米国の進行性乳癌患者の約半数が救命治療を受けていない | 海外がん医療情報リファレンス

米国の進行性乳癌患者の約半数が救命治療を受けていない

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

米国の進行性乳癌患者の約半数が救命治療を受けていない

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究から、乳房切除後放射線療法(PMRT)はその有益性を示す科学的根拠に基づくガイドラインが存在するにもかかわらず、その利用が進んでいないことがわかった。
MDアンダーソンがんセンター
2011年6月27日

ヒューストン-テキサス大学アンダーソンがんセンターの新たな研究結果によると,乳房切除後放射線療法(PMRT)が救命治療法となり得ることを示す科学的根拠に基づくガイドラインが発表されているにもかかわらず、米国の進行性乳癌患者女性の45%がPMRTを受けていないことが明らかになった。

Cancer誌7月号に発表されたこの研究では、進行性乳癌患者女性におけるPMRTの利用率が1999年以来横ばいであることが示された。この研究によれば、1999年から2005年にかけて高リスク乳癌と診断された約5,000人の女性のうち、PMRTを受けた女性は55%にすぎなかった。現行のガイドラインでは,中リスク患者に対してPMRTの利用を強く勧めていないにもかかわらず、逆説的にこの患者層での利用が増加している。

「このような知見は標準治療ガイドラインの有効性に関する議論でも取り上げなければなりません」とMDアンダーソンがんセンターの放射線腫瘍学助教であり、この研究の筆頭著者であるBenjamin Smith医学博士は述べる。「PMRTの有益性を支持する科学的根拠と日常診療での適正利用の間に隔たりがあることは明らかです」。

1999年から2002年にかけて、米国国立癌研究所(NCI)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、米国総合がんセンターネットワークなどの組織は、PMRTが高リスク乳癌患者における局所領域での再発を低下させ生存率を向上させることを示す画期的な3件のランダム化比較試験を受けて、PMRTの利用に関する科学的根拠に基づいた一連のガイドラインを発表した。

Smith博士によれば、臨床的根拠を実践に移すには優れた戦略が必要であるという。研究者らは高リスク患者におけるPMRTの利用率を高めるため、いくつかの戦略を考えている。それを実践するためには,資料を用いた活発な普及モデルの採用と医師の説明能力が求められる。

例えば:

・適格性認定にガイドラインの遵守の要求米国外科医師会癌委員会や全米医療品質フォーラムのような組織では、その適格性認定プロセスにおいて,科学的根拠に基づいたガイドラインが遵守されているかを調べる。PMRTガイドラインを既存の適格リストに加えることで、高リスク患者におけるPMRTの利用率を向上できるであろう。
・報奨金の設定 広域ネットワークの支払者には、報奨金を設けることで、科学的根拠に基づく日常診療へと変えてゆける見込みがある。
・電子的医療記録(EMR)の利用 EMRはメディケアやメディケイドといったサービスを提供している施設などの政府組織が利用可能であり、品質と遵守を調べることができる。
・各癌学会の説明能力を改善させる後押し 米国放射線腫瘍学会(ASTRO)や米国臨床腫瘍学会(ASCO)などの組織内でPMRTガイドラインの利用を普及させようとする試みを奨励する。

「進行性乳癌患者はPMRTにより多大な恩恵を受けますが、何らかの理由によってその恩恵を得ることができません」とSmith博士は述べる。「治療障壁をはっきりさせ,これを是正していく必要がありますが、その一方で女性患者に最適な治療が確実にもたらされるようにするためには医師の説明能力も必要です。PMRTの有無が生死の分かれ目になるかもしれない患者もいるのですから」。

Smith博士らは1992年から2005年にかけて浸潤性乳癌のため乳房切除を受けた66歳以上の女性を選択するため、SEER(Surveillance, Epidemiology and End Results)-メディケアプログラムのデータベースを用いた。患者特性には診断年及び診断年齢、人種、配偶者の有無、SEER登録、居住地(都市部/農村部)、平均所得、学歴、確定診断12カ月から1カ月前における合併症などがあった。それから患者は現行のガイドラインに沿った腫瘍関連変数に基づき低リスク群、中リスク群、高リスク群に層別化された。

さらに研究を進めて、高齢の進行性乳癌患者のうち,ほぼ半数においてPMRTが治療選択肢として除外されてきた理由を解明する必要がある。考慮すべき医療障壁には、医療へのアクセス、交通手段の制限、放射線腫瘍医へのアクセスなどがある。

Smith博士とともにこの研究に参画した研究者を以下の各位である: Shervin M. Shirvani, M.D., Thomas A. Buchholz, M.D., and Karen E. Hoffman, M.D., all of the Department of Radiation Oncology; Sharon H. Giordano, M.D., MPH, Department of Breast Medical Oncology; and I-Wen Pan, PhD, and Ya-Chen Tina Shih, PhD, both Department of Biostatistics and Applied Mathematics。

********************
窪田 美穂 訳
中村 光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科)監修
********************
原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward