終末期ケアの在りかた、積極的治療の減少と早期緩和ケアの開始 | 海外がん医療情報リファレンス

終末期ケアの在りかた、積極的治療の減少と早期緩和ケアの開始

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

終末期ケアの在りかた、積極的治療の減少と早期緩和ケアの開始

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

患者が若く、収容患者数が多く緩和ケア病棟がない施設で治療を受ける場合、終末期化学療法を受ける可能性が最も高い。

 

デンマークのコペンハーゲンで10月8日に開催された2016年度欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された大規模検証結果によると、固形がん患者が死亡する1カ月以内の化学療法実施率が依然として高く、早期段階での緩和ケアの開始や終末期医療の明確なガイドラインの策定を検討するパラダイムシフトが求められている。

 

フランスのマルセイユにあるInstitute Paoli-Calmettes腫瘍内科所属の筆頭著者Phillipe Rochigneux医師によると、化学療法は、しばしば終末期間近の固形がん患者に対して症状緩和のために実施されるが、効果がなく有害であることが多い。

 

Rochigneux医師は、終末期における化学療法使用に関してフランス全土から集められたデータと化学療法使用に関連する要因についての検証結果を、同僚を代表して発表した。

 

研究者らがデザインした全国規模の患者登録簿を用いた試験register-based study(登録ベースの試験)には、2010~2013年のフランス国内入院患者のうち、転移性固形がんで死亡した20歳以上の全患者が登録された。

 

研究者らは、化学療法使用に関連する患者、腫瘍、施設レベルの特性を特定するために多変量解析を用いた。

 

特異的サブ解析も算出し、標準一次化学療法に対する腫瘍の奏効率30%超(文献データ)と定義される腫瘍の推定化学療法感受性の役割を調べた。

 

緩和ケア病棟がない病院では、報告された終末期化学療法実施率がより高かった。

 

転移性固形がんを有する終末期患者279,846人のデータが登録された。

 

終末期間近の化学療法実施率は、最期の3カ月間で39.1%、最期の1カ月間で19.5%、最期の2週間以内で11.3%であった。

 

最期の1カ月間で化学療法レジメンを開始した、または再開した患者は6.6%であった。

 

多変量解析で判明した化学療法実施率が低い患者の特性としては、女性(odds ratio [OR] 0.96; 95% confidence interval [CI] 0.93, 0.98)、高齢者層(OR 0.70; 95% CI 0.69, 0.71 for each 10-year increase)、および慢性的併存疾患数の増加(OR 0.83; 95% CI 0.82, 0.84)があり、それぞれが単独で、低い化学療法実施率と関連している。

 

標準一次化学療法に対し腫瘍が感受性を示した場合、患者は最期の1カ月間で化学療法を受ける傾向が高かった(OR 1.21; 95% CI 1.18, 1.25)。

 

終末期の化学療法に単独で関連する他の要因は、2005~2010年の間に主な治療法の革新が起きたがん種の患者であった(OR 1.17; 95% CI 1.14,1.20)。

 

終末期の化学療法実施率はまた、大学病院(OR 1.40; 95% CI 1.34,1.45)や総合がんセンター(OR 1.43; 95% CI 1.36,1.50)より営利病院で死亡した患者の方が高かった。

 

化学療法実施率の平均がより高かったのは、収容患者数の多いがんセンターや緩和ケア病棟がない病院で終末期間近に投与を受けたとされる患者であった(OR 1.21; 95% CI 1.18, 1.24)。

 

本研究の知見を検討したStein Kaasa医師は、患者は可能な限り長く良い人生を送ることを望んでいると述べた。

 

しかしながら、Kaasa医師は、そのことが死を間近にひかえて化学療法を受けることを意味するのかどうかに疑問を呈した。

 

Kaasa医師はまた、最終目標は終末期に化学療法の使用を減らすことなのかどうか、そうであれば、どのように減らすのかにも疑問を呈した。

 

その方法とは、患者との間に「がんだけに集中する以上」の関係(事前指示書の使用など、感情や家族の問題に対処する関係)を築くこと、症状や機能の系統的評価を行うこと、そして、患者に予後情報を伝えることである。

 

早期緩和ケアは、終末期における化学療法のバランスの取れた使用、症状管理、感情機能や家族へのケアの改善に役立つ。

 

緩和ケア資源の適切な使用を全体に取り込めば、慌ただしい腫瘍内科外来を助けることにもなるが、緩和ケア専門医が、がんに関する能力を備えている必要がある。

 

結論

終末期間近の化学療法実施率は、転移性固形がん患者で依然として高い。

 

これらの実施率は、特に、収容患者数が多く、緩和ケア病棟がない施設で治療を受けている若年患者において高い。

 

終末期ケアの明確なガイドラインの策定と実施により終末期の積極的治療を減少させること、緩和ケアをより早期に開始すること、そして、がん専門医をはじめとするがん医療従事者のための支持療法研修を強化することが急務である。

 

参考文献:

1300O

Use of chemotherapy near the end of life for solid cancers: What factors matter?
P. Rochigneux, J.L. Raoul, L. Morin
治療困難な固形がんの化学療法感受性と死亡前の1カ月間に化学治療を受ける可能性の関連(n=182,938)

原文掲載日

翻訳太田奈津美

監修佐藤恭子(緩和ケア内科/川崎市井田病院)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2がんに対する標的光免疫療法の進展
  3. 3アルコールとがんについて知ってほしい10のこと
  4. 4個別化医療(Precision Medicine)に...
  5. 5非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  6. 6リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  9. 9ルミナールAタイプの乳がんでは術後化学療法の効果は認...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 五十音 アルファベット 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他