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2011/03/08号◆癌研究ハイライト

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2011/03/08号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2011年3月8日号(Volume 8 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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癌研究ハイライト

・乳房の疑わしい画像所見の評価に外科的生検が過剰に実施されている
・化学療法に放射線療法を併用すると早期ホジキンリンパ腫の転帰が改善される
・HER2陽性乳癌に化学療法後のトラスツズマブ(ハーセプチン)投与は有効
・進行性前立腺癌において骨に起こる副作用のリスクはデノスマブで減らすことができる
・ヒトパピローマウイルスの感染が男性に高い率で見つかった

乳房の疑わしい画像所見の評価に外科的生検が過剰に実施されている

フロリダ州の健康管理データを総合的に分析した結果、疑わしい乳房病変の診断のために、妥当と認められるよりも高い頻度で外科的生検が用いられている。この研究結果が、American Journal of Surgery誌2011年2月8日号電子版で発表された。

マンモグラフィなど乳房の画像診断で発見された疑わしい病変部を詳細に調べる際には、ほとんどの症例で侵襲性の高い外科的切開生検よりも針生検を実施することが、医療ガイドラインで推奨されている。 フロリダ大学のDr. Stephen Grobmyer氏らは、フロリダ州健康管理局(Florida Agency for Health Care Administration)の外来手術と外来処置のデータを登録したデータベースを精査した。

経皮的針生検とも呼ばれる低侵襲乳房生検(MIBB)を受けた患者の割合は、フロリダ州で調査を実施した5年間(2003〜2008年)で増加傾向にあるが、2008年に外科的切開生検を受けた患者の割合は依然として約30%にのぼっている。この割合は、切開生検の適正な割合として2009年のコンセンサス会議で提唱された5〜10%よりかなり高い、と著者らは述べている。

MIBBの実施率は学術的医療機関のほうが非学術的医療機関よりも高かった。 MIBBは外科的切開生検と比較して傷が小さくて済み、感染やあざなどの合併症も少なく、費用もかからない。生検を実施した乳房病変の大半は良性と診断される。MIBBは精度が高いため、針生検を実施する多くの症例で患者は外科的切開生検を回避できると著者らは述べている。

「これらの結果は、疑わしい画像所見が検出された乳房病変の評価におけるMIBBの有効性について、医療関係者と患者にさらに知らせる努力が必要であることを示唆している」と著者らは述べている。「外科的切開生検の実施率を下げることは優先して取り組むべき事項である」。

化学療法に放射線療法を併用すると早期ホジキンリンパ腫の転帰が改善される

5件のランダム化臨床試験の合算したデータから、早期ホジキンリンパ腫の治療には、化学療法に放射線療法を追加すべきであることが示された。この2種の治療の組み合わせは現在ホジキンリンパ治療の標準となっている。

しかし、放射線療法を控えても早期の癌患者の生存率は下がらない可能性を示唆する研究者もいる。放射線療法は生存者に遅発性の副作用を起こす可能性があり、患者が治療時に比較的若年のときにその傾向がある。これら副作用として二次癌があり、胸部に放射線治療を施した若い女性には乳癌が最もよくみられる。

コクラン共同計画の研究者らが、5件の臨床試験に参加した1,245人のデータを利用しメタ分析を行った。各試験では、化学療法単独を6サイクル受けた患者と、化学療法と放射線療法を6サイクル受けた患者とを比較した。患者らはステージIまたはステージIIで、予後は良好または不良のどちらかであった。試験の追跡期間中央値は2年から11.4年であった。 放射線療法と化学療法を併用した患者は、化学療法を単独で受けた患者よりも生存期間が長かった。

著者らは、化学療法単独ではなく併用療法を受けた患者は11〜55人に1人の割合で生存すると推測した。併用療法を受けた患者は再発のリスクも低かった。また化学療法単独ではなく併用療法を受けた患者は6人に1人の割合で再発も防げたと著者らは推測した。 どちらか一方の治療を受けた患者が試験中に発症した副作用は類似していた。

しかし、「二次的悪性腫瘍のような長期間の副作用は・・・前述の試験の観察時期で報告されたよりも遅くに起こり得る」と、著者らは説明した。このような長い時間のずれがあるため、副作用による死亡の原因が2群間で違いがあるかどうかを有効データから検討することが不可能となっている。

現在、2件の臨床試験において、放射断層撮影法(PET)スキャンを用いて早期ホジキンリンパ腫患者が放射線療法を省略できるかどうかを試験中である。(これら臨床試験についての記述は、こちらで見ることができる。)

HER2陽性乳癌に化学療法後のトラスツズマブ(ハーセプチン)投与は有効

標準的化学療法後に1年間のトラスツズマブ(ハーセプチン)療法を加えると、初期のHER2陽性乳癌の女性の無病生存期間が改善する。この結果は、大規模多施設臨床試験であるハーセプチン補助療法試験(HERA試験)の第3次分析から得られた。

HERA試験は、標準的化学療法後にトラスツズマブを投与する群と、標準的な化学療法のみの群(観察群)に無作為に割り付けられた患者の転帰を比較するものである。4年間の追跡調査の結果がLancet Oncology誌2011年2月25日号に掲載された。

イタリア、ミラノのサンラファエル研究所(San Raffaele Institute)のDr. Luca Gianni氏らは、患者を無作為に、1年間のトラスツズマブ補助療法を受ける群(トラスツズマブ群)1,703人と観察群1,698人に割り付けた。(2年間のトラスツズマブ補助療法を受ける第3群はこの分析に含まれていない)。中央値4年間の追跡期間中に、無再発または無病生存率はトラスツズマブ群で78%超、観察群で約72%であった。この24%のリスク低下は統計的な有意性が高い。

トラスツズマブは、HER2と呼ばれるタンパク質を過剰産生する腫瘍細胞を標的にして増殖を阻害するモノクローナル抗体である。全乳癌の約20%を占めるHER2陽性癌は悪性度が高く、このタイプの乳癌では病気の再発と死亡のリスクが高い。トラスツズマブは、HER2過剰発現転移性乳癌の女性の生存期間を延長する。

HERA試験は、トラスツズマブによる治療が初期の患者にも有益であるかどうかを調べる目的で開始された臨床試験のうちの1つである。 HERA試験の以前の分析結果とは異なり、4年間の追跡の結果、2群の間で全生存に統計的な有意差は見られなかった。「これらの結果はおそらく、患者の52%が観察群からトラスツズマブ群に転向したことが大きく影響している」とヘルシンキ中央病院のDr. Heikki Joensuu氏は付随論説で述べている。

HERA試験の初期段階の結果により、1年間のトラスツズマブ投与によって再発リスクが低減する明らかな利益が示されたため、無病で心臓疾患(トラスツズマブによって起こりうる副作用)のない観察群の患者には、トラスツズマブ投与に転向する選択肢が提示された。

最新の分析では、標準的化学療法後にトラスツズマブを投与すると初期のHER2陽性乳癌治療に効果があり、トラスツズマブ治療は「うっ血性心不全の発現率も低く、依然としておおむね好ましい安全性プロフィールを示している」という「追加保証が得られた」とJoensuu氏は述べている。トラスツズマブを化学療法と同時に投与するか、化学療法の後に投与するか(心臓合併症のリスクはトラスツズマブと一部の抗癌剤との併用で増大する)、トラスツズマブの使用期間など、依然として解決すべき問題は残っているとJoensuu氏は指摘している。

進行性前立腺癌において骨に起こる副作用のリスクはデノスマブで減らすことができる

1,904人を対象とした第3相ランダム化臨床試験の結果によれば、去勢抵抗性前立腺癌の男性において骨折や他の骨関連事象(SRE)のリスクを低減することに対し、生物薬剤であるデノスマブ(Xgeva)はゾレドロン酸よりもさらに有効であるとの結果が出た。

この試験結果を一つの査証として、2010年、固形癌患者におけるSREのリスクを低減する目的のため、FDAはデノスマブを承認することとなった。(デノスマブは骨折リスクの高い閉経後女性に対し骨粗鬆症の治療にも承認されており、その適応症に対しProliaの商品名で販売されている。)デノスマブの製造会社であるAmgen社の資金援助で行われた臨床試験の結果は、2月15日付けLancet誌電子版で報告された。

この臨床試験の参加者らは、今までにビスフォスフォネートによる治療を受けたことがなかった。ビスフォスフォネートはゾレドロン酸を含む薬物群で、進行性前立腺癌の男性に対しSREを予防する治療の現在の標準治療となっている。SREとは、骨折、脊椎圧迫の最初の発症として、あるいは骨痛を緩和するための放射線療法または手術をする判断材料として定義されている。

デノスマブを投与された男性は、ゾレドロン酸を投与された男性と比較して最初のSREが確認されるまでの平均期間が18%長かった(20.7カ月対17.1カ月)と、試験を率いたDr.Karim Fizazi氏らは報告した。デノスマブによる治療は無増悪や全生存期間のどちらにおいても改善に関与していなかった。

副作用の発生率やタイプは、両治療群どちらも類似していた。顎の骨破壊や骨死(骨壊死)はデノスマブ投与群で多く認められたが、リスクの増大は統計学的に有意ではなかった。 ゾレドロン酸は静脈に投与せねばならず、急性アレルギー反応や腎機能への障害など重篤な副作用の可能性があると、研究者らは述べた。「こういった制限はデノスマブにはない」と記している。 試験の結果は「転移性の去勢抵抗性前立腺男性の治療における新たな画期的な報告である」と、ジョージワシントン大学のDr.Jeanny B.Aragon-Ching氏は関連論評で記している。

しかし続けて同氏は、この結果により、癌治療におけるデノスマブの臨床での使用や影響について多くの問題提起がなされたと述べている。例えば、デノスマブはゾレドロン酸よりかなり高価であるため、Aragon-Ching氏は、最初のSRE発症までの時間が、ゾレドロン酸よりわずかに長くかかるというだけで「特に生存や予後の有益性がない場合に、ゾレドロン酸よりもデノスマブの選択が正しいとするのに臨床的な意味が十分にある」かどうかという疑問があげられる。

その他の関連記事: デノスマブは多発性骨髄腫と固形癌にも有効 癌を対象としたデノスマブの別のランダム化第3相臨床試験の結果が、2011年2月22日付けJournal of Clinical Oncology(JCO)誌電子版に発表された。FDA承認されているデノスマブの適応は骨関連事象(SRE)の軽減であり、一部この臨床試験も根拠となっている。この臨床試験は、前立腺癌の臨床試験と同様のデザインで、多発性骨髄腫とさまざまなタイプの進行固形癌(ただし、前立腺癌と乳癌を除く)の患者約1,800人が登録されている。デノスマブを投与された患者は、ゾレドロン酸を投与された患者と比較して、SREのリスクが低下したが、統計的に有意な差ではなかった。JCO誌の付随論評で、米シアトルにあるスウェーデン癌研究所のDr. Howard West氏が、デノスマブ治療の経済的な側面と、転移性癌患者へのバイオマーカー主導型治療の可能性についても言及している。

ヒトパピローマウイルスの感染が男性に高い率で見つかった

男性における性器ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の発生率に関する研究によると、研究参加者の半数が少なくともウイルスの1つの型に感染していることが判った。そのウイルスの中には性器いぼや癌を引き起こす可能性のある型も含まれていた。感染の発生率は高く、年齢(18歳〜70歳)による偏りは比較的なかった。この研究はH・リー・モーフィットがんセンター&研究所のDr.Anna Giuliano氏らにより2月28日付けLancet誌電子版に掲載された。

およそ40種類のHPVは性的に感染する。HPVの型の中には性器いぼを発症させるものもあれば、癌の原因となるものものある(いわゆる高リスクまたは発癌性タイプ)。男性ではHPVに関連する癌として、陰茎癌、口腔癌、中咽頭(扁桃腺を含む頭頸部の一部)癌、管癌などがある。 子宮頸癌の70%に関与する2つの高リスク型HPVの持続的感染を予防する2種類のワクチンが、若年女性における子宮頸癌や外陰部癌、膣癌などの予防のためFDAによって承認されている。

これらワクチンの一つであるガーダシルは、90%の性器いぼの原因となっている2つの型のHPV感染をも予防するもので、若年の女性・男性における性器いぼ予防適応が承認されている。昨年12月、ガーダシルは若年女性・男性における肛門癌予防適応が承認された。男性におけるHPV感染の自然経過に関する新しい知見から、国際的に男性におけるHPVワクチン接種の利用について、現実的な費用対効果モデルを構築するのにさらなる情報が必要であることがわかったと研究者らは述べた。

男性におけるHPVの保有率と除去率を調べるため、コホート試験にブラジル、メキシコ、米国の男性1,159人が組み込まれた。新たに感染するには性的行動が強く関連しており、感染除去の可能性も同様である。HPV型のどれかに感染する期間の中央値はおよそ7カ月で、発癌性であるHPV16型ではおよそ12カ月であった。3年の試験期間が終了するまで、男性のほとんどがHPV感染除去されていた。 女性では、HPV感染のリスクは年齢が上がるにつれ低下すると知られている。しかしこの研究から、男性では逆に感染リスクは生涯一定であることが明らかとなった。

「もし本当に男性が新しくHPV感染するリスクが生涯に渡って高いままであるとすると、老年男性へのワクチン接種は価値があるということになる」と、研究者らは述べている。 研究への組み込みに厳格な基準を設けたため、HPV発生の推定率は3国の全男性に対して一般化できないと研究者らは記している。また研究者らは、今まで行なわれたすべての研究でも男性においてHPV感染率が高いという結果が得られているが、これら結果に基づいたほかの集団における感染率について結論を出すことに警告を発している。 さらに情報を得るには「ヒトパピローマウイルス(HPV)と癌」を参照のこと。

その他の関連記事: 2006年の肺癌研究を撤回 New England Journal of Medicine誌に発表された研究論文(NCI Cancer Bulletin 2006年8月15日号で報告)の著者らが論文を撤回した。Dr. Anil Potti氏らが撤回を要請した論文は、初期の非小細胞肺癌の予後を改善するゲノムモデルに関するもので、撤回の理由は、協同研究を行っているAmerican College of Surgeons Oncology Group(ACOSOG)とCancer and Leukemia Group B(CALGB)が実施した研究データを用いて「肺メタジーンモデルの妥当性確認を裏付ける結果を再現しようとしたが成功しなかった」ためである。この研究に関するNCI Cancer Bulletin記事には撤回についての注釈が追加された。

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月橋 純子、山下 裕子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)、後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院)監修
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