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メトホルミンでの糖尿病治療が膵神経内分泌腫瘍の進行リスク低下

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メトホルミンでの糖尿病治療が膵神経内分泌腫瘍の進行リスク低下

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)

 

膵神経内分泌腫瘍を有する糖尿病患者へのメトホルミン投与は、無増悪生存期間を延長するとの大規模後ろ向き研究結果

 

 

 

後ろ向き研究の評価によると、膵神経内分泌腫瘍治療を受けている患者のうち糖尿病を併発している患者は、糖尿病でない患者(正常血糖値)に比べて無増悪生存期間(PFS)がより長かったことが示された。

 

 

メトホルミンによる糖尿病治療を受けた患者はまた、糖尿病でない患者と比較して膵神経内分泌腫瘍の進行リスクが最も低かったという知見が、10月10日、コペンハーゲンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2016)において、あるイタリアの研究者チームより報告された。

 

 

筆頭著者であるSara Pusceddu氏(イタリア、ミラノFondazione IRCCS- Istituto Nazionale dei Tumori腫瘍内科所属)によると、これまでの研究から糖尿病患者はがん発症リスクが増加することがわかっている。メトホルミンは2型糖尿病治療に最も広く用いられる薬剤で、以前からがんリスクの低下との関連性があるとされており、最近ではがんにおける細胞増殖抑制剤としての可能性も認められている。さらにPusceddu氏は、メトホルミンがグルコースと、インスリンおよびインスリン様増殖因子1(IGF1)レベルの両方を間接的に低下させることを指摘し、さらに、同薬剤がTSC1-2によるAMPK(AMP活性化キナーゼ)の活性化およびmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害を促進するとも説明している。

 

 

膵神経内分泌腫瘍患者のうち、高血糖群対正常血糖群では無増悪生存期間にどう影響を及ぼすのか、また、エベロリムス(免疫抑制薬mTOR阻害作用)とソマトスタチン様薬剤のそれぞれ単独ないし併用治療中に、メトホルミンを追加投与することでどのような影響が現れるかを評価するべく、Pusceddu氏(医師)とその同僚らは、この多施設後ろ向き研究を実施した。進行リスクハザード比(HR)を検出力90%、誤差0.05、高血糖群対正常血糖群445人のリスク特定値を0.67として算出した。より小規模なサブグループ解析では、メトホルミン投与を受けた高血糖群対正常血糖群の両群解析と、インスリン治療を受けた高血糖群対正常血糖群の両群解析で、リスク特定値を0.67とする統計学的検出力は77%であった。

 

 

 

研究者らはイタリア全土における24施設のデータベースを参照した。上述したエベロリムスとソマトスタチン様薬剤のそれぞれ単独ないし併用で1999年から2015年まで膵神経内分泌腫瘍治療を受けた患者445人分のデータもそこに含まれている。患者らの年齢中央値は59歳(年齢幅:49~69歳)で、そのうち53.5%は男性であった。

 

 

膵神経内分泌腫瘍患者のうち、209人(46.7%)は正常血糖であり、236人は高血糖であった。この236人のうち112人(25.2%)の糖尿病患者がメトホルミン治療、91人(20.4%)がインスリン治療、33人(7.7%)が食事指導を受けた。

 

 

膵神経内分泌腫瘍治療を受けた患者全体の無増悪生存期間中央値は23.4カ月(95%信頼区間[CI]19.1,27.9)であった。一方で、糖尿病を発症していた高血糖患者のサブグループにおける無増悪生存期間は、正常血糖患者がわずか15.1カ月であったのと比較して、32カ月まで延長した(HR 0.63; 95%CI 0.50, 0.80(p = 0.0002))。

 

 

前述したサブグループをさらに解析したところ、インスリン調節治療を受けた糖尿病患者らの予後は、正常血糖の患者らの予後とより類似していた。すなわち無増悪生存期間の相違について、インスリン治療を受けた患者らの無増悪生存期間中央値は、20.8カ月(95% CI 15.6-36.3)、(対正常血糖患者HR 0.81、95%CI 0.60, 1.1(p = 0.18)と、統計的な有意差がなかったことが明らかになった。しかし、メトホルミン投与を受けた患者においては、無増悪生存期間が44.2カ月(95%CI 36.4, 61.9)と最も延長し、さらに、対正常血糖患者の進行ハザード比は0.45 (95%CI, 0.32, 0.62 (p< 0.0001))と、進行リスクも統計学的に有意なまでに低下したことが示された。これらの知見は統計学上非常に有意であると言える。

 

 

結論

 

本研究は、あらゆる後ろ向き研究と同様にその解釈には限界があると著者らは述べる。しかし、この大規模研究から得た知見は、エベロリムスまたはソマトスタチン様薬剤にメトホルミンを追加投与することで、糖尿病と進行性膵神経内分泌腫瘍を併発する患者に対し、臨床上の利益をもたらす可能性を示唆すると結論付けた。

 

 

彼らはこの暫定的な知見を確証するために、前向き研究の実施を呼び掛けている。

 

 

参考文献

 

417O

Metformin impact on progression-free survival in diabetic patients with advanced pancreatic neuroendocrine tumors (pNET) receiving everolimus and/or somatostatin analogues. The PRIME-NET (Pancreatic multicentric, Retrospective, Italian MEtformin) study

 

 

  1. Pusceddu, R. Marconcini, F. Spada, S. Massironi, A. Bongiovanni, M.P. Brizzi, N. Brighi, A. Colao, D. Giuffrida, G. Delle Fave, S. Cingarlini, F. Aroldi, L. Antonuzzo, R. Berardi, L. Catena, C. de divitis, P. Ermacora, M. Di Maio, R. Buzzoni, F. de Braud

 

 

本試験はFondazione IRCCS Istituto Nazionale Tumori di Milanoの資金提供を受けた。

 

(*原文には、THE PRIME-NET Pancreatic Retrospective Italian MEtformin (NET study)によるPFS (normoglycemia vs hyperglycemia)、PFS according to glycemia and hypoglyc drugsのグラフあり)

原文掲載日

翻訳佐藤美奈子

監修小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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