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ただ水を加えて、それから…脳腫瘍を治療/ジョンズホプキンス大学

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ただ水を加えて、それから…脳腫瘍を治療/ジョンズホプキンス大学

2011年7月5日

「凍結乾燥」遺伝子治療システムにより合併症の可能性をもつウイルスを回避

 

ジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、凍結乾燥され、使用前に最長3カ月間保存できるナノ粒子を用いて、遺伝子治療をヒト脳腫瘍細胞に導入する技術を開発した。

nanoparticle(画像)
脳腫瘍細胞が緑色蛍光タンパク質(GFP)を産生。このタンパク質の産生をコードしたDNAは、ジョンズホプキンスの生物医用工学者らが作り出した新しい凍結乾燥ナノ粒子によって腫瘍細胞に導入された。Stephany Tzeng 氏

長期保存可能なナノ粒子により、安全性がかねてより懸念されていた、ウイルスをベクターとして用いた遺伝子治療は必要なくなるかも知れない。本報告はBiomaterials誌8月号に掲載される。

「大抵の非ウイルスによる遺伝子治療法は殆ど効果がありません」とジョンズホプキンス大学生物医用工学科助教のJordan Green博士は述べる。「ナノ粒子を用いた遺伝子治療は、癌治療として従来の化学療法と比べより安全で有効な可能性があります」。

このナノ粒子を開発するため、Green氏のチームは市販されている小分子から始め、小分子化合物を組織的に配合して化学反応を起こした結果、異なる高分子(ポリマー)を生成した。次に、発光タンパク質をコードするDNAをそれぞれ異なる高分子と組み合わせて、DNAが高分子に結合しナノ粒子を形成することを可能にした。それぞれ異なるナノ粒子標本をヒト脳腫瘍細胞とヒト脳腫瘍幹細胞に導入した。48時間後に、チームは解析を行い、ナノ粒子を取り込むことで発光した細胞数および導入DNAがコードした発光タンパク質を産生した細胞数を数えた。

チームは、生存した細胞数と発光した生存細胞の割合を計算することによって成功を評価した。

研究者らは試した多くの組み合わせの中で、いわゆるポリ(β[ベータ]アミノエステル)ナノ粒子というある特定の構造が膠芽腫ならびに脳腫瘍幹細胞への導入に特に優れていることを見出した。その後、こうしたナノ粒子を凍結乾燥し、異なる温度(冷凍、冷蔵、室温)で異なる期間(1カ月、2カ月、最長3カ月)保存した後、細胞への導入能力を再検査した。Green氏によると、6カ月間保存すると効果はほぼ半減したが、室温で最長3カ月保存しても殆ど効果に変化がないことが分った。

チームはさらに、特定のナノ粒子は正常な脳細胞より脳腫瘍細胞に対する親和性が特に高いことを見い出した。

「この技術に基づいて作られた粒子は、脳外科手術と併用して、というより脳外科手術の代わりに用いられるだろうと思います」とジョンズホプキンス大学脳神経外科・腫瘍学科准教授のAlfredo Quinones-Hinojosa医学博士は述べる。「いつの日か、われわれが脳腫瘍の病因や進展を理解するにつれて、手術を行う以前にこうしたナノ粒子を使えるようになることを、私は心に描いています。そうなればどんなに素晴しいでしょう?脳外科手術を完全に避けることを想像してみてください」。

本研究は、ジョンズホプキンス大学ナノバイオテクノロジー研究所、メリーランド州幹細胞研究基金、米国国立衛生研究所(NIH)、ハワード・ヒューズ医療研究所およびロバート・ウッド・ジョンソン財団の資金提供を受けた。

本稿の著者は以下の通りである。Stephany Tzeng氏、 Hugo Guerrero-Cazares氏、 Elliott Martinez氏、 Joel Sunshine氏、 Alfredo Quinones-Hinojosa氏 そしてJordan Green氏、全員ジョンズホプキンスのメンバー。

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マクドナルド 晋子 訳
田中 謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/テキサス大学MDアンダーソンがんセンター免疫学部門) 監修
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原文

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