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ベムラフェニブ、BRAF V600陽性の多くのがん種で効果

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ベムラフェニブ、BRAF V600陽性の多くのがん種で効果

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

ベムラフェニブはV600変異以外のBRAF変異を有する患者には有益ではない

 

既治療の進行BRAF変異陽性腫瘍の患者に対するベムラフェニブの第2相試験で得られた知見で、同薬は多様なBRAF V600変異腫瘍に有効であるが、V600以外のBRAF変異陽性患者においては効果がないことが示された。平均1.9(範囲:0.2-11.0)カ月の治療期間後、ベムラフェニブは非小細胞肺がん(NSCLC)や有毛細胞性白血病(HCL)等のさまざまのV600変異陽性腫瘍の患者に抗腫瘍効果が認められたが、V600変異以外の患者では有用性が認められなかった。

 

ベムラフェニブはBRAF変異陽性メラノーマに承認されている。メラノーマ以外の腫瘍ではBRAFのV600E変異の頻度は低い(<5%)と報告されているが、このような腫瘍にもベムラフェニブの有効性が示されている。

 

この研究は、フランス国立がん研究所が実施しているプログラムの一部である。

 

フランス、リヨンのLéon Bérard腫瘍内科センターのJean-Yves Blay医師は、二番目のASCE試験であるベムラフェニブの試験の結果をデンマーク、コペンハーゲンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO) 2016において10月9日、発表した。Blay教授は、この研究が、適応外使用を回避し、また適応外であっても安全かつ適切な管理下で患者が分子標的薬による治療を受けられるようにしようという、フランス国立がん研究所(INCa)による試みの一環であると説明した。

 

この第2相試験には、標準治療後に増悪したさまざまな種類の進行がん患者が登録された。すべての患者は、INCaが定めた分子遺伝学的検査法により検出されたBRAF変異を有していた。フランス全土にある96のセンターで変異のスクリーニングを受けた1500人以上の患者のうち、BRAF のV600変異陽性またはV600以外のBRAF変異陽性の腫瘍を有する患者78人が登録され、ベムラフェニブ1日2回960 mgによる治療を受けた。

 

本試験の主たる治療対象は、V600変異陽性の多様ながん種、肺がん、卵巣がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、胆管がん、肉腫/消化管間質腫瘍(GIST)、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞性白血病(HCL)、の患者である。その他に、V600以外のBRAF変異(エクソン11や15での変異)やその他のBRAF変化を有する特定の雑多な腫瘍の患者も今回の試験の対象に含まれていた。

 

有効性のエンドポイントは客観的奏効率(ORR)で、固形腫瘍ではRECIST v1.1、骨髄腫、CLL、HCLではそれぞれのの基準に基づき、8週間毎に評価した。ベイズ流アプローチにより有効性の下限である奏効率10%を下回ると判定された時点で、本試験は早期中止されうると決められていた。

 

患者の年齢の中央値は67歳(範囲:18〜84)で、患者の51%が女性であった。 56人の患者のデータを解析して奏効率を算出し、変異の種類やがんの種別に分けて報告された。

 

ベムラフェニブの効果は、多様ながん種にわたって認められた

 

規定のBRAF V600変異陽性の患者集団では、非小細胞肺がん(NSCLC)患者31人における奏効率(ORR)が43%であった。部分奏効(PR)13人、安定(SD)6人、進行(PD)7人、死亡4人、不明1人であった。有毛細胞性白血病(HCL)の患者では、評価可能なデータを有する患者4人のうち4人全員が奏効し、100%の奏効率(ORR)が示された。部分奏効(PR)、安定(SD)がそれぞれ2人であった。肉腫の患者では1人が死亡した。胆管がんの患者2人でも死亡1人、安定(SD)1人となった。甲状腺がんでは、患者3人のうち、安定(SD)1人、進行(PD)2人を認めた。

 

その他の雑多な患者集団においては、BRAF V600変異を有する6人中5人の患者データが評価可能であり、部分奏効(PR)3人、安定(SD)2人で奏効率(ORR)は60%であった。V600以外のBRAF変異腫瘍を持つ患者では、6人すべての疾患が進行した(PD)。

 

研究の知見についてのディスカッションで、Caroline Dive医師は、自分たちは生物学の知識を十分に持っていた(または十分に利用してきた)のだろうかと疑問を呈した。BRAF変異陽性の大腸がん患者にRAFを阻害しても効果はない。ほとんどのBRAF変異は、B-RAFキナーゼ活性を増強してMEKを増加させる。いくつかのBRAF変異(D594G、G446E、D287H)ではベムラフェニブ治療はMEKを抑制するものの、ERKを制御する野生型C-RAFを活性化している可能性が指摘されている。

 

これらの変異患者がこの試験に含まれていたかどうか、彼女は尋ねた。また、RASや他の上流のBRAF制御因子をスクリーニングしたとしたら、V600E以外の変異陽性(これまでに有効との報告はない)患者で予想されるより悪い転帰となるのか、転帰への影響があったのかについても質問した。非小細胞肺がん(NSCLC)における奏効率(ORR)が43%との見出しが目を引く。ただし、重要なのは奏効の持続期間である。ほとんどの症例で、画像検査は8週目に行われ、奏効は12週目で確認されている。無増悪生存期間(PFS)中央値は3.9カ月、最長8カ月であった。ベムラフェニブ投与によりV600陽性のがん細胞が死滅したとしても、残りの細胞が増殖してくるのか、そして他の薬剤との併用も必要なのではないか、と尋ねた。さらに、顕著な毒性にも言及した。

 

ベムラフェニブでの治療は忍容性が良好であった。

 

グレード3以上の治療関連の有害事象で最も多く報告されたのは、皮膚毒性および消化管毒性であった。

 

結論

 

著者らは、全国的なBRAF変異スクリーニングプログラムを実施したことが、BRAF変異疾患の患者にこの試験の治療への迅速なアクセスを可能にしたと結論付けた。ベムラフェニブは非小細胞肺がん(NSCLC)、有毛細胞性白血病(HCL)、およびその他のV600変異陽性腫瘍に重要な抗腫瘍活性を示したが、V600以外のBRAF変異腫瘍の患者には有用ではなかった。

 

参考文献

55PD Vemurafenib (VM) in non-melanoma V600 and non-V600 BRAF mutated cancers: First results of the ACSE trial

 

J.-Y. Blay, J. Mazieres, D. Perol, F. Barlesi, D. Moro-Sibilot, G. Quere, J. Tredaniel, X. Troussard, S. Leboulleux, D. Malka, A. Flechon, C. Linassier, I.L. Ray-Coquard, B. Arnulf, I. Bieche, G. Ferretti, F. Nowak, M. Jimenez, N. Hoog-Labouret, A. Buzyn

 

本試験は、UNICANCER、Inca、ARCから資金提供を受けた。

 

(監修者注)

*BRAF:セリンスレオニンキナーゼ

変異により下流のMAPK経路を活性化しがん化の原因となる。メラノーマの40-60%にVARF遺伝子変異が認められ、その90%はN末端から600番目のアミノ酸のバリン(V, valine)をコードするコドン(codon)の一塩基置換によるグルタミン酸(E, glutamic acid)への変異(V600E)により、他にV600KやV600R等の変異が報告されている。

*ベムラフェニブ:BRAF阻害剤

BRAF阻害によりBRAF変異(V600E)が原因のメラノーマには大きな効果を示す。一方で、BRAF-V600E変異陽性でも大腸がんでは効果がなく、その原因の探求が行われてきた。本研究は、データが十分存在するメラノーマと大腸がん以外の、がん種についてBRAF陽性例にベムラフェニブが有効かどうかを探索する研究です。

原文掲載日

翻訳野中希

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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