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NIHが資金援助した試験によると、胸部X線検査と比較して低線量CTの方が肺癌による死亡率が20%低下したことが示された

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NIHが資金援助した試験によると、胸部X線検査と比較して低線量CTの方が肺癌による死亡率が20%低下したことが示された

NCIプレスリリース2011年6月29日

現在または元ヘビースモーカーが低線量ヘリカルCTで検査を受けた場合、胸部X線検査と比較して肺癌による死亡率が20%減少することが研究者により発見された。全米肺検診臨床試験(NLST)から得られた主要な研究結果が本日New England Journal of Medicine電子版で公表された。

この記事では元来2010年11月に報告されたデータのより広範にわたる解析を示す一方で、一般の人や研究団体が自由に閲覧できる追加データも示されていた。NLSTは、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立癌研究所(NCI)の支援を受け10年にわたり行われた試験で、低線量ヘリカルCTが、肺癌による死亡率を減少させることができる初めての有効なスクリーニング検査であることを証明するものである。

「本日の発表によって、研究者や政策立案者そして一般の人々が、低線量ヘリカルCTスキャンを現在および元喫煙者が利用することを促すNLSTからの主要所見を自由に閲覧できるようになりました」とNCI所長のHarold Varmus 医師は述べた。「NCIはこの広範な試験に必要な科学的および財政的資源を結集させました。なぜなら、限定された集団においてどういったスクリーニング方法が効果的であるか、またどのくらい効果的であるかということを、このような試験でのみ、われわれが発言できるからです。有効なスクリーニング法は重要で意義深いが、部分的で不完全である。肺癌による死亡の予防を補完するが、タバコの使用を制御することや肺癌を予防・治療する他の方法を探すといった継続中の取り組みにとって代わるものではありません」と同氏。

NLSTは、55歳から74歳までの現在および元ヘビースモーカー53,454名が参加したランダム化国家的臨床試験であった。参加者は喫煙歴において生涯喫煙量が最低でも30箱でなければならず、肺癌の兆候、症状または既往歴がない現在または元喫煙者のいずれかであった。生涯喫煙量は、1日当たりの平均喫煙箱数と喫煙年数を掛け合わせたものである。

NLSTの試験参加者は、年1回ずつ3回の低線量ヘリカルCT(らせんCTとも呼ばれる)あるいは標準的な胸部X線を受けるグループにランダム化割付された。ヘリカルCTは胸部全体の多数の画像を得るためにX線を使用する一方、標準的な胸部X線は胸部全体の解剖学的構造が重なるため一枚の画像が得られる。

本日発表された論文では、肺癌関連の可能性がある異常(スクリーニング陽性)を認めた画像数、およびこれらスクリーニング陽性のうち、どのくらい疑陽性となったのかについての重要な詳細が述べられている。すなわち、陽性所見がフォローアップの時点で肺癌であると証明されなかったという意味である。3回のスクリーニング検査を通じた平均は、低線量ヘリカルCTで 24.2%、胸部X線の6.9%は陽性であった。両群においてスクリーニング陽性の大多数に対し追加検査が行われた。

全ての3回の検査にわたって、スクリーニング陽性結果が判明した際、低線量ヘリカルCTの96.4%、胸部X線の94.5%が疑陽性であった。疑陽性結果の大多数は恐らく正常リンパ節あるいは炎症組織の感知によるものであった。肺癌によるものではない疑陽性結果は、通常、フォローアップのCTスキャンで時間が経過しても所見に変化がないことで確認された。

発表された結果によると、スクリーニングによって発見された肺癌の種類や診断された時点での病期にも見識が及ぼされた。肺内側の細胞から発生する腺癌、および気管内部を覆う薄い平らな魚の鱗状の細胞から発生する扁平上皮癌は、両試験群において早期に認められた。これら2種類の癌は、胸部X線と比較して低線量ヘリカルCTの方でより高い頻度で最も早期の時点で認められた。非常に悪性度の高い腫瘍で肺の組織内で増殖する小細胞癌は、低線量ヘリカルCTあるいは胸部X線によって早期に発見されることは少なかった。異なったモダリティにより、どのタイプの肺癌が検出できるか、どのステージにおいて最も検出できるかを知ることにより、研究者が将来の患者のためにこれらのツールの使用法を改善するのに役立つはずである。

NLSTの完全なデータ一式に基づく追加試験が継続中で、低線量ヘリカルCTの費用対効果に関する報告も、ライトスモーカーや若年喫煙者といった他の喫煙者グループが、低線量ヘリカルCTのベネフィットを得られるかどうかを示すのに有用なモデルを構築するためのデータ処理能力といったものもこの試験に含まれるであろう。他のモデリング試験は、スクリーニングの最適頻度と継続期間の検討が予定されている。

NLSTにおいて、有害事象(実際のスクリーニング検査が原因となる害)はほとんどなく比較的軽症であった。スクリーニング陽性により診断的検査を受けた患者の中で合併症が起こった割合は、どちらのスクリーニング方法においても2%以下であった。合併症が起こった患者の中で低線量ヘリカルCTを受けた患者16名(内10名は肺癌であった)と胸部X線を受けた患者10名(全員肺癌患者)は、フォローアップの侵襲的診断検査を行った後60日以内に死亡した。

侵襲を伴う診断検査は、鼻や口から器具を気管に挿入する気管支鏡検査、および検査のための組織片を採取するために胸部から肺に針を挿入する経皮的肺生検であった。診断目的の検査が死亡の原因になったかどうかはわからないが、NLSTで侵襲的検査を行った後60日以内に死亡する頻度は低いということから、スクリーニング陽性の評価の後に死亡することはめったにないということが示唆される。

NLSTにおいて低線量ヘリカルCTに伴う放射線曝露は、通常の診断を目的とした胸部CTよりはるかに少ない。著者らは、スクリーニング中の放射線曝露による害を直接計測することはできなかった点を留意した。なぜならこういった曝露の影響は長期的な転帰であるため、害の可能性については今後の試験でモデル化される必要がある。

特筆すべきは、この試験に組み入れられた集団は人種的にみて肺癌リスクの高い米国の喫煙者集団の代表であるが、非常にモチベーションが高く、大きな医療機関でスクリーニングを受けた、主に都市部に住んでいる人々である点である。よって、これらの結果だけでは他の集団に対し低線量ヘリカルCTを推奨する効果について正確に予測することはできない。

「NLSTから得たこれらの主要な結果によって、肺癌による死亡をどうやって潜在的に低下させるかについて貴重な見識を得ることができました。しかし、肺癌の発生率を低下させるための最も重要な手段は、喫煙者が喫煙を辞めること、そして非喫煙者は健康的な態度を維持することであります」とNLST共同研究者であるNCIのChristine Berg医師は述べた。

NLSTは、米国放射線学会画像ネットワーク(画像に関する多施設共同臨床試験の遂行に重点をおいている医用画像研究ネットワーク)と肺癌検診研究グループ(当初、NLSTの実現可能性を調べるためにNCIによって設立された)によって実施された。

 

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西川  百代 訳

須藤 智久(薬学、臨床試験/国立がん研究センター)監修
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原文

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