2011/03/08号◆特集記事「卵巣癌早期発見のためのバイオマーカー開発研究からの疑問」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/03/08号◆特集記事「卵巣癌早期発見のためのバイオマーカー開発研究からの疑問」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2011/03/08号◆特集記事「卵巣癌早期発見のためのバイオマーカー開発研究からの疑問」

同号原文NCI Cancer Bulletin2011年3月8日号(Volume 8 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

PDFはこちらからpicture_as_pdf

____________________

◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

卵巣癌早期発見のためのバイオマーカー開発研究からの疑問

長い間待たれていた卵巣癌早期発見のためのバイオマーカー評価試験の結果が発表された。ここで示されたのは、従来のCA-125タンパク質の血中濃度が最良の疾患予測因子だということである。しかし、スクリーニング検査でこの疾患による死亡率低下が見込めるならば、より正確なバイオマーカーの開発を行うべきであると、研究者らは3月号のCancer Prevention Research誌に掲載された論文を締めくくっている。

この試験で検討された28種類の血清バイオマーカー候補のなかには、CA-125より評価の高いものはなかった。しかし、スクリーニング検査に必要な検査は、診断より6カ月以上前にさかのぼって腫瘍からのシグナルを検出できるものでなくてはならないが、CA-125で検出されるシグナルは診断までの6カ月間がもっとも強かったと研究者らは述べた。

残念な結果のようにも思えるが、この知見は今後も卵巣癌の早期検出への努力姿勢を伝えるものだと著者らは述べた。この考え方に応えて、今回の試験には参加していない幾人かのバイオマーカー専門家が、この知見の持つ意義を強調した。 「これは画期的な試験です」と、付随論説記事の共著者である米国国立癌研究所(NCI)癌疫学・遺伝学部門のDr. Mark H. Greene氏は述べた。「この分野はCA-125とともに始まりましたが、これらのバイオマーカーをこの分野での改善とみなせるかを判断する長年の卵巣癌バイオマーカー研究において、われわれははじめて厳正な解析結果を得ました」。

今回の結果は卵巣癌の有効なスクリーニング手段を見つけることのできる新たなアプローチが必要なことを示していると、彼は続けて述べた。(本試験の予備的な結果は2009年に発表された。)

探究の加速化

この10年間に卵巣癌のバイオマーカー候補として同定されたものは数十種類以上あるが、大多数は妥当性が評価されず、実用化には至らなかった。この進展を後押しするために、NCIの早期発見研究ネットワーク(EDRN)部長と前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Trial)の責任者が今回の妥当性評価試験を考えた。

研究者らにはPLCO試験の参加者から採取した高品質の血液サンプルを扱う権利が付与された。このなかには、PLCO試験期間中に卵巣癌を発症した女性から採取した診断以前の検体という稀なサンプルも含まれている。

今回の試験では、症状のない女性から採取した診断前の検体に対する卵巣癌バイオマーカーの精度と、これとは別の女性集団から採取した診断時の検体に対する卵巣癌バイオマーカーの精度が比較評価された。研究責任者であるブリガム&ウィメンズ病院のDr. Daniel Cramer氏は、ここで得られた知見には別の解釈も出てくるだろうと述べたうえで、CA-125についてさらに研究を深める必要性を強調した。

CA-125に関して初めて言われたのは30年前であり、それ以来、CA-125は卵巣癌患者の治療の有効性評価に広く用いられているが、このタンパク質はスクリーニング検査には不向きである。血中濃度が上昇するのは、病期が早い段階の卵巣癌の患者の約半数に限られており、また卵巣癌以外の原因で血中濃度が上昇することもある。しかし、依然としてCA-125は卵巣癌の早期検出バイオマーカーとしてもっとも優れている。

「この結果が示しているように、CA-125がそれほど重要なのだとしたら、このタンパク質をもっとよく知る必要があると私は考えます」とCramer氏は述べた。例えば、進行性卵巣癌女性のなかにはCA-125値が正常な場合もあり、この現象を理解することからCA-125タンパク質をスクリーニング検査にもっと活用できる可能性が生まれるかもしれないと彼は述べた。

今回の試験を解釈すると、もっとも重要な点は、新しいバイオマーカーが必要であるということと、研究者らがバイオマーカーを発見し開発する最適な方法を再考すべきであるということになるだろう。これまでは、研究者らが入手できる検体が診断時に採取した血液サンプルであるため、このような検体から大多数のバイオマーカー候補が同定されてきた。 しかし、このような検体は病期が進んだ場合のものであることが多く、新たな知見が示唆しているように、早期検出目的には有用でない場合もある。

「これらのバイオマーカーの発見方法について、もっとよく知る必要があります」と本試験の共著者であるNCI癌予防部門のDr. Claire Zhu氏は述べた。同氏はバイオマーカーパネルの評価枠組みに関する付随報告の筆頭著者でもある。「また、われわれには最善の方法がわかりませんが、この試験によりこの分野での議論が活性化することを期待しています」。 PLCO試験では、研究者の要望に応じて、限られた検体をバイオマーカー研究目的に利用できるいくつかの大規模ランダム化試験の1つである。「診断前の検体は他の検体よりも疾患の生物学を反映しているものですから、ここでこそ発見がなされなければなりません」とEDRNを率いるDr. Sudhir Srivastava氏は述べた。

卵巣癌を検出できる単一のバイオマーカーがないならば、複数のバイオマーカーをまとめたバイオマーカーパネルで代用できるかもしれないという研究者はこれまで多かった。今に至るまでこのアイディアの検証は行われていないが、少なくとも今回の場合は、バイオマーカーパネルはCA-125の精度とほとんど変わりなかった。 「検証されたバイオマーカーパネルは有効性は全くありませんでした」と、トロント大学の研究者であり癌のバイオマーカーについての論文を執筆した共著者のDr. Eleftherios Diamandis氏は述べた。

「残念ながらこの研究が伝えていることは、われわれがバイオマーカー発掘の困難さを過小評価してきたということです」。しかし、このような研究を実施する最良の方法は、PLCO試験から得られた高品質の検体を用いた今回の試験のように、厳正な妥当性試験を通じてであるということを学ぶことができたと彼は付け加えた。

進歩とともに生じた新たな疑問

前進するにつれてわかってきたことは、たぶん最大の問題は卵巣癌の生物学とはなんであるか、ということである。バイオマーカーの開発からより優れた戦略が得られたとしても、はたしてその女性の命を救えるだけ早期に検出可能なバイオマーカーが本当に血中に存在するかどうかは、誰も知らないということである。

「症状のない人では、検出できるくらい強いシグナルがあるとは限りませんので、検出するのは非常に困難です」と、共著者のノースカロライナ大学チャペルヒル校のDr. David Ransohoff氏は述べた。「これらすべての研究を終えても、よいバイオマーカーが本当に存在するのかどうか、われわれには実際のところわからないのです」。

早期検出のため、時間をかけていくつかのバイオマーカーの血中濃度の上昇を調べている研究者もいる。このような長期的研究のうらにある考え方は、各人にはそれぞれのバイオマーカーに対して自然の(ベースライン)値があり、卵巣癌を発症するとこれらのバイオマーカーのなかの1つ、もしくは複数がベースライン値を超過し始めるだろうという考えである。 「バイオマーカーの長期間の情報が、1時点における1つのバイオマーカー値よりもずっと意味を持つであろうということを期待しています」と、共著者のマサチューセッツ総合病院のDr. Steven Skates氏は述べた。

「疾患をできるだけ早い段階で発見するためには、バイオマーカーが1つであれ複数であれ、一定期間での値の上昇がもっとも感度の高い指標となるかもしれないと考えています」。 現在、このアプローチ(CA-125をバイオマーカーとして用いた血液検査で卵巣癌リスクが高いことが示された場合には、その後に超音波検査を実施)が、前向き試験である英国多施設共同卵巣がんスクリーニング試験(UK Collaborative Trial of Ovarian Cancer Screening)の1群で検証中である。

「このアプローチが有効であるかを確かめる試験の結果までには、あと数年間待たなければなりません」とSkates氏は述べた。 この英国での臨床試験では、外科的手術の実施にはCA-125と経膣超音波検査がどちらも陽性であることが必要である。一方、PLCO試験では、外科的手術の実施にはCA-125もしくは経膣超音波試験のどちらかが陽性であればよい。PLCO試験の結果は数カ月後に予定されている。

それまでのあいだに、妥当性試験の実施により、過去10年間の研究成果の評価が行われ、今後どのように進んでいくべきかを考える機会が生まれる。 「このような研究から、バイオマーカーの発見過程について学ぶべき事柄があるかを知る必要があります」とRansohoff氏は述べた。「また、なぜ信頼できる結果を得るまでこれだけ時間がかかったのかということや、いかにしてバイオマーカーの発見と妥当性評価の過程を改善させるかを知ることにも役立つでしょう」。

この10年間に、いく人かの研究者が予備データに基づいて卵巣癌のバイオマーカー候補について強力な主張を行ってきたとRansohoff氏は述べた。これらのバイオマーカーは結局、成功を収めることができなかったが、これらの主張はメディアによって繰り返され、早期検出に誤った期待を抱かせることになった。「おそらく、新たなデータを立証できるのはデータ自身でしょう」とGreene氏は述べた。「しかし、この試験はこのような研究をどのように行うべきかを示す実によいモデルなのです」。

— Edward R. Winstead

参考文献:”Ovarian Cancer Study Tests Lead Time of Potential Biomarkers

【画像下キャプション】
[写真右解説]研究者らはこれまで10年以上にわたって早期卵巣がんを検出できる血液検査の開発に奮闘してきた。28種類の有力なバイオマーカー候補の妥当性を厳密に評価したところ、これまで通りCA-125が最良の疾患予測因子であることがわかった。(写真提供:Daniel Sone氏) [画像原文参照]

******
窪田 美穂 訳
勝俣 範之(乳腺科・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3卵巣がんの起源部位は卵管であることが示唆される
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  6. 6がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害

お勧め出版物

一覧

arrow_upward