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2011/02/22号◆癌研究ハイライト

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2011/02/22号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年2月22日号(Volume 8 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜
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癌研究ハイライト
・Dutasteride(デュタステリド)は早期前立腺癌の増殖を緩慢にするかもしれない
・ビスフォスフォネート投与は大腸癌リスクを低下させる可能性
・脳腫瘍において頻度の高い遺伝子欠損が見つかった
・前立腺癌にはより多くのDNA再配列が見られる
・患者を臨床試験に紹介する取り組み方は医師によって異なる

Dutasteride(デュタステリド)は早期前立腺癌の増殖を緩慢にするかもしれない

監視療法(Active Surveillance:※日本では「PSA監視療法」)を受けている早期前立腺癌男性に対して、dutasterideデュタステリド (Avodart〔アヴォダート〕)は前立腺癌を制御し、さらに強力な治療が必要となるのを防ぐのに役立つとみられる。ランダム化プラセボ対照比較試験の結果は、フロリダ州オーランドにおいて2月17〜19日に開催された2011年Genitourinary Cancers Symposium(泌尿生殖器癌シンポジウム)において発表された。

FDA(米国食品医薬品局)はすでに、デュタステリドを肥大した前立腺すなわち前立腺肥大症の治療に認可している。(※サイト注:日本においてもAvolve[アボルブ]として前立腺肥大症に対して承認済み) かつては「待機療法」と呼ばれていた監視療法は、定期検査と診察による慎重な観察が望ましいと診断された前立腺癌患者に対し、即時治療の実施を先送りする方法のことである。

REDEEM(Reduction by Dutasteride of Clinical Progression Events in Expectant Management—デュタステリドを用いた監視療法による臨床的疾患進行の減少)試験では監視療法を実施している男性302人が、3年間、5アルファ還元酵素阻害薬として知られる治療薬デュタステリド群かプラセボ群に無作為に割り付けられた。18カ月後と36カ月後、そして疾患が進行しているという根拠に基づき、適宜、生検組織が採取された。

デュタステリド男性群で、何らかの前立腺癌の進行を経験したのは38%だったが、プラセボ男性群では49%であった。この相違はデュタステリド男性群において癌の進行に対する相対リスクが38.9%低下したと解釈された。さらに、デュタステリドの投与によって被験者の最終生検で癌が認められない割合が上昇した。デュタステリド男性群36%とプラセボ男性群23%で、最終生検時に癌が検出されなかった。

監視療法が選択される「超低リスク」の前立腺癌患者に5アルファ還元酵素阻害薬を投与することは「きわめて合理的」であると当臨床試験責任医師でトロントのユニバーシティ・ヘルス・ネットワークのDr. Neil Fleshner氏は記者会見で語った。 しかし同氏は、これはデュタステリドの適応外使用と考えられると注意を促した。

12月にFDAの抗腫瘍薬諮問委員会は前立腺癌予防のための使用としてデュタステリドの承認を求めたグラクソ スミスクラインの申請を却下しているため、当社がデュタステリドの追加申請をする可能性は低いとFleshner氏は述べた。

「REDEEMの結果はデュタステリドに腫瘍量の少ない低リスク前立腺癌に対する抗腫瘍効果があることを示唆している」と当研究には参加していないNCI癌予防部門のDr. Howard Parnes 氏は述べた。「私の考えでは、このクラスの薬物[5アルファ還元酵素阻害薬] はPSA監視療法を実施している男性を対象にさらに研究する価値があります」。

泌尿生殖器癌シンポジウムは米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国腫瘍放射線学会(American Society for Radiation Oncology)、米国泌尿器腫瘍学会(Society of Urologic Oncology)により共同開催された。

ビスフォスフォネート投与は大腸癌リスクを低下させる可能性

Journal of Clinical Oncology誌2月14日号電子版に発表された研究によれば、1年以上ビスフォスフォネート(主にアレンドロネート)を投与した閉経後の女性は大腸癌のリスクが59%低かった。この研究結果はイスラエル北部で実施された大腸癌の一般住民ベースの症例対照研究に基づいている。

ビスフォスフォネート剤は通常骨粗鬆症の治療または予防のために処方され、乳癌患者の骨転移の治療にも用いられる。基礎研究データでは、これらの薬が癌細胞の増殖と転移に関わる段階を阻害できることが示されているため、ヒトにおける抗癌活性をもつ可能性がある。実際、ビスフォスフォネートを投与された女性には乳癌が少ないことが示されている

しかし、これらの研究では、乳癌のリスク低下は骨密度が低くビスフォスフォネート投与の可能性が高い女性によくみられる低いエストロゲン値によるものかどうかを除外していなかった(大腸癌がエストロゲンによって増殖するかどうかは不明)。 Molecular Epidemiology of Colorectal Cancer study(大腸癌の分子疫学研究)によるデータを解析して、イスラエルハイファのテクニオン-イスラエル工科大学Dr. Gad Rennert氏らは大腸癌と診断された女性933人と大腸癌ではない女性933人を比較した。両群の女性は年齢、民族、居住地で一致させた。研究者らは 野菜摂取量、運動量、大腸癌の家族歴、体格指数、低用量アスピリンの使用、スタチン薬の使用、ビタミンDの使用、閉経後のホルモンの使用など既知の大腸癌の危険因子についても調整を行った。

「このエビデンスは大腸癌予防にビスフォスフォネート剤を投与する根拠となるものではない。まれに生じる顎骨壊死や食道炎、食道びらん、長期使用後に生じるかもしれない骨折リスクの可能性など毒性副作用によりこれらの薬の適応は制限されている」とNCI癌予防部門のDr. Asad Umar氏は警告した。ビスフォスフォネート剤投与と大腸癌リスクの関連を確認する比較対照臨床試験が必要であると同氏は結論した。

脳腫瘍において頻度の高い遺伝子欠損が見つかった

研究者らは、脳腫瘍の中で最も頻度の高い神経膠芽腫の患者の約4人に1人の割合で、ある遺伝子が欠損していることを特定した。またNFKBIAと呼ばれる遺伝子コピーが欠損した腫瘍患者の転帰は望ましくない傾向にあることもわかった。この試験の結果はNew England Journal of Medicine誌のウェブサイトに12月、本誌には2月17日に掲載された。

NFKBIAにおける異常はホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫といった他の癌にも関連しているが、今回の研究は、神経膠芽腫における遺伝子欠損を示唆する初めてのものである。NFKBIAは癌抑制遺伝子とみられており、通常は癌に関連する2つのシグナル伝達経路(NF-kappa B経路および上皮増殖因子受容体(EGFR)経路)からの増殖促進メッセージを遮断するのを助けるタンパク質を産生する。

神経膠芽腫の約3分の1がこのEGFR遺伝子に変異を有しており、細胞を増殖させて癌を生じる可能性がある。神経膠芽腫におけるさらなる遺伝子変化を特定するため研究者らは、ほぼ800人の神経膠芽腫患者の腫瘍から得たEGFRおよびNFKBIA遺伝子を解析した。 結果の分析と追加実験に基づき、NFKBIAの欠損は、神経膠芽腫細胞で活性化する可能性があるNF-kappa BやEGFRの経路とは異なる別の経路であると研究者らは結論づけた。

この結果は、神経膠芽腫患者の大多数がEGFRあるいはNFKBIAのどちらか一方に変異を有しており、両方の遺伝子に変異を起こしている腫瘍はほとんどないということも示している。 「われわれは癌において役割を果たしていると考えられる遺伝子を特定しており、NF-kappa B経路を標的とする研究に多くの力を注いでいる。つまりこの変異が標的となる見込みは大きい」と本試験の筆頭著者でノースウエスタン大学ファインバーグ医学部のDr. Markus Bredel氏は述べた。

現在、研究者らは、患者の遺伝子欠損を検出し、将来的に治療法を選択するマーカーとなる可能性のある臨床検査を開発中である。

前立腺癌にはより多くのDNA再配列が見られる

複数の前立腺癌のゲノム配列を比較する最初の研究で、疾患発生の一因となる可能性があるDNAの繰り返し配列が判明した。患者7人の腫瘍サンプルを用いて、研究者らはこれまでに同定されていた前立腺癌に伴う遺伝子変化の存在を確認し、前立腺癌の新たな治療につながる可能性がある他の変化を発見した。 ダナファーバー癌研究所のDr. Levi Garraway氏とワイルコーネル医科大学のDr.Mark Rubin氏らはNature誌2月10日号でこの結果を発表した。この研究はNCI早期発見研究ネットワークにより一部資金援助を受けた。

過去の研究によると、多くの前立腺癌では融合遺伝子、つまりゲノムの異なる部分に含まれるDNA配列が不適切に結びついた時に起こる変化が存在することが示されている。今回の研究では、患者7人のうち3人が融合遺伝子TMPRSS2-ERGを有しており、この遺伝子は全前立腺癌の約半数に生じ、2008年の研究によると、前立腺癌の一因となっているかもしれない。

さらに研究者らは、そのすべてが前立腺癌に関連するものではないが、各腫瘍について約90の遺伝子再配列を検出した。(乳癌のゲノム研究でも同程度の再配列が報告されたが、この再配列が生じる機序はこの2つの癌では異なるかもしれないと研究者らは述べた。)

染色体再配列の解析により、「これまで固形腫瘍で観察されたことのなかったバランスのとれた切断と再結合の特有のパターンが明らかになった」と当研究の著者らは記している。再配列の一部は複数の遺伝子を並行して破壊すると考えられ、これらの変化が癌と関連する遺伝子の調節に影響を与える可能性があると著者らは示唆した。

「この研究は、癌領域における全遺伝子配列の体系的解析の重要性を強調している。これらの再配列の一部は、ゲノム全体ではなくゲノムの一部分に焦点を合わせた標的配列決定法では検出されなかったと思われる」とブロード研究所でこの研究を行った筆頭著者のDr. Michael Berger氏は語った。

患者を臨床試験に紹介する取り組み方は医師によって異なる

肺癌または大腸癌の治療に携わる1500人以上の医師に対する調査ベースの研究によると、患者を臨床試験に紹介または登録する傾向がもっとも高いのは腫瘍内科医で、もっともないのは外科医であった。Journal of the National Cancer Institute誌2月11日号電子版に掲載されたこの研究では、患者を臨床試験に紹介する専門医の特徴、患者が参加する試験のタイプ、および臨床試験に関与することの多い医師に関連する要因を評価した。

調査に参加した腫瘍内科医の88%が、前年に1人以上の患者を試験に紹介または登録していた。これに対して、腫瘍放射線医は66%、外科医は35%であった。調査回答者のほぼ半数がNCIのCommunity Clinical Oncology Program(CCOP:地域臨床癌研究計画)または複数のNCI指定がんセンターに所属していたが、これらの医師の3人に1人は前年に登録も紹介もしていなかった。

「臨床試験の患者募集において、医師の役割はきわめて重要である」と、Cancer Care Outcomes Research and Surveillance Consortium(CanCORS:癌医療アウトカムリサーチ・サーベイランス・コンソーシアム)の一環となるこの研究でチームを主導したNCIの疫学者Dr. Carrie Klabunde氏は書いている。このような傾向は、臨床試験の参加募集を改善するよい機会であることを示している。

外科医は患者の紹介や登録の割合がもっとも低かったが、調査対象グループの中の半数以上は外科医であった。腫瘍外科医や専門性の高い外科医(例えば胸部外科など)は、一般外科医よりも患者を紹介または登録する場合が多かった。女性の外科医および60歳以上の外科医による患者の紹介または登録も多くみられた。 腫瘍内科医または腫瘍放射線医が金銭的なインセンティブを受け取った場合、紹介または登録する患者が20%増加し、医学生やレジデントに教える立場の医師、もしくはCCOPまたはNCI指定のがんセンターに所属する医師も、患者を紹介または登録する件数が多かった。これらのグループの中で、毎月19人以上の患者を診察する医師、または毎週、腫瘍カンファレンスに出席する医師においても、患者の紹介または登録件数が多かった。

「21世紀、臨床研究がもつ可能性を最大限に実現するには、米国の癌医療における複雑な構成要素を改善する努力…が必要となるであろう。現場の医師の取り組み方をもっと理解し、臨床試験への医師の参加熱意を高めるか否かに影響を与える現行の診療インフラの特徴を明らかにするため、さらに研究が必要であろう」と筆者らは述べている。

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福田 素子、岡田 章代、矢次 真実 訳
榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)、大渕 俊朗(呼吸器・乳腺分泌・小児外科/福岡大学医学部)監修
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