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2011/07/12号◆特集記事「米国の大腸癌による死亡率は低下し続けているが、地域差がある」

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2011/07/12号◆特集記事「米国の大腸癌による死亡率は低下し続けているが、地域差がある」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年7月12日号(Volume 8 / Number 14)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

米国の大腸癌による死亡率は低下し続けているが、地域差がある

新たな2件の研究結果によると、米国における大腸癌による死亡率は下がり続けており、この傾向は20年以上前から続いている。しかし死亡率低下には地域的格差があり、北東部の低下率は、他の地域、特に南東部の多くの州に比べてはるかに大きい。

これら研究は疫学的性質を持つものであるため直接的な因果関係を示すことはできないが、全国の死亡率低下傾向に寄与したのは主に大腸癌の検診受診率の大幅な改善であるということでは両研究の著者らの意見が一致した。喫煙率の低下や治療の進歩などの他の因子も関与しているとも述べられている。

癌検診受診率と治療に影響を及ぼすことが立証されている社会経済的格差は、癌死亡率の地域的な相違の説明に役立つだろうと一部の研究者は述べた。

「それが重要なポイントです」と研究の一方を率いたアメリカ癌協会(ACS)のDr. Ahmedin Jemal氏は述べている。「貧困は検診や治療を受ける機会だけでなく、喫煙、肥満といった大腸癌の既知の危険因子の蔓延とも関連があるのです」。

格差が地理的な相違に拍車をかける

7月5日付疾病率死亡率週刊報告(Morbidity and Mortality Weekly Report)電子版で発表された1つ目の研究で、米国疾病管理予防センター(CDC)の研究者らは、年齢で補正した大腸癌死亡率が2003年から2007年までの間に年3%低下したことを明らかにした。10万人あたり19人だった死亡率が、16.7人に低下し、約3万2千の死亡者数減少という差異をもたらした。CDCの報告によれば、この間に大腸癌の発生率も低下し、2003年に10万人あたり52.3人であったが、2007年には45.5人となった。

同機関の‘行動危険因子サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System)’電話調査のデータを用いたCDCの研究では、一般に受け入れられている臨床指針に従って大腸癌検診を受けた人の割合は、2002年の52.3%から2010年の65.4%と、全国的には上昇したことが示された。

「検診普及率が最も高いいくつかの州」では死亡率がより大きく低下したとDr. Lisa Richardson氏らは記した。

7月7日付Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention (CEBP)で報告された2つ目の研究で、Jemal氏らは大腸癌死亡率に大きな地域格差があることを確認した。マサチューセッツ、ロードアイランド、ニューヨークという北東部の州では、1990~1994年と2003~2007年の間に死亡率が33%以上低下した(アラスカ州でも同様)。しかし、多くの南部の州、特にアパラチア山脈沿いでは、死亡率の低下はずっと小さい。ミシシッピ州では1990年初期から2000年なかばの間に死亡率はほとんど変化しなかった(ワイオミング州でも同様))。

大腸癌の全死亡率低下は歓迎すべきニュースであるとオハイオ州立大学研究財団総合がんセンターの癌保健格差の主任研究者Dr. Electra Paskett氏は述べた。しかし、アパラチア山脈沿いで死亡率が高くなっているのは驚くべきことではないと続けた。オハイオ州の彼女の研究グループはその問題をここしばらく研究しており、検診受診率を上げる方法を調査中である。(このページの最後にある囲み参照)

「大腸癌を早期に発見し、治療を受けてもらう―これが死亡率に影響を及ぼすのです」と彼女は述べた。

検診の受診について言えば、社会経済的格差の影響は無視できないとJemal氏らは強調し、「南部の州には、貧困で保険に加入していない大集団があり、そのような人々の間では検診を受ける割合が低い」と述べた。

社会経済的地位の低さ、教育水準の低さ、健康保険の未加入が、人々が検診を受けるかどうか、また診断後に適切な経過観察や治療を受けるかどうかに影響を及ぼしているとJemal氏はインタビューで語った。

たとえば、S状結腸鏡検査による大腸癌検診を受けたPLCO(前立腺癌・肺癌・大腸癌・卵巣癌)スクリーニング試験の参加者のうち、黒人参加者では指定された大腸内視鏡検査を受けなかった割合が白人参加者より相当高いことがNCI研究者による2010年の報告で示された。試験参加者の社会経済的地位は不明だが、黒人参加者のほうが白人参加者より教育水準が低かった。教育水準の低さは社会経済的地位の低さと相関関係があることが多い。

NCIの癌制御・人口学部門(DCCPS)のDr. Paul Doria-Rose氏は、格差の主な原因については研究の著者らと同意見であった。「この点では大腸癌における格差ははっきり存在するといえます。現在認められる地域差はこのような格差を反映していると思います」と彼は述べた。

検診受診率の改善

多くの研究班がさまざまな癌の検診受診率を高める方法を研究しており、特に癌の発生率と死亡率に差があり、医療が受けられないなどの障壁が存在する集団を対象に研究を進めている。

Affordable Care Act(医療費負担適正化法)の成立で大きな前進がみられ、2011年1月時点より、メディケア公的保険受給者と2010年9月23日以降開始の新たな健康保険制度の加入者は特定の推奨される検診の受診が義務づけられている。大腸癌と乳癌の検診も対象であり、無料で検診を受けられる。

さらにDCCPS委員は、PROSPRと呼ばれるPopulation-Based Research Optimizing Screening through Personalized Regimens (個人に合わせた内容・方法によって検診を最適化する集団ベースの研究)への新たな取り組みにおいて適用の検討をこのほど終えた。NCIはこの取り組みに対して資金提供を行っている。この取り組みはすでに確立した効果的な検査法のあるすべての癌について検診プロセスの改善をめざしている。

この取り組みのねらいは「すべての検診プロセスに対して総合的にアプローチし、弱点はどこにあるかを探り、改善方法を見つけること」であるとDoria-Rose氏は説明した。「多くの場合、効果のある検診方法があります。今がより多くの人に適切な検診を受けてもらう最大のチャンスです」。

— Carmen Phillips

【右上地図表題・上】州別の大腸癌による死亡率、1990~1994年

【右上地図表題・下】州別の大腸癌による死亡率、2003~2007年

【地図キャプション】

米国癌学会(AACR)の許可により転載:D Naishadham et al.、米国における大腸癌死亡率の州格差、Cancer Epidemiol, Biomarkers & Prev, 2011, 20(7); 1296-302)[画像原文参照

なぜ大腸癌死亡率は下がっているのか?数年前、NCIの癌介入および調査モデルネットワーク(Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network:CISNET)から支援を受けた研究班が、米国での大腸癌死亡率に対してさまざまな因子が及ぼす影響を推測するコンピューターモデルを開発した。それによると、大腸癌死亡率低下の約半分は検診の増加によるもので、喫煙などの危険因子の減少によるものが3分の1強、治療の向上によるものはこれよりも少ない12%であると推測された。
地域社会に合わせた介入Electra Paskett氏は、オハイオ州のアパラチア地方にある地域社会連合のいくつかと協力し、大腸癌死亡率が高いこの地域に、検診を増やすことで死亡率を低下させようという研究を主導している。地域社会のリーダーたちからの意見に基づき、この研究では主要な介入にきわめてローテクなツールを用いている。「リーダーたちは、ここではインターネットやスマートフォンのようなしゃれたものではうまくいかないと言うのです。彼らによれば、屋外広告が一番だそうです」とPaskett氏は説明した。いくつかの郡では屋外広告を用いて検診を受けることの重要性を訴え、「対照群」となる郡では屋外広告で果物や野菜をもっと食べるように勧めている。電話調査が予定されており、50歳以上の人が検診が必要であることを知っているか、より多くの人が検診を受けているかなどが調査される。Paskett氏と研究チームは、地域社会のグループと協力し、検診を受けた人がその後適切な医療を受ける手助けも行っている。

検診への認識を高め、受診する人を増やすための介入は、対象とする地域社会に合わせたものでなければならないとPaskett氏は強調した。「ニューヨーク市では効果がある手法がオハイオの農村部でうまくいくとは限らないのです」。

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鈴木 久美子 訳
鵜川 邦夫(消化器内科/鵜川病院) 監修
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