乳癌の個別化治療、臨床試験開始 | 海外がん医療情報リファレンス

乳癌の個別化治療、臨床試験開始

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

乳癌の個別化治療、臨床試験開始

2006年5月23日

早期乳癌患者の再発リスクに伴うことの多い遺伝因子を、患者に最適かつ最も効果的な治療を施すために用いることができるかどうか調査する Trial Assigning IndividuaLized Options for Treatment (Rx) (個別化選択治療を指定する臨床試験、略称:TAILORx)が本日開始となった。TAILORxは、アメリカ国立衛生研究所の一端である国立癌研究所(NCI)が出資し、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)が調整する。乳癌研究を行っているNCI支援のすべての臨床試験群が同個別化臨床試験の展開に共同し、試験に参加している。


「この臨床試験は重要なものです。癌治療を個別化する方法を検討する最初の調査のひとつなのですから。」NIH本部長、Elias A. Zerhouni博士は述べた。

初期乳癌患者のほとんどの女性は、放射線治療とホルモン治療に加えて、化学療法を勧められることが多いが、化学療法が全員に等しく利点をもたらすかについてはまだ研究で証明されていない。TAILORxは、分子プロファイル試験(多数の遺伝子を同時に検討する技術)を臨床的意思決定に組み込み、これによって、化学療法が患者に実質的な有益性がないとみられる場合には不要な治療を受けなくても済むようになることを求めるものだ。同試験は、アメリカとカナダの900施設で10,000人以上の女性を登録する予定である。エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体が陽性、Her2/neuが陰性の乳癌であると最近診断され、まだリンパ節に広がっていない女性を同試験の適格者としている。Her2/neu遺伝子の過剰発現は、患者に予後不良をもたらす。

TAILORxは、Genomic Health社(カリフォルニア州レッドウッド市)が癌研究専門家ネットワークであるNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)と共同開発した有効診断検査のOncotype DXTMを用いて、初期乳癌女性に、癌治療として最も効果が高い現行アプローチであり、最少の副作用となるものを決定する。TAILORxは新しいNCIプログラム(臨床癌試験(PACCT)の評価プログラム)の一環として開始される最初の臨床試験であり、これは最新の診断検査を使用、評価、改良することによって癌治療法を個別化しようとするものである。

Journal of Clinical Oncology誌のオンライン版に今日掲載の研究は、このタイプの乳癌の女性がホルモン療法に化学療法を加えることで利点があるかどうかを決定づける一助としてOncotype DXTMを用いる価値について強い根拠を示すものである。この研究や近年行われた同様の他の複数の臨床試験がTAILORxの開始の根拠を示した。

女性に診断される癌で最も多くみられるのが乳癌で、米国で新規に浸潤性乳癌と診断される女性は、2006年では約212,920人に上るものと推定される。このうちの半数以上が、エストロゲン受容体陽性、リンパ節陰性タイプの乳癌である。そのうち80〜85%の女性にとって、現行の標準的治療とは腫瘍の外科的切除と、その後に放射線治療とホルモン療法を行う方法である。化学療法もほとんどの女性に勧められるが、実際に化学療法から実質的利点を得る女性の比率は非常に小さい。

「こうした女性のうち非常に大勢の方々が、不必要な有害な化学療法を受けています。私たちにはそれを識別する手段が必要なのです。」NCI癌治療評価プログラム臨床検査支部の上級治験責任医師、Jo Anne Zujewski博士は述べた。「TAILORxは、私たちの乳癌治療方法を変える手助けとなり、患者のQOLの改善に役立つでしょう。化学療法の利点を得ることができそうな女性と、そうでない女性とを、もっとうまく識別できるようになるからです。」

Oncotype DXTMは、乳房腫瘍における21の遺伝子の発現レベル(メッセンジャーRNAに転写されているかどうか)を測定する。この評価は、腫瘍の大きさやグレードなどといった標準的特性よりも、正確に患者の再発リスクを推測することが可能である。Oncotype DXTM遺伝子発現解析に基づき、再発スコア0〜100を作成する。スコアが高ければ高いほど、ホルモン療法単独のみの場合に、患者の再発の可能性が高くなる。

患者は10年間にわたる試験を行い、その後、初回治療後最長20年の経過観察が予定されている。患者の再発スコアに基づき、被験者はTAILORx試験で3つの異なる治療群に割り当てられる。

  • 再発スコアが26以上の女性は、ホルモン療法と化学療法治療群(標準治療)
  • 再発スコアが11未満の女性はホルモン療法のみ
  • 再発スコアが11〜25の女性は、アジュバントホルモン療法+化学療法、あるいはアジュバントホルモン療法単独、のいずれかに無作為に割り付ける
    TAILORxは、主に再発スコア11〜25の患者における化学療法の効果が評価できるように設計されている。この治療群の女性は、本研究の4,390例、すなわち約44%で構成される。再発スコア11〜25の女性における化学療法の有益性の程度が不確実なため、TAILORxは、Oncotype DXTM検査がこの群の今後の治療計画に有用かどうかについて判断することを求めるものである。

 

本臨床試験のホルモン療法は閉経期状態に基づいて割りつけられ、タモキシフェンや、アロマターゼ阻害剤であるアナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンを用いる。本臨床試験の化学療法群患者は、現在可能な標準治療であると考えられるいくつかの標準併用化学療法からいずれか1種を受ける。TAILORxに参加する女性患者は、NCI支援の他の臨床試験に参加することも可能である。その臨床試験で定められる治療方法が、TAILORxで割り付けられた治療方法と一貫していれば問題ない。

この臨床試験の付加目的としては、本臨床試験に登録した患者の組織と検体貯蔵を作成すること、および、臨床試験に参加する被験者の健康状態に関する経過観察情報を収集することが挙げられる。本試験で収集する組織は将来の研究に用いるために保存し、乳癌についてさらに知識を得たり、治療決定を行う診断検査を評価し、可能であればTAILORx以上に洗練する。

TAILORxを用いることで、私たちは個別化医療に対して大きな一歩を踏み出すのです。最先端診断検査を用いて、私たちは個人の癌治療法をカスタマイズすることが可能になるのです」、ニューヨーク州ブロンクス市モンテフィオーレ医療センター、および米国東海岸癌臨床試験グループのプロトコール主任であるJoseph Sparano博士は語った。

本試験の被験者には、当初5年間は3〜6ヵ月ごとに主治医が身体検査を行い、それ以降は年に一度の身体検査を最長20年間行う。再発の兆候をみるため、年に一度乳房撮影を行う。

TAILORxに関する適格性と登録情報については、http://www.ctsu.org/ 参照(検索ボックスに「TAILORx」と入力)。

TAILORxプロトコールのPDQサマリーや、現在登録している患者がサイトの連絡先を確認したい場合はこちらへ:http://www.cancer.gov/clinicaltrials/ECOG-PACCT-1.

(Snowberry 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward