2011/02/22号◆特別リポート「稀な膵臓癌に標的治療が効果」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/02/22号◆特別リポート「稀な膵臓癌に標的治療が効果」

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2011/02/22号◆特別リポート「稀な膵臓癌に標的治療が効果」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2011年2月22日号(Volume 8 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

稀な膵臓癌に標的治療が効果

稀なタイプの進行膵臓癌の患者にとって、今回新たに有効な治療オプションが見つかったかもしれない。2つの第3相臨床試験の結果によると、スニチニブ(スーテント)とエベロリムスアフィニトール)による標的治療で、膵神経内分泌腫瘍(panNET)を増悪させることなく患者の生存期間を延長することができた。さらにスニチニブの試験では、投薬された患者の全生存期間も改善されていた。これらの結果は2011年2月9日付 New England Journal of Medicine (NEJM) 誌で公表された。

膵神経内分泌腫瘍は膵臓癌症例の2%以下を占める。過去20年にわたり、この種の癌に有効な治療法はなかったが、今回の試験結果は、もうそのような状況ではなくなったとの「明るい見通しが示された」と、Dr. Robert Jensen氏とDr. Gianfranco Delle Fave氏はNEJM誌の付随論説で述べている。 膵癌および他の消化管癌に焦点を絞って臨床と研究を行っているジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターのDr.Luis Diaz氏は、上記の試験結果を「非常にめざましいものだ」と述べた。「もしFDAがこれらの薬剤を、進行性膵神経内分泌腫瘍の治療目的で承認すれば、これらの薬剤は標準治療となるはずです」。

171人の患者にスニチニブを連日投与した試験(製造元であるファイザー社による試験)は、スニチニブを投与された患者において、無増悪生存期間の改善と、プラセボ群での死亡および重篤な有害事象リスクの上昇が中間解析で明らかとなった時点で、独立データ安全性モニタリング委員会の勧告により早期に中止となった。無増悪生存期間の中央値はスニニチブ群で11.4カ月、プラセボ群で5.5カ月だった。解析時、スニチニブ群は60%近い全生存期間の改善も示した。

製造元のノバルティス社から一部資金提供を受けたRADIANT-3と呼ばれるエベロリムス試験は410人の患者が登録された。この試験では、エベロリムスを連日投与された患者の無増悪生存期間の中央値は11カ月で、プラセボ群の患者は4.6カ月であった。全生存期間が改善されたかどうかについては,エベロリムス試験のフォローアップ期間が十分な長さではなかったため検証できていないが、プラセボ群患者の73%が、クロスオーバー(両方の試験デザインで許容されていた)してエベロリムスの投与を受けている。したがって、エベロリムスによる全生存期間の改善効果は今後も示すことはできないのではないか、と筆頭著者であるテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. James C. Yao氏らは述べた。

膵臓腺癌は膵臓癌の大半をしめており、膵管を覆う上皮細胞から腫瘍が発生する。しかし膵神経内分泌腫瘍は、島細胞と呼ばれる膵臓のホルモン放出細胞から生じる。 通常、膵神経内分泌腫瘍患者は膵臓腺癌患者より予後は良い。進行した膵神経内分泌腫瘍患者であっても、無治療で数年間病状が安定していることもあるとDiaz氏は説明する。

しかし、一度膵神経内分泌腫瘍が進行すると、化学療法や膵神経内分泌腫瘍の治療目的でFDAが承認した唯一の薬剤トレプトゾシンなどの一律の治療では限られた有効性しかなく、また非常に毒性が高い場合もあると氏は言う。 スニチニブとエベロリムスには独自の毒性がある。

両試験では、これらの薬剤は貧血や好中球減少などの重篤な有害事象のリスク上昇と関連しており、多くの患者において薬剤の減量や治療の一時中断を招いた。しかしこれらの有害事象は管理可能なもので、他の癌治療でこれらの薬剤に見られた結果と一致していると研究者らは報告した。

スニチニブとエベロリムスは、過去の研究で膵神経内分泌腫瘍の増悪と有効な治療への耐性を誘導しうると報告された細胞内シグナル伝達経路のタンパク質を標的としている。一例として、先月Science誌に掲載されたDiaz氏を含むジョンズ・ホプキンス大学の研究者による試験では、検査された膵神経内分泌腫瘍サンプルの14%において、mTORシグナル伝達経路の遺伝子(エベロリムスの標的分子)における変異を発見した。

またYao氏らは、mTOR伝達経路が重要な役割を果たすとして知られるいくつかの遺伝性癌症候群(結節性硬化症やフォン・ヒッペル・リンドウ病など)の患者は、膵神経内分泌腫瘍を発現することが多いと説明する。 このScience誌に掲載された研究によると、mTOR伝達経路遺伝子(PTEN、PI3K、およびTSC2)に変異がある患者は、他の一般的な変異があると特定された患者より予後が悪かった。

さらにDiaz氏は、他の数種類の癌でTSC2に変異があると患者の腫瘍が選択的にmTOR阻害薬に反応することが研究で分かったと言う。遺伝子変化や遺伝子変異と薬剤への反応とを相互に関連づけるため、さらに研究を続ける必要があるとDiaz氏は警告する。 「しかし、われわれの論文をこれら2つの試験結果とひとまとめにして考えるとすれば、その相乗効果で試験結果をサポートするものになるでしょう」とDiaz氏は述べた。

さらなる生体指標の研究によって、疾患が進行した患者と早期の患者の両方で、治療の選択肢と薬剤の「理にかなった組み合わせ」の選択の幅が広がるだろうとYao氏は言う。このような生体指標に、エベロリムスに対するmTORシグナル伝達経路の遺伝子変異やCT灌流スキャンの結果も含まれる、と彼は続けた。

2010年のASCO年次集会で発表された小規模の研究では、CTスキャンで高い透過性を示した腫瘍血流の多い膵神経内分泌腫瘍患者は、腫瘍の透過性が低い患者と比べて、(スニチニブのように血管形成を標的とする)ベバシズマブとエベロリムスでの治療が有意に奏効したという。

一方、Jensen氏とDelle Fave氏は、進行性膵神経内分泌腫瘍の患者に関していまだ未解決の重要な課題があると言う。「患者は、これらの薬剤が疾患を治療するというより、主として病状を安定させるからという理由で何年も服用し続けなければいけないのでしょうか」と問いかける。「もし患者がどちらかの薬剤に反応しなくなった場合、もう片方の薬剤で有効に治療できるのか、それとも2剤併用で治療を行うのでしょうか」と。

膵神経内分泌腫瘍患者に関して、エベロリムスと他の標的治療薬との併用を検証したいくつかの臨床試験が進行中である。エベロリムスは、FDAにより(肺および消化管の神経内分泌腫瘍と同様)進行性膵神経内分泌腫瘍の治療目的で優先審査が許可されている。スニチニブは既にヨーロッパで何人かの膵神経内分泌腫瘍患者の治療で承認されており、ファイザー社の広報担当者によると同社は、切除不能な膵神経内分泌腫瘍におけるスニチニブの使用に対する承認を実現するためFDAと連携して取り組んでいるという。

— Carmen Phillips

【画像下キャプション訳】
膵神経内分泌腫瘍(上記スライドで赤く染まっている部分)は、サイズと形が均一な細胞の配列で構成されている。また、膵管を覆う細胞から生じる腫瘍(腺癌)とは異なり、膵神経内分泌腫瘍の周りに間質細胞の過剰な層はない(ジョンズ・ホプキンス大学、Dr. Ralph Hruban氏提供)〔画像原文参照〕

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山本 容子 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター) 監修
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