エストロゲン非依存性乳がんへの新たな攻撃目標が明らかに/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

エストロゲン非依存性乳がんへの新たな攻撃目標が明らかに/ダナファーバー癌研究所

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エストロゲン非依存性乳がんへの新たな攻撃目標が明らかに/ダナファーバー癌研究所

2011年7月11日

分子レベルにおける性の混乱のように聞こえるが、男性ホルモンのアンドロゲンは、女性に発症する一部の乳房腫瘍の増殖を促進する。ダナファーバー癌研究所の新たな研究では、ホルモンからの絶え間ない増殖指令を実行するがん細胞の仕組みが初めて詳細に示されている。

この研究は7月12日付のCancer Cell誌で発表され、今後の治療におけるいくつかの興味深い標的-アンドロゲンに反応して即座に作動する細胞タンパク質-を提示している。これらのタンパク質を遮断する薬剤により、タモキシフェンなどの標準的なホルモン遮断剤で効果が得られない乳がん患者の多くで、腫瘍増殖が減速したり抑制された。

「私たちは、エストロゲンではなくアンドロゲンに反応して増殖する新しい亜型の乳房腫瘍を同定し、その増殖にかかわるシグナル伝達経路を突き止めました」と筆頭著者のMyles Brown, MD氏は述べた。「さらに、アンドロゲンの受容体自身を含め、これらの経路を遮断し得る薬剤は、腫瘍の増殖を阻害できることも明らかにしました。これによって、標準的な内分泌療法に反応しない一部の乳がんの治療に新たな道が開けます。」

乳房腫瘍の約70~75%は女性ホルモンのエストロゲンによって増殖が促進される。腫瘍細胞には、エストロゲン分子を捕らえるように特別な、わなのような構造をしたエストロゲン受容体(ER)が多く含まれている。エストロゲンがエストロゲン受容体に結び付くと、細胞の成長および増殖を促進する一連の事象が起こる。タモキシフェンなどの薬剤は、エストロゲンが受容体に入り込まないようにすることで、増殖過程を妨げている。

ER陰性腫瘍と呼ばれる残りの25~30%の乳がんは、エストロゲン受容体を有しておらず、従ってタモキシフェンおよびその類似物質には反応しない。ほとんどの乳房腫瘍には-エストロゲン受容体を有しているものであっても-アンドロゲンの受容体があることは分かっているが、これらの受容体の存在理由、並びに腫瘍増殖にどのような影響を及ぼすのかについては、解明されていなかった。

女性に発症する一部の乳がんに男性ホルモンの受容体があるということは奇妙に思えるかもしれないが、アンドロゲンは女性の第二次性徴の正常な発達にもかかわっている、と Brown氏は言う。アンドロゲンは、アンドロゲンの受容体を有しているがエストロゲンの受容体を持たない乳がん細胞の増殖を促進する、と研究者らは理論付けている。今回の研究は、その理論通りであるかどうか、またそうならばその理由、を解明しようとするものである。

乳房腫瘍細胞のゲノム構成について発表されたデータを用い、Brown氏らは、非常に多くのアンドロゲン受容体を有し、ERがなく、HER2と呼ばれるタンパク質が過剰に存在する、乳がん患者全体の5~10%を占める特殊なグループを見いだした。このタイプの細胞は、アンドロゲンにさらされると急速に増殖した。

この増殖の背後にある仕組みを理解するために、研究者はこれらの腫瘍細胞の遺伝物質に関するマススクリーニング検査を行い、DNAのどの部分がアンドロゲン受容体に結合するか-受容体が直接スイッチをオンオフするのはどの遺伝子か-を調べた。その所見とこれらの細胞内で活性化されたすべての遺伝子を検索した結果、研究者らは、アンドロゲン受容体が増殖シグナルの2つの「伝送路」-伝達経路-に影響を及ぼすことを明らかにした。その中の重要なタンパク質(WNTおよびHER2)にちなんで名付けられたその経路は、細胞の分裂および増殖に中心的役割を担う。

研究者らがER陰性乳がん細胞のアンドロゲン受容体もしくはWNTやHER2タンパク質の動きを妨げる薬剤を使用すると、細胞培養、および細胞を移植したマウスの双方において、腫瘍の増殖速度は低下した。

「これらの所見は、WNTやHER2経路でタンパク質を阻害する、もしくはアンドロゲン受容体自体を遮断する治療薬が、この種類の乳がん患者に対する有効な抗腫瘍剤となり得ることを示す強力なエビデンスです。その経路の異なるポイントでタンパク質を標的とする併用療法は、最大の効果をもたらすでしょう」とBrown氏は述べている。

本研究は、Brown氏の研究室 とShirley Liu, PhD.氏が率いるダナファーバーの計算生物学グループとの緊密な協力の下で実施された。Brown氏とLiu氏は、最近、今回の研究で用いたゲノムおよび計算手法を研究者たちがより広く利用できるようにするために、Dana-Farber Center for Functional Cancer Epigeneticsを設立した。

本研究の筆頭共著者および共著者は、以下の通りである。筆頭共著者:Min Ni, PhD, and Yiwen Chen, PhD, of Dana-Farber。共著者:Elgene Lim, MD, PhD, Shannon Bailey, PhD, and Yuuki Imai, MD, PhD, of Dana-Farber; and Hallie Wimberly and David Rimm, MD, PhD, of Yale University School of Medicine.

本研究は、米国国立癌研究所、国立衛生研究所、および国防総省からの助成金を得て実施された。

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豊 訳
廣田 裕 監修(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)
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原文

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