エピジェネティック経路と新薬によって難治性小児癌の転帰を改善する見込み/ダナ・ファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

エピジェネティック経路と新薬によって難治性小児癌の転帰を改善する見込み/ダナ・ファーバー癌研究所

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エピジェネティック経路と新薬によって難治性小児癌の転帰を改善する見込み/ダナ・ファーバー癌研究所

混合型白血病(mixed lineage leukemia; MLL)はその増殖と生存をエピジェネティック(後生的)変化に依存している――この変化を治療標的することに期待を抱かせる新たな分子の発見。
Scott Armstrong医学博士
ボストン小児病院とダナ・ファーバー癌研究所の研究チームが行った2件の研究の1つによれば、ある難治性の小児白血病は白血球ゲノムに壊滅的な被害を与えるエピジェネティック変化といわれるDNA構造の変化によるところが大きい。バイオテクノロジー企業と提携して同研究チームはさらに、このような変化を阻害する新薬が癌促進遺伝子を不活化させ癌の増殖を中断できることを示した。
7月12日付けのCancer Cell誌に掲載された2件の論文で報告されたこれらの研究は、混合型白血病(mixed lineage leukemia; MLL)遺伝子の「再シャッフリング」、すなわち再構成により発症する白血病のサブグループである混合型白血病におけるエピジェネティックな脆弱性の中核部分を初めて治療の標的としたものである。
「少し前からわれわれには、混合型白血病(MLL)が遺伝コード自体の変化ではなく、DNAの構造やこれに関連するタンパク質の変化といった広範な変化により発症することがわかっていました」とダナ・ファーバー癌研究所及びボストン小児病院の小児腫瘍専門医であるScottArmstrong医学博士は述べた。「いまやわれわれはこのようなエピジェネティック変化こそが白血球の癌促進遺伝子のスイッチをオンにし、最終的に白血病を発症させることを知りました」。
「さらに重要なことに、われわれはこの過程を元に戻せることを示すことができたのです」と続けて同博士は述べた。
癌治療のなかで小児白血病は偉大な成功事例の1つであるが、MLL遺伝子の再構成によって発症する混合型白血病は悲惨な例外として際立っている。これらの癌では(MLL遺伝子の存在する)第11番染色体の一部が切断され他の染色体の一部と融合し、新しい融合タンパク質を作り出す。この融合タンパク質はMLL遺伝の正常な機能を損ない、白血病を発症させる一群の遺伝子を活性化させる。
MLL遺伝子の再構成は、急性リンパ芽球性白血病や急性骨髄性白血病と診断される小児や成人の約10%に認められる。このような患者の大部分は白血病の標準治療への奏効が良好ではない。
「ほかの小児白血病の治療成功率は80%もしくは90%に達しています」とArmstrong博士は述べた。「ですが、MLL遺伝子の再構成による白血病の治療成功率は、いまだおよそ50%にすぎません。このような患者への治療を向上させなければなりません。この成果はわれわれが正しい方向へ進んでいるのだという自信を与えてくれます」。
これまでにArmstrong博士は、MLL遺伝子の再構成を有する白血病細胞のヒストンのメチル化のパターンが、Dot1lと呼ばれる酵素による特異的なエピジェネティックな修飾という独特なものであることを明らかにしている。この酵素はMLL融合タンパクを介して癌促進遺伝子に出会い、ヒストンH3と呼ばれるヒストン(遺伝子活性化を助ける足場タンパク質)上のある特定のアミノ酸にメチル基を1つ付加する。
Cancer Cell誌に寄せられた2件の論文のうちの最初の論文で、ボストン小児病院とダナ・ファーバー癌研究所のKathrin Bernt医師とAndrew Kung医学博士とともにArmstrong博士は、MLL-AF9と呼ばれるMLL融合タンパクの標的遺伝子がヒストンH3タンパクの不適切なメチル化に関連していることを確認した。研究チームは本疾患のマウスモデルから採取した細胞に対して、遺伝的操作によりDot1l酵素を不活化して、MLLに特異的なヒストンのメチル化と遺伝子発現パターンをなくすことができた。また、研究チームはマウスにDot1l酵素を欠く白血病細胞を注入したところ、活性を有するDot1l酵素を持つ白血病細胞を注入したマウスとは対照的に、白血病が発症しなかったことを明らかにした。
「われわれのこれまでの研究から、MLL再構成細胞における異常なメチル化パターンの陰に潜む主犯格がDot1lであることは示されていました」とArmstrong博士は述べた。「いまやわれわれは、このような白血病がその生存と増殖を、この酵素とこの酵素が生み出すメチル化に大きく依存していることがわかりました」。
「ヒストンに付けられたメチル化を直接扱うのは極めて困難ですが、Dot1l酵素を治療的標的とするのは遙かに容易です」と同博士は述べた。
Armstrong博士、Bernt医師、Kung博士とバイオテクノロジー企業Epizyme社の研究員が共同執筆者として名を連ねるCancer Cell誌に寄せられた2番目の論文では、Dot1l酵素に関して得られた所見からさらに踏み込んで、Dot1l酵素を阻害するEPZ004777と呼ばれる小分子が、実際にMLL細胞の異常なメチル化パターンを除去することを示した。細胞に基づいた実験モデルにおいて、EPZ004777の効果は、遺伝子操作後の「ノックアウト」マウスにおいてDot1l酵素を不活化した後に得られる効果とまったく同じであり、MLL再構成白血病細胞を択的に約2週間のうちに死滅させた。さらに、MLL再構成白血病を呈するマウスをEPZ004777により治療すると生存期間が延長した。
「現在、腫瘍学の領域はエピジェネティックな阻害効果に沸き返っています」とArmstrong博士は述べた。「エピジェネティクスに影響を与えるDot1lのような酵素の活性が過剰となっている癌は多くあります。われわれの成果は、このような酵素の1つを阻止することができ、これまで非常に治療困難であった疾患に対し極めて特異性の高い抗腫瘍活性を得ることができることを示しています」。
この2件研究は米国癌協会、白血病リンパ腫協会、Gabrielle’s Angel財団、米国国立癌研究所、米国国立心肺血液研究所、William Lawrence and Blanche Hughes財団の助成金を受けて行われた。

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窪田美穂  訳
吉原 哲 (血液内科/造血幹細胞移植) 監修
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原文

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