新たなクラスの血管新生阻害薬を同定/マサチューセッツ総合病院 | 海外がん医療情報リファレンス

新たなクラスの血管新生阻害薬を同定/マサチューセッツ総合病院

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新たなクラスの血管新生阻害薬を同定/マサチューセッツ総合病院

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者らが、まったく新しいクラスの血管新生阻害薬を初めて発見した。血管新生阻害薬とは血管の形成を阻む薬剤のことである。南米産の樹木に由来するある種の化合物は、これまでにない新しい機序に基づいて血管形成を阻害する。

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究チームが新しいクラスの血管新生阻害薬を同定した。

天然植物から得られる化合物が、細胞接着を阻害することにより、血管の増殖を阻止する。

2011年7月1日

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者らが、まったく新しいクラスの血管新生阻害薬を初めて発見した。血管新生阻害薬とは血管の形成を阻む薬剤のことである。研究者らは、米国科学アカデミー紀要(早版)に掲載された報告のなかで、南米産の樹木に由来するある種の化合物が、これまでにない新しい機序に基づき、新規の機序を介して正常発達動物モデルにおける血管形成や、創傷治癒、腫瘍増殖をどのように阻害できるかを示した。

「FDAの承認を受けている血管新生阻害薬のほとんどが、血管形成に直接指令を与える血管内皮増殖因子(VEGF)が制御する経路阻害します。」と、この研究の筆頭著者であるMGHスティール腫瘍生物学研究室のIgor Garkavtsev医学博士は述べる。「このような薬剤は、幾つかの種類の癌の標準治療薬となっていますが、患者の生存期間の延長という観点から見れば微々たる(わずかな)効果をもたらしているに過ぎません。ですから、腫瘍の脈管系を標的とするより効果的な薬剤が必要とされているのです」。

腫瘍は増殖を続けるために独自の血液供給を作りだし維持していく必要があるが、腫瘍の脈管系は極めて無秩序であることが多く、放射線療法や化学療法といった従来の治療法の有効性は限られている。VEGF経路を標的とする薬剤は、腫瘍の脈管系を「正常化」でき、他の治療法の有効性を高めることができるが、患者の生存期間への効果がわずかであることに加え、このような薬剤は抵抗性を生じさせたり毒性作用をもたらしたりすることもある。

従来とは異なる様々な方法で血管新生阻害薬を見つけ出そうという試みの中で、Garkavtsev医学博士らは血管壁を外側まで内張りしている内皮細胞同士の接着に関わっている経路に注目した。血管機能には適切な細胞接着が不可欠であるが、腫瘍特有の錯綜した血管の内皮細胞では細胞接着に変化が生じている事が多い。研究チームは新規の2段階の戦略を用いた。まず50,000個の化合物を選別して細胞接着に影響を与えるものを選び出し、次にこのようにして同定された化合物に対して、毒性と細胞骨格に不可欠なタンパクであるアクチンへの影響を分析した。

この過程を経て同定された2種類の化合物の1つが、アルゼンチンとブラジルに自生する樹木タベブイア・アベラネダエ(Tabebuia avellanedae)から抽出されたデヒドロ-α-ラパコン(dehydro-alpha-lapachone; DAL)であった。どちらの化合物も抗腫瘍活性を有しており構造的に類似していたが、DALには毒性がないように思われたため、さらに研究を行うためにDALが選出された。研究者らはまず、ゼブラフィッシュにDALを投与すると、胚発生と創傷治癒のどちらでも血管形成が妨げられることを示した。さらに、DALはマウスに移植された腫瘍の血管密度を低下させ、毎日投与することで毒性徴候を伴わずに腫瘍増殖が顕著に減退することがわかった。

ヒト臍帯静脈由来の内皮細胞を用いた実験では、DALを投与すると、細胞骨格であるアクチンの形態が変化することにより内皮細胞の数と形状が変化すること、血管新生が阻害され既存の血管網が再組織化されること、創傷治癒に必要な細胞の移動が阻害されることが確認された。さらに研究を進めたところ、DALは細胞接着と細胞骨格形成に重要であることが知られているタンパク質であるRac1の活性を低下させることにより、このような効果を生み出していることがわかった。

「この研究は、DALの血管に対する効果(血管新生阻害作用)とその標的であるRac1を初めて発見したもので、われわれのデータはDALがRac1の分解を促進することを強く示しています」と、スティール研究室所長で研究の統括著者であるRakesh Jain医学博士は述べた。「DALには、多くの種類の癌やそのほかの血管の異常を特徴とする疾患の治療を改善させる可能性があります」。Jain博士はハーバード大学医学部放射線腫瘍学(腫瘍生物学)部Cook教授であり、Garkavtsev博士は同大学医学部放射線腫瘍学部の准教授である。

米国科学アカデミー紀要に掲載された論文の共著者は、以下の各位である。Vikash Chauhana博士、Hon Kit Wong博士(以上スティール研究室)、Arpita Mukhopadhyay博士、Randall Peterson博士(以上MGH循環器研究センター)、Marcie A. Glicksman博士(Partners Center for Drug Discovery、ブリガム&ウィメンズ病院)。本研究は米国国防総省、米国国立衛生研究所、Partners HealthCareからの助成金を受けている。

1811年創立で今年200周年を迎えるマサチューセッツ総合病院(MGH)は、ハーバード大学医学部で最初に設立された最大規模の教育病院である。MGHでは病院を拠点とする研究プログラムを、米国の中でも最大規模で実施しており、その年間予算額はおよそ7億ドルである。主要な研究センターにおいて、エイズ、循環器疾患、癌、コンピューター生物学や統合生物学、皮膚生物学、ヒトゲノム学、医療画像診断、神経変性疾患、生殖生物学、再生医療、システム・バイオロジー、移植生物学、光医学の研究が行われている。

メディア向け連絡先:Sue McGreevey, 617 724-2765, smcgreevey@partners.org

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窪田美穂 訳
北村 裕太 (農学・医学) 監修
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原文

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