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2011/02/08号◆癌研究ハイライト

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2011/02/08号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年2月8日号(Volume 8 / Number 3)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜 PDFはこちらからpicture_as_pdf
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癌研究ハイライト
・閉経時にホルモン療法を開始すると乳癌リスクが高まる
・ワクチン接種により若年男性のHPV感染が低下する
・養子細胞移入で新たな腫瘍抗原が免疫療法における標的とされた
・マウス研究により前立腺癌の予後診断検査の可能性が示された
・癌の再発/転移の予測に関わる新たなタンパク質

閉経時にホルモン治療を開始すると乳癌リスクが高まる

閉経時に更年期のホルモン療法を開始した女性では、閉経後数年経ってからホルモン治療を開始した女性と比べて乳癌リスクが高まる。英国で実施された大規模な観察試験であるMillion Women Study試験(MWS)で得られたこの知見により、更年期症状の治療に用いられる併用ホルモン療法(エストロゲン+黄体ホルモン)が乳癌発症リスクと乳癌による死亡リスクを高めるという近年集まりつつあるエビデンスがさらに裏づけられた。この研究成果は1月28日付のJournal of the National Cancer Institute誌に報告された。

乳癌リスクの増加パターンは、「ホルモン療法が短期間であろうと長期間であろうと、また痩せている女性であろうと太りすぎの肥満女性であろうと、[MWS試験に参加した]女性の間では、さまざまなホルモン療法に共通して認められるものであった」とオックスフォード大学のDr. Valerie Beral氏らは記している。この知見は、併用ホルモン療法と乳癌との関係を初めて報告した2002年のランダム化臨床試験であるWomen’s Health Initiative(WHI)試験の結果を支持するものである。

「新たな知見により強調されたことは、女性が併用ホルモン療法を受ける安全な時期というものは、実際には存在しないという考えである」と、NCIの癌予防部門に所属し、NCIのWHI担当者であるDr. Leslie Ford氏は述べた。最初のWHI報告が発表された後、ホルモン療法は閉経時に開始すれば、より安全かもしれないと論じる人々もいたと彼女は述べた。「この新たな知見はこの議論を否定するものである」と同氏は続けた。

WHIとMWSの研究者らはどちらも、併用ホルモン療法を中止すれば乳癌発症率は急速に低下すると報告している。「ホルモン療法をやめれば、乳癌リスクが速やかにホルモン療法開始前の状態に戻ることを、女性が知ることが重要である」と同氏は述べた。

これまでのところ、エストロゲン単剤療法が閉経後女性における乳癌リスクを高めるかという点に関しては、WHIとMSWの結果が異なっている。WHIの報告では、この治療と乳癌リスクとの関連はほとんどないとされているが、MWSの研究者らは統計的に有意なリスクの上昇が認められたとしている。 今後数年のうちに、WHIのエストロゲン単剤療法による介入試験の追跡調査によってこの問題がより明らかになるだろうと、付随論説にDr. Rowan T. Chlebowski氏とDr. Garnet L. Anderson氏は記した。

Chlebowski氏はハーバーUCLAメディカル・センターのロサンゼルス生物医学研究所、Anderson氏はフレッドハッチンソン癌研究所に所属している。

ワクチン接種により若年男性のHPV感染が低下

4種類のヒトパピローマウイルス(HPV)株に対する免疫をつけることを目的としたワクチンであるガーダシルにより、ワクチン接種時に16〜26歳であった若年男性における肛門生殖器のHPV感染率が低下したことを国際的なランダム化臨床試験が明らかにした。

この研究成果は2月3日付のNew England Journal of Medicine誌に発表された。 ガーダシルは2006年に9〜26歳女性の子宮頸癌、外陰癌、膣癌、生殖器疣贅[ゆうぜい](*いぼ)の予防を目的として初めて米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた

ワクチンが標的とする4種のウイルス株のうち、HPV-6とHPV-11の2種類は大多数の場合、生殖器疣贅を発症させるが、残りのHPV-16とHPV-18によりすべての子宮頸癌のうち約70%が発症する。また、HPV-16とHPV-18は肛門癌、陰茎癌、口腔咽頭癌にも関連している。

2009年にFDAは今回の試験結果に基づき、若年男性の生殖器疣贅の予防ワクチンとして、ガーダシル適用範囲を拡大した。 製薬会社のメルクが計画したこの試験には、18カ国から4,065人の若年男性が登録された。2,032人は6カ月間にワクチンを3回接種する群に無作為に割り付けられ、2,033人は同じ期間にプラセボの投与を受けた。H・リー・モーフィットがんセンター&研究所のDr. Anna R. Giuliano氏らは、試験参加時に被験者のHPV感染状態を測定したのち、組み入れ後3年間も定期的に測定した。また参加者は定期的に身体検査を受け、HPV関連の生殖器皮膚病変の有無が確認された。

研究者らは、重複する2群の参加者に対する解析を行った。治療意図に基づく(intention-to-treat)コホート(集団)には、組み入れ時のHPV感染状態にかかわらず、少なくともワクチンもしくはプラセボを1回以上投与された男性が含まれる。プロトコルに適合した(per-protocol)コホートには、3回すべて接種し、試験のワクチン接種期間を通じてワクチンが標的とする4種類のHPV株すべてに対して陰性であった男性のみが含まれている。

すなわち、ワクチン接種の終了以前に感染した男性は除外された。ガーダシルはHPV感染を予防するようにデザインされており、すでに成立した感染除去率を高めてはいないとみられているため、推定される有効性は治療意図に基づくコホートよりもプロトコルに適合したコホートの方が高くなる。

治療意図に基づくコホートでは、皮膚病変の65.5%が予防され、その多くはワクチンにより標的とされている4種のHPV株のうち2種に関連する生殖器疣贅であった。以前にウイルスに曝露していない男性を含まむ、プロトコルに適合したコホートでは、ワクチンにより皮膚病変の83.8%が予防された。

身体のいずれかの部位に生じた4種のうちいずれかのHPV株による6カ月以上の持続性感染の割合は、治療意図に基づくコホートでは47.8%低下し、プロトコルに適合したコホートでは85.6%低下した。低い割合ではあるが、感染者に最終的に癌を発症する可能性のあるHPV-16とHPV-18の持続性感染は、プロトコルに適合したコホートではそれぞれ79%と96%減少したが、これはごく少人数のデータに基づいた数値である。

ワクチンが男性におけるHPV関連癌の発症を予防するかに関しては、追跡期間を大幅に長くした追加的な試験が必要であろうと著者らは記している。 2010年12月22日にFDAは、9〜26歳の男性と女性双方に対する肛門癌と、関連する前癌病変の予防に対してガーダシルを承認した。この承認は、今回の試験のうち他の男性と性交渉を持った経験のある男性集団における解析結果に基づいて行われた。

Dr. Giuliano氏らは、HPV-16とHPV-18感染によるグレード1、2、3の肛門上皮内腫瘍が78%減少したことを見出した。肛門癌の約90%がHPV感染と関連があるとされている。

養子細胞移入で新たな腫瘍抗原が免疫療法における標的とされた

養子細胞移入(ACT)と呼ばれる免疫治療戦略が、メラノーマや滑膜肉腫として知られる関節の軟部組織腫瘍を含めた転移性癌患者に有効な可能性があるとする第2相試験結果が発表された。1月31日付のJournal of Clinical Oncology誌に発表されたこの研究は、患者自身の白血球に患者自身の癌を認識させ攻撃させようとするNCIの癌研究センター(CCR)の研究者らの取り組みの一部である。 治療のため、Dr. Steven Rosenberg氏らは、患者自身のT細胞上の受容体がNY-ESO-1と呼ばれる抗原に結合するように遺伝的に改変した。

NY-ESO-1は滑膜肉腫の80%、転移性のメラノーマ、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌の15〜30%に発現する。この抗原は通常、精巣を除いては、正常組織に存在しない。 患者の腫瘍でNY-ESO-1抗原が過剰に発現している場合にT細胞の採取が行われた。その後、NY-ESO-1受容体を持つようにする遺伝コードを運ぶレトロウイルスを用いて、抽出されたT細胞を遺伝的に改変した。改変されたT細胞は研究室での培養後、患者に再注入された。改変されたT細胞の注入に備えて、患者は血液中のその他の免疫細胞を除去するための化学療法を受けた。

この試験に登録した17人の患者全員が進行性の転移性癌患者であった。6人の滑膜肉腫患者は化学療法を複数回受けており、11人のメラノーマ患者はこれまでにインターロイキン-2治療を受けていた。養子細胞移入後、5人のメラノーマ患者には測定可能な反応が見られたが、そのうち2人にはそれぞれ20カ月間および22カ月間の完全奏効(すべての腫瘍徴候の消失)が認められた。

反応が認められた残りの3人のメラノーマ患者のうち、1人には初回治療から9カ月間持続する部分奏効(腫瘍サイズの縮小)が認められた。4人の滑膜肉腫患者には客観的に部分奏効が認められ、そのうち1人では18カ月間奏効が持続した。 試験に参加した患者には、幹細胞移植やインターロイキン2治療でよくみられる好中球減少や血小板減少といったもの以上の毒性は認められなかった。

また、この試験とは別の腫瘍抗原を標的とした養子細胞移入を用いた他の試験で認められている毒性より重症度が低かったと著者らは記している。 試験への参加人数が少ないことから結果の解釈には制限が生じるとしながらも、この試験は「滑膜肉腫患者に対して初めて成功した免疫療法である」と研究者らは結論づけた。

しかし、この抗原は頻度の高い癌腫で発現されるためNY-ESO-1を標的とする戦略はさらに進められるべきであり、治療対象を多くの癌種に広げることが可能となるかもしれないと著者らは続けて述べている。 <

マウス研究により前立腺癌の予後診断検査の可能性が示される

ヒトと同じようにマウスのなかにも前立腺以外に広がることのない前立腺癌を発症するものがある。研究者らはこのようなマウスを用いて、なぜ一部の腫瘍のみが転移をして致死的となるのかを調べた。遺伝子改変マウスの研究により、研究者らは前立腺癌の進行をもたらす4つの遺伝子を同定した。この遺伝子に対応するヒトの遺伝子も前立腺癌の転移に影響を与えているとみられ、致死的となりうる癌を患者を同定する予後マーカーとなりうる可能性が出てきたという報告が、2月2日付のNature誌電子版で行われた。

致死的な前立腺癌と患者の生存に悪影響を及ぼさないと考えられる癌とを鑑別するために新しい検査が必要とされている。しかし、ヒトの前立腺癌の腫瘍内不均一性がきわめて高いことから、ダナ・ファーバー癌研究所のベルファー応用がん科学研究所のDr. Ronald DePinho氏らは遺伝子解析を行いやすい遺伝子改変マウスにおける予後マーカーの探索を行うことにした。同氏は偏りのない方法を用いて、Smad4と呼ばれるマウスの遺伝子が腫瘍細胞の拡散を抑制していることを研究者らは突き止めた。

機能的研究や遺伝子の種間比較などを含む追加的な実験とこれまでの数々の証拠から、マウスの前立腺癌の進行にはSmad4を含む4つの遺伝子が関与しているらしいことが示された。研究者らは、癌の進行がSmad4遺伝子とPten遺伝子の不活化と、別の2つの遺伝子cyclinD1とSpp1遺伝子の活性化により概ね制御されているプロセスであると結論づけた。

次に、これらの遺伝子から産生されるタンパク質をマーカーとして、ヒトの前立腺癌で対応する遺伝子が予後因子となりうるかを評価した。これらのマーカーをグリソン・スコアなどの標準的な臨床尺度に加えて用いると、Physicians’ Health Study試験と2回目の試験に参加した男性において、転移性前立腺癌による死亡の予測精度が高まることを研究者らは見出した。

「ヒトにおける初期の癌でみられる解決困難なゲノムの複雑さを取り除くためにマウスモデルを用いることにした。そして、このようにして浸潤の生物学的基盤に機能的に関連する一群のマーカーを同定できた」とDePinho氏は述べた。さらなる研究に向けて、ある企業が4つのマーカーに対する特許を取得したことも付け加えている。

癌の再発/転移の予測に関わる新たなタンパク質

多くのタイプの癌で認められるCPE-Δ Nと呼ばれる変異タンパク質が、癌の再発や転移に関し高い精度で予測するのに利用できる可能性があることが、2月1日付Journal of Clinical Investigation誌の電子版にて、国際研究者チームによって報告された

高転移性肝癌細胞株では、転移する可能性が低い細胞株と比較するとCPE-Δ Nに対するメッセンジャーRNA(mRNA)のレベルが増加していたことが、香港大学のDr.Terence Lee氏と米国国立小児保健発達研究所(NICHD)のDr.Saravana Murthy氏のチームにより見いだされた。研究者らが高転移細胞株において短鎖干渉RNA(siRNA)法を用いてCPE-Δ N発現を遮断したところ、細胞増殖と浸潤能はどちらも阻止された。

同じような結果は乳癌、大腸癌、頭頚部癌細胞株でも得られた。 また、マウスに移植したCPE-Δ N発現陽性の肝腫瘍は、CPE-Δ Nを遮断したsiRNAを含有する対照群の腫瘍よりも16倍増殖しており、siRNAによる遮断のない腫瘍は肝臓と肺に転移していたことなども明らかとなった。 研究者らは、CPE-Δ Nが肝臓癌の一種である肝細胞癌の患者に対し再発(転移を含む)を予測するためのバイオマーカーとして利用できるかどうかを評価した。

患者99人のデータを調べたところ、疾患が再発しなかった肝細胞癌患者の75.8%では、肝腫瘍でのCPE-Δ N mRNA量が正常組織で認められる量よりも2倍を超えることはなかった。対照的に、腫瘍再発した患者の92.3%のCPE-Δ N mRNA量は、正常組織で認められる量の2倍を超えていた。

これら知見から、検出感度(疾患が再発するかどうかを正しく予測するバイオマーカーの確度)は92.3%であると解釈できる。 さらに患者80人を追加して行った確認試験でも結果は類似していた。重要なことにCPE-Δ Nは、日常臨床において再発のリスクを予測する指標として通常用いられている腫瘍の進行度(病期)とは関係なく再発の危険性を予想できると、著者らは説明している。

研究者らはまれな神経内分泌腫瘍である褐色細胞腫または傍神経節腫の患者14人において、CPE-Δ Nの再発予測能を検討するとCPE-Δ N mRNAの遺伝子コピー数が異常に高い患者では、100%の正確さで再発することが予測された。 「本研究のユニークな点は、この指標が関連性のない2種類の癌で予測に役立ったという事実である。複数の腫瘍タイプに普遍的なバイオマーカーはほとんどない」と、NCIの癌研究センター職員兼研究者、および本文の共著者であるDr.Stepehn Hewitt氏は述べている。

もしこの結果が確立されれば、例えば、腫瘍がすでに全身に広がっているような患者に不必要な手術を行わなくて済む、というようにCPE-Δ N によって治療方針をより良い方向に導ける患者がいるだろう、とHewitt氏は述べている。

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窪田 美穂、山下 裕子 訳
榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)、田中 文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)監修
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