EORTC分子診断で初の大腸がんスクリーニング結果 | 海外がん医療情報リファレンス

EORTC分子診断で初の大腸がんスクリーニング結果

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

EORTC分子診断で初の大腸がんスクリーニング結果

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

SPECTAcolor調査に参加した患者では、臨床試験で分子標的治療がさらに受けやすく

 

10月10日、デンマークのコペンハーゲンで開催された2016年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において、欧州大規模分子スクリーニング診断に参加した進行大腸がんの最初の患者集団から、遺伝子パネル配列探索の待望の結果が報告された。これらの患者で新たな治療標的となりうる遺伝子の変化が同定され、多くが分子標的治療の臨床試験への参加基準に適合していた。

 

スクリーニングされた患者の最初の知見報告

 

ドイツのドレスデンにあるCarl Gustav Carus大学病院のGunnar Folprecht氏は、「進行大腸がんにおける効率的な臨床試験登録のためのスクリーニング診断試験(Screening Platform for Efficient Clinical Trial Access:SPECTAcolor)」として併せて実施された最初の解析結果を、EORTC研究者を代表して発表した。SPECTAcolorは、進行大腸がん患者の遺伝子をプロファイリングするための、最初のプロスペクティブな、情報付加腫瘍サンプルのバイオバンクおよびバイオマーカー解析用診断法として「欧州がん研究治療機関(EORTC)」により開発が進められた。その目的は、分子標的治療薬の臨床試験への患者登録を促進することである。2013年の開始以来、このバイオバンクには欧州11カ国の32医療施設から900人以上の患者が参加し、数年以内に年間でこれと同等以上の人数を登録することが見込まれている。

 

Folprecht氏は、328種のがん遺伝子から構成される次世代シークエンシング(NGS)パネルでのスクリーニングを受けた大腸がん患者389人からの結果を報告した。全解析は「臨床検査の実施の基準( Good Clinical Laboratory Practice Standards)」に従って実施された。特定の融合遺伝子は検体のサブセットで評価され、遺伝子の変化はISO13485で認定された解析経路を用いて検出した。

 

遺伝子変異の有病率は腫瘍のマイクロサテライト安定または不安定により異なる

 

免疫組織化学またはDNA断片長解析によって、389人中370人(95.2%)の患者がマイクロサテライト安定(MSS)であり、19人(4.8%)が高度にマイクロサテライト不安定(MSI-H)であると判定した。両方のタイプの腫瘍は中央値で3カ所(範囲:0~16)のドライバー変異および中央値で8カ所(範囲:3~16)の潜在的ドライバー変異を有していることが解った。

 

MSSの大腸がん患者における遺伝子変異は、APCが77.8%に、TP53が72.2%に、KRASが47.8%にみられた。PIK3CA、FBXW7、BRAFの変異型はそれぞれ、17.6%、11.1%、10.5%の患者が有していた。SOX9、SMAD4、ARD1A、およびNRAS変異の認められた患者はいずれも10%を超えなかった。

 

マイクロサテライト不安定な腫瘍を持つ患者での遺伝子変異はさらに多く、TP53(52.6%)、PIK3CA(47.4%)、KRAS(42.1%)という変異結果であった。FBXW7とBRAF変異は各36.8%の患者に存在し、APCとSOX9変異は各21.1%にみられた。SMAD4、ARD1AおよびNRAS変異はマイクロサテライト不安定腫瘍の患者では検出されなかった。

 

APCおよびTP53の腫瘍局在は左側で右側より多く、それぞれ80.8%対73.6%、76.5%対62.3%であった。これに対してKRASとPIK3CAは右側で多く、それぞれ左対右でKRASでは45.5%対53.8%であり、PIK3CAでは14.1%対25.5%であった。BRAF変異腫瘍の有病率は右側で優位であり、左側5.1%対右側22.6%であった(p<0.0001)。

 

さらに研究者らは、BRCA2変異が左側0.8%対右側3.8%の局在性で1.6%の患者にあり、また5.3%のマイクロサテライト不安定腫瘍に存在することを検出した。合計1.9%の患者がERBB2変異を有しており、これは左側2.0%に対して右側1.0%と、左側腫瘍で2倍多くみられた。その他の潜在的な治療標的は、患者の2.5%にみられたERBB2増幅、3.5%にみられたFGFR1/2/3/増幅、およびMSI-H腫瘍患者の16%にみられたTSC1変異が含まれていた。また単独ALKおよびROS融合も観察された。

 

結論

 

SPECTAcolorは大腸がん患者において、まれではあるが診断および治療の対象となるような遺伝子標的を同定するための分子スクリーニングの効果的な診断法であり、これにより患者は分子標的治療の臨床試験に参加可能になる。著者らは、SPECTAcolorに参加した進行大腸がん患者の約10%において、遺伝子パネルの配列を探索することにより新たな治療標的の検出が可能であったと述べた。

 

参考文献

458O

Frequency of potentially actionable genetic alterations in EORTC SPECTAcolor

G. Folprecht, P. Beer, R. Salazar, A. Roth, D. Aust, R. Salgado, P. Laurent-Puig, J. Tabernero, D. Arnold, A. Stein, V. Golfinopoulos, A. Atasoy, E. Szepessy, M.P. Ducreux, T. Gorlia, S. Tejpar

本研究はEORTC公益財団より資金提供を受けた。

原文掲載日

翻訳大澤朋子

監修辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1がんに対する標的光免疫療法の進展
  2. 2BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  3. 3アルコールとがんについて知ってほしい10のこと
  4. 4個別化医療(Precision Medicine)に...
  5. 5専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  6. 6ルミナールAタイプの乳がんでは術後化学療法の効果は認...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  10. 10非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 五十音 アルファベット 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他