シグナル伝達経路活性化の新事実が新たな抗癌剤開発につながる可能性 /アラバマ大学バーミンガム校 | 海外がん医療情報リファレンス

シグナル伝達経路活性化の新事実が新たな抗癌剤開発につながる可能性 /アラバマ大学バーミンガム校

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シグナル伝達経路活性化の新事実が新たな抗癌剤開発につながる可能性 /アラバマ大学バーミンガム校

2011年7月7日
Jennifer Lollar

細胞の生存と産生の調節をうながす共通の細胞内シグナル伝達経路がどのように活性化されるのかについて、アラバマ大学バーミンガム校(UAB)の研究者たちが明らかにした新たな事実が自己免疫疾患と癌の新薬につながる可能性がある。

米学術誌『Blood』2011年7月号に掲載されたこの研究は、JAK-STATシグナル伝達経路がプロテインキナーゼCK2によってどのように活性化されるのかを初めて詳述するものである。癌および自己免疫疾患では、この経路とプロテインキナーゼのいずれも過剰に活性化していることがこれまでに確認されているため、この事実は重要である、と論文の統括著者であるUAB細胞生物学部教授兼学部長であり、UAB総合がんセンターの基礎科学準部門長のEtty (Tika) Benveniste 博士は話す。

Benveniste氏は、「(JAK-STAT経路とCK2の)どちらもある限られた時間反応することで宿主の役に立っているはずであるが、癌や自己免疫疾患では何かが起こっていて、どちらも活性化したままとなり異常細胞の成長を招く。CK2という酵素がJAK-STAT経路を活性化することがわかったため、今度は両者の阻害方法を探すことができる。これは癌の治療では大切なこと。どちらか一方を阻害しても、異常細胞はまだ成長可能なためである。今回の研究結果は、このシグナル経路と酵素の両者の阻害を目的とした創薬に可能性を与えるものであり、究極の目標は腫瘍細胞死を引き起こすことである」と語った。

Benveniste氏らは、JAK-STAT経路が過剰に活性化していることがわかっている骨髄増殖性疾患の患者の細胞について検討した。慢性骨髄性白血病をはじめとする骨髄増殖性疾患は、骨髄で血液細胞、つまり血小板、白血球および赤血球を異常に増殖する疾患群の総称である。骨髄増殖性疾患は重篤であり、いずれは健康へのリスクを免れないが、罹患者が診断を受けたあとも多年にわたり生存していることが多い。

Benveniste氏によれば、同研究チームは以前の研究でがん抑制因子であるPML(前骨髄球性白血病タンパク質)がJAK-STAT経路の調節因子であることを確認しており、PMLはCK2の構成単位であるため、CK2がJAK-STAT経路の過剰な活性化に関与しているかどうか知見を得たいと考えていた。

「CK2とJAK-STATシグナル伝達はいずれも細胞の生存、増殖および細胞死抑制の機構にきわめて重要な役割を果たしており、その調節不全が癌などの疾患の起因となるため、われわれはこの両者の間に確かなつながりがあるかどうかを知りたかった。しかし、これまでには細胞内でCK2とJAK-STAT経路の間に情報交換の可能性があるどうかほとんど知られていなかった」とBenveniste氏は話した。

この二者間のつながりに関する見解を実験室で検証するために、研究者らは低分子干渉RNAおよび薬剤を用いてCK2の発現を抑制、あるいはその活性を阻害し、JAK-STAT経路の活性化におけるCK2遮断の影響を観察した。その結果から、JAK-STATの活性化がCK2の存在または活性に依存していることが明らかになった。

Benveniste氏はさらに次のように話した。「われわれはこの研究によって、JAK-STATシグナル伝達経路の活性化が腫瘍細胞内のCK2の存在または活性に依存しているという明らかな証拠を提示した。この二者それぞれの阻害剤を作製している製薬会社は数多くあり、現在いくつかに関して臨床試験を実施している。われわれの観察から、このような阻害剤を作っている会社であれば今後、患者を対象に両方を阻害する薬剤を試験できる。その一部が骨髄増殖性疾患患者を対象に始まっているところであり、多形神経膠芽腫、最も致死的な脳腫瘍、乳癌に対して試験が今後実施される予定である」。

本論文の主著者はUABのYing Zhengである。共著者は次のとおり。Hongwei Qin, Stuart J. Frank, Luqin Deng, Fang-Tsyr Lin, Jingzhi Li and Bingdong Sha of UAB; David W. Litchfield, of the University of Western Ontario, London, Ontario, Canada;  and Ayalew Tefferi and Animesh Pardanani, of the Mayo Clinic.

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ギボンズ京子 訳
高山吉永(北里大学医学部分子遺伝学) 監修
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原文

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