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BRAF変異陽性大腸がんにダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ併用は効果大

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BRAF変異陽性大腸がんにダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ併用は効果大

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

EGFR経路阻害と二重MAPK経路阻害の組み合わせによる上乗せ効果

 

2016年10月9日、デンマークのコペンハーゲンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2016)での成果報告によれば、BRAF V600E変異陽性の転移大腸がん患者は、ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ3剤併用療法を受けた場合、パニツムマブ+ダブラフェニブまたはパニツムマブ+トラメチニブの2剤併用と比較して、最良総合効果(best overall response)が改善し、無増悪生存期間(PFS)が延長した。

 

ダブラフェニブはBRAFを、トラメチニブはMEK1およびMEK2をそれぞれ阻害する。つまり、2剤はともにMAPK経路を遮断する。この2剤は単剤療法、併用療法のいずれでもBRAF V600E変異陽性メラノーマ(悪性黒色腫)において有効性が示され、使用が承認されている。BRAF V600E変異は、転移大腸がんの5~10%においても報告されているが、BRAFおよびMEKを阻害する単剤療法は、転移大腸がんであまり効果が示されていない。転移大腸がんではBRAF V600E変異がある場合、予後が不良であることが多い。

 

今回の研究の筆頭著者Ryan B. Corcoran氏(米国ボストン、マサチューセッツ総合病院、消化器がんセンター、トランスレーショナル・リサーチ部門長およびDamon Runyon Clinical Investigator Award受賞者 )が研究者を代表して結果を発表した。これは、パニツムマブによるEGFR経路と二重MAPK経路阻害の組み合わせが、BRAF変異陽性転移大腸がんに対して臨床的に有益であるかどうかを検証するものであった。本研究では、パニツムマブ+ダブラフェニブまたはパニツムマブ+トラメチニブの2剤併用、パニツムマブ+ダブラフェニブ+トラメチニブの3剤併用の有効性と安全性を評価した。試験に参加したBRAF変異陽性転移大腸がん患者134人は、パニツムマブ+ダブラフェニブ投与群(20人)、パニツムマブ+トラメチニブ投与群(31人)、パニツムマブ+ダブラフェニブ+トラメチニブ投与群(83人)に無作為に割り付けられた。併用における各薬剤の用量は、単剤療法での用量を上限とした。

 

試験では、総合的なバイオマーカー検査を行った。腫瘍生検を治療前と治療期間中に採取し、免疫組織化学検査でリン酸化ERK(pERK)について評価した。血中循環腫瘍DNA(ctDNA)連続サンプルを採取し、BRAF、KRAS、NRAS、PIK3CA各遺伝子の変異についてプロファイル化した。

 

3剤併用は2剤併用より無増悪生存(PFS)が改善

 

試験参加者の大半である120人は転移大腸がんに対する化学療法の治療歴があり、治療歴がない患者は14人であった。

 

ダブラフェニブ+パニツムマブ投与群では、完全奏効・部分奏効(CR/PR)の割合は10%で、患者の80%が病勢安定(SD)となった。トラメチニブ+パニツムマブ投与群では、CR/PRに至った患者はいなかったが、53%でSDがみられた。一方、2剤にパニツムマブを追加した3剤併用群では、CR/PRが18%となり、患者の67%でSDがみられた。

 

ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ投与群では無増悪生存期間(PFS)中央値にまだ到達していない。一方、ダブラフェニブ+パニツムマブ投与群とトラメチニブ+パニツムマブ投与群のPFS中央値はそれぞれ、3.4カ月、2.8カ月であった。

 

安全性試験の結果、全体で最も多く報告された有害事象は、ざ瘡様皮疹、下痢、倦怠感、悪心、発疹であった。

 

総合的なバイオマーカー検査から、さまざまな遺伝子における反応の変化や病勢進行に伴う変化が判明

 

治療期間中および治療前に採取した生検の免疫組織化学検査の結果、治療期間中の生検を治療前の生検と比較するとリン酸化ERKが減少した。リン酸化ERKの減少中央値は、ダブラフェニブ+パニツムマブ投与群で23%、トラメチニブ+パニツムマブ投与群で50%、ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ投与群で54%であった。

 

連続ctDNA解析においても、ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ投与群の患者14人中12人(86%)において、治療4週目という早い時点でBRAF V600E変異頻度の低下率が70%以上であったことがわかった。この結果は、治療6週目までに上記患者12人中6人で部分奏効が認められたことと一致する。

 

その一方、10人の患者では疾患の進行に伴い、BRAF V600E変異頻度が上昇したこともctDNA解析から判明した。

 

ベースラインでは存在しなかった他の変異が、疾患の進行に伴いctDNAで検出された。最良効果として完全完解(CR)/部分完解(PR)または安定(SD)を示した患者12人のうち、疾患の進行に伴い、ベースラインで検出されなかったRAS変異がctDNAで検出された患者は7人(58%)で、そのうち3人は複数のRAS変異が発生していた。また、ベースラインでBRAF V600E と RAS変異が同時発現していた患者は2人であった。

 

研究結果に関する考察で、Volker Heinemann氏は、ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ3剤併用について奏効率は高いが、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存(ORR)は同等であったことから、2剤併用療法より効果が高いかどうか疑問を呈した。マイクロサテライト不安定性 (MSI)、追加のRAS、PIK3CAの変異について、BRAF変異腫瘍の分子的特性化を進める必要がある。試験後療法の評価により、臨床的有益性の理解が進むと思われる。Heinemann氏は、3剤併用治療期間中に生じたRAS変異について意見を述べた。BRAFおよびRAS変異のctDNAモニタリングが実施可能であるが、臨床的関連性を実証する必要がある。全体として、BRAF変異陽性腫瘍において、3剤併用療法は有効と思われるが、今回の結果によって診療が変わるのか。この問いに対して、Heinemann教授は現時点では変わらないとはっきり回答したが、今回の結果を受けて今後の研究が促進される。

 

結論

 

著者らは、ダブラフェニブ+トラメチニブ+パニツムマブ3剤併用は、BRAF変異陽性転移大腸がんにおいて許容範囲内の忍容性と有効性を示したと報告した。そして最後に、免疫組織化学検査による総合的なバイオマーカー検査により下流標的阻害が証明されと述べた。ctDNAデータから、BRAF V600E変異頻度の変化がバイオマーカーの役割を果たし、治療奏効と病勢進行の両方のモニタリングが可能になると推察される。研究者らの説明によれば、治療前から存在するRAS変異と新たに発生するRAS変異から、併用療法への抵抗性の機序が解明される可能性もある。

 

参考文献

455O

 Efficacy and circulating tumor DNA (ctDNA) analysis of the BRAF inhibitor dabrafenib (D), MEK inhibitor trametinib (T), and anti-EGFR antibody panitumumab (P) in patients (pts) with BRAF V600E–mutated (BRAFm) metastatic colorectal cancer (mCRC)

 R.B. Corcoran, T. André, T. Yoshino, J.C. Bendell, C.E. Atreya, J.H.M. Schellens, M.P. Ducreux, A. McRee, S. Siena, G. Middleton, M. Gordon, Y. Humblet, K. Muro, E. Elez, R. Yaeger, R. Sidhu, M. Squires, S. Jaeger, F. Rangwala, E. Van Cutsem

 

本試験は、GlaxoSmithKline社から資金提供を受けた。ダブラフェニブおよびトラメチニブは、2015年3月2日現在、Novartis AG社の資産である。

原文掲載日

翻訳山田登志子

監修石井一夫 (ゲノム科学/東京農工大学)

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