2011/07/12号◆癌研究ハイライト「抗EGFR分子標的薬は特定の肺癌患者に有効」「臨床に関連する癌の家族歴は時とともに変化」「肺癌の研究によりCTスキャンのばらつきが判明」「Cdk1タンパクの阻害によりPARP阻害剤が奏効する腫瘍が増える」「遺伝子変異は癌細胞におけるテロメアの変化に関連」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/07/12号◆癌研究ハイライト「抗EGFR分子標的薬は特定の肺癌患者に有効」「臨床に関連する癌の家族歴は時とともに変化」「肺癌の研究によりCTスキャンのばらつきが判明」「Cdk1タンパクの阻害によりPARP阻害剤が奏効する腫瘍が増える」「遺伝子変異は癌細胞におけるテロメアの変化に関連」

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2011/07/12号◆癌研究ハイライト「抗EGFR分子標的薬は特定の肺癌患者に有効」「臨床に関連する癌の家族歴は時とともに変化」「肺癌の研究によりCTスキャンのばらつきが判明」「Cdk1タンパクの阻害によりPARP阻害剤が奏効する腫瘍が増える」「遺伝子変異は癌細胞におけるテロメアの変化に関連」

F同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年7月12日号(Volume 8 / Number 14)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

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癌研究ハイライト

・抗EGFR分子標的薬は特定の肺癌患者に有効
・臨床に関連する癌の家族歴は時とともに変化
・肺癌の研究によりCTスキャンのばらつきが判明
・Cdk1タンパクの阻害によりPARP阻害剤が奏効する腫瘍が増える
・遺伝子変異は癌細胞におけるテロメアの変化に関連

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抗EGFR分子標的薬は特定の肺癌患者に有効

EGFR遺伝子に特異的な変異を有する進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者では、化学療法単独よりもエルロチニブ(タルセバ)を用いる治療により無増悪生存期間が延長した。この結果は、先週2011年度世界肺癌会議(アムステルダム)で発表された第3相臨床試験によるものである。

174人が登録したEURTAC試験は、中間解析により無増悪生存期間の延長が初期目標に達したことが明らかになり、独立データ監視委員会による勧告に基づき1月に終了した。

他の臨床試験においても、EGFRに変異がある癌患者では、チロシンキナーゼ阻害薬であるエルロチニブやゲフィチニブ(イレッサ)などの抗EGFR分子標的薬による治療を受けた方が予後が良好であった。これらの試験はアジア人のみを対象としていた。またEGFRに変異を有する癌患者に限定した試験は現在までOPTIMALという試験だけであった。EURTAC試験は西洋諸国(主にヨーロッパ)でEGFRに変異を持つ進行NSCLC患者を登録した初の試験であると、試験統括医師で、Center François Baclesse(フランス)のDr. Radj Gervais氏は説明した。

病勢が進行するまでの初期治療として、患者はエルロチニブによる治療またはプラチナ製剤を含む化学療法のいずれかにランダムに割り付けられた。無増悪生存期間中央値は、エルロチニブで治療された患者では9.7カ月、化学療法単独で治療された患者では5.2カ月であった。奏効率もエルロチニブで治療された患者で非常に高く、58%に腫瘍縮小を認めたのに対し、化学療法を受けた患者ではわずか15%であった。

全生存期間はエルロチニブで治療された患者の方がわずかに長かったが、統計的に有意な延長ではなかった。初回治療として化学療法を受けた患者では、病勢が増悪すれば現行の治療法に沿ってエルロチニブに切り替えられるため、全生存期間の延長は認められないかもしれないと、Gervais氏は記者会見で説明した。

このように、エルロチニブによる治療に切り替えられるため、「生存期間の延長を示すことは難しいでしょう」と、同会見でテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの肺癌研究部の主任研究者であるDr. Roy Herbst氏も同意した。

年末までにアステラス製薬が、EGFR変異のあるNSCLC患者の初回治療としてエルロチニブの承認申請をFDAに提出すると期待されている。Roche社はEURTAC治験に資金助成を行った。

臨床に関連する癌の家族歴は時とともに変化

特に大腸癌や乳癌では、患者が30歳から50歳の時期に家族の中にも癌患者が見つかり、臨床的に重要な癌の家族歴が大きく変化することを、新しい研究が示している。この研究は、正確で最新の家族歴を把握することの重要性を強調している。

この知見は、個人の癌の病歴や家族歴を国家的に登録する研究情報機関であるCancer Genetics Network(CGN:癌遺伝学ネットワーク)の研究者らによって、JAMA誌7月12日号で報告された。CGNはNCIが出資するプロジェクトで、マサチューセッツ総合病院とハーバード大学のDr. Dianne Finkelstein氏が率いている。

「われわれが知りたかったのは、癌の家族歴の変化によって、標準ガイドラインで推奨される検診スケジュールや検査がどれくらい影響されるかということである」と、この論文の統括著者でありベイラー医科大学のDr. Sharon Plon氏は述べた。

研究者らは、CGNに登録された11,129人において、大腸癌、乳癌、前立腺癌の家族歴データを調査した。家族歴はこれら3つ癌のいずれでも重要なリスク予測因子である。CGNの研究者らは登録者の新しい家族歴やその他の情報について毎年アンケート調査を行い、10年間追跡している。

CGNの研究者は、参加者が登録時に提出した家族歴を用いて、各人の出生からCGNへの登録までの家族歴の変化率を後ろ向きに判定した。また、CGNへの登録から最近のアンケート調査までの家族歴の変化も前向きに調べた。

CGNの研究者が特に探索したのは、米国癌協会(ACS)の現行のガイドラインに基づき検診がより早期または集中的になるような家族歴の変化であった。ACSガイドラインは高リスクと考えられる個人に対して、大腸癌ではより早期に頻回の検診を、乳癌では毎年の核磁気共鳴画像法(MRI)による乳房検査の追加を推奨している。

この分析により、参加者の臨床に関連のある家族歴が、特に大腸癌や乳癌では30歳から50歳の間に大きく変化することが明らかとなった。この2つの癌の高リスク者向け検診が推奨される人の割合は、30歳から50歳の間に1.5~3倍増加した。

「この研究の結果は、医療者が患者にどれほどの頻度で最新の家族歴を聴取すべきかの指針となりえる」とFinkelstein氏は述べ、「家族が新たに癌と診断された場合、定期健康診断(毎年)で医師に伝えることが重要である」とつけ加えた。さらに患者は「近親者のうち誰が癌に罹患しているのか、癌が発生した部位や臓器はどこか、最初に癌と診断されたのは何歳かを知っているべき」と強調した。

肺癌の研究によりCTスキャンのばらつきが判明

医師や研究者は患者の腫瘍の大きさを測定したり、臨床試験において新規治療法の効果を判定する際に、コンピュータ断層撮影法(CT)などの画像装置を用いている。これらの目的に対するCTの使用について評価するため、研究者らは同一患者を数分間隔で撮影した2つのCT画像を使って腫瘍径の読影結果を比較した。2回撮影された画像でそれぞれの腫瘍径が異なる場合が多いことを放射線科医が明らかにしたが、もしこれが本当なら臨床的に重要なことである。

7月5日付Journal of Clinical Oncology(JCO)誌電子版で掲載されたこの知見の報告書では、腫瘍径の10%未満の縮小は、撮影プロセスに付随するばらつきによる変化と区別できない可能性があると述べられている。スローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)のDr. Gregory Riely氏がこの研究を率いた。

CT撮影を繰り返すと多くの非生物学的要素により腫瘍径に明らかな変化が生じることは、放射線医の間では知られていた。今回の研究はこの影響を初めて定量化したものである。

研究者らは、非小細胞肺癌患者30人を15分以内に2回、同じCT装置を用いて撮影した。次に、撮影間隔を知らない3人の放射線医が画像を読影した。繰り返された撮影の多くで、腫瘍径の2mm以上の変化が報告された。

臨床試験において、薬剤の効果の証拠として腫瘍径のわずかな変化が報告されることが多くなってきていると本研究の著者らは述べた。しかし、この程度の変化は単に撮影のばらつきの結果である可能性があると著者らは指摘する。そのため、臨床試験でこのような変化のみを効果のマーカーにすべきではないと、著者らは述べた。

CTの性能特性に関する前例のない今回の研究は、「今後の薬剤開発に重要な影響を与えるであろう」とシカゴ大学のDr. Michael Maitland氏らは付随論説で指摘した。

Cdk1タンパクの阻害によりPARP阻害剤が奏効する腫瘍が増える

BRCA遺伝子変異のない癌細胞において、DNA修復を傷害する潜在的な方法を研究者らが発見した。この方法により、PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害剤治療に対する癌細胞の感受性が高められる。ダナファーバー癌研究所およびハーバード大学医学部のDr. Geoffrey Shapiro氏が主導したこの研究の結果は、6月26日付Nature Medicine誌電子版に発表された。

BRCA変異のある癌細胞はPARP阻害剤の治療に反応する。なぜなら、この癌細胞はDNA修復経路に欠損があり、PARPが関与するDNA修復経路が利用できない場合、致死的になるためである。研究者らは、Cdk1と呼ばれるタンパクの活性を阻害すると、BRCA変異のない癌細胞でも同様の効果を生むという仮説を立てた。Cdk1はDNA修復において正常なBRCA1タンパクの機能を調節し、細胞周期の制御に役立っている。

仮説を検証するため、研究者らはRNA干渉またはCdk1活性阻害剤を用いて、BRCA変異のない複数の癌細胞株のCdk1の働きを阻害した。

Cdk1の機能を阻害し、DNA損傷を引き起こすガンマ線を癌細胞に照射すると、PARPが関与するDNA修復経路の阻害を代償する修復機構の形成が70~80%低下することが観察された。

RNA干渉を用いてBRCA変異のない2つの異なる癌細胞株のCdk1活性を阻害すると、正常なCdk1活性を持つ同じ癌細胞株と比較して、癌細胞のPARP阻害剤への感受性が100~200倍高まった。薬剤を用いてCdk1機能を阻害しても同様の結果が得られた。

遺伝子操作マウス内で増殖させたBRCA変異のない肺腫瘍において、Cdk1活性阻害剤とPARP阻害剤を3週間併用投与したところ、13匹のマウスのうち9匹で、持続的な腫瘍の縮小が認められた。2匹のマウスでは、さらなる腫瘍の増殖がなく、治療後15週間生存した。この薬剤の併用による正常組織や臓器の損傷は観察されなかった。

著者らは、この薬剤の併用を早期の臨床試験で検証すべきであると提案した。「臨床試験で検討予定のCdk1阻害剤とPARP阻害剤の投与が、正常組織を害することなく効果を示すことを希望している」とShapiro氏は説明した。

遺伝子変異は癌細胞におけるテロメアの変化に関連

最も多い高悪性度の脳腫瘍である多形性膠芽腫(GBM)を含む複数の癌において、ある2種類の遺伝子変異と高度のテロメア異常との間の関連性が確認された。検査した何百もの腫瘍の中で、ある2つの遺伝子のどちらかに変異のある腫瘍は、同時にテロメア異常も有していた。Sol Goldman膵臓癌研究センターとジョンズホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターの研究者らが6月30日付Science誌電子版で報告した

研究者らは現在、この遺伝子変異がテロメアおよび癌の変化に直接関与しているかを調査しており、これは臨床的な意義をもつかもしれない。この研究は、ホプキンスの研究者らによって行なわれた膵臓癌の一種、膵神経内分泌腫瘍(PNET)の近年の遺伝子解析に基づいて実施された。先行研究では、DNAパッケージングに関与している2つの遺伝子(DAXXATRX)のうちの1つで高頻度の変異が見られた。

これらの遺伝子にコードされるタンパクは、染色体構造を修飾し、テロメアで活性を示す。新しい研究では、これらの遺伝子を不活性化することにより、癌細胞がテロメアを伸長し、生存を確実にするという仮説を立てた。通常、テロメアのDNAは、細胞が生存不能になるまで細胞分裂する度に徐々に短縮する。

DAXXまたはATRXが変異した癌細胞では、このような自然に生じるテロメアDNAの短縮が起こらなくなり、無制限に分裂を続けることが可能になっているともられる」と、キンメルがんセンターの分子病理学者で、本研究の統括著者であるDr. Alan Meeker氏は述べた。「この仮説は、実験室レベルの厳密な機能解析を通して検証する必要がある」。

同氏らは400以上の腫瘍を解析したが、ATRX遺伝子に変異があった全てのサンプルで、テロメア異常が認められた。(DAXX変異はPNETサンプル以外では見つからなかった)。特に小児と成人におけるGBMなど中枢神経系腫瘍を含む特定の癌種で、この関連性が比較的多く認められた。

DAXXまたはATRXの遺伝子変異と、テロメア異常との間には完全な相関関係があった」とMeeker氏は述べた。「これには、本当に興奮した。 生物学的研究では、完全な相関関連は滅多に見られるものではない」。テロメア異常の生成に関与するメカニズムを理解することで、癌の新しい治療標的が明らかになるかもしれないと付け加えた。

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野長瀬 祥兼、 岡田 章代 訳
大淵 俊朗(呼吸器・乳腺分泌・小児外科/福岡大学医学部)、須藤 智久 (臨床薬学修士/国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター) 監修
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