員にとっての問題であり、地域の内科医が臨床試験にAYA患者を送ったとしても、内科医が彼らの患者を失うようには感じてほしくないのです。われわれが地域社会としてこのプログラムを立ち上げれば、すべての人にとって双方に利益のある状況になるでしょう」。

— Sharon Reynolds

HOPE 試験: AYA癌について母集団ベースのデータ収集2005年、NCI およびランス・アームストロング財団により支援された進捗調査グループ (PRG)はAYAの癌の生存率改善にほとんど進歩がなかった理由を調査するため設立された。PRGの報告書はAYA癌患者と癌サバイバーにおいてさらなる研究が絶対的に必要であることに初めて焦点を当てたものの1つである。

作業グループによって浮かび上がった主な研究プロジェクトの1つは、Adolescent and Young Adult Health Outcomes and Patient Experience(AYA HOPE:思春期小児および若年成人の健康上の転帰と患者の体験)研究と呼ばれる大規模コホート研究であった。しばしば重要な人生の移り変わりの中間にいるさまざまなグループである思春期小児および若年成人の間で癌はまれであり、彼らを試験に参加させるのは難しかった。「研究者らが調べたい情報を研究するために、十分な人々に試験に参加してもらうのはやりがいがあります」とNCI癌制御・人口学部門のDr. Ashley Wilder Smith氏は述べた。

「これらの患者がどこで治療を受けているか、どのようなケアを受けているか、治療中と治療後の患者の体験はどのようであるか」を研究者らがさらに理解するため、大規模集団ベース研究は重要であるとSmith氏は述べた。 AYA HOPEはAYA癌患者と癌サバイバーを調査するための最良の方法を明らかにし、入院患者と外来患者の診療記録を収集するための実施可能な試験としてデザインされた。

当試験にはNCIのSEERプログラムの癌登録機関7カ所から約530人のAYA患者が参加した。当初のAYA HOPE試験では診断後 6~14カ月の患者を評価した:追跡調査は1年後に実施された。

今年前半に発表された当試験の最初の報告では、AYA癌サバイバーを十分に分析するのに必要な情報の種類が集められたが、それは容易ではなくかなりの努力を要するものであった。

「これは、この年齢層の癌サバイバーを対象に行われた最大の集団ベース研究であり、われわれに次のステップへの一部について示唆を与えています」とSmith氏は述べた。

AYA HOPE試験による治療中の患者、臨床試験関連、健康に関連した生活の質、支持療法、情報の必要性など他の原稿は執筆中であると同氏は述べた。

— Carmen Phillips

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福田 素子 訳
須藤 智久(臨床薬学修士/国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター) 監修
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