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COX-2阻害薬と癌:Q&A

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COX-2阻害薬と癌:Q&A

NCI原文ページへ (*2011年7月現在リンク切れ)

キーポイント

・セレコキシブは、2つのシクロオキシゲナーゼ(COX)酵素のうちの1つによってプロスタグランジン(化学伝達物質の1種)の産生を阻害する薬です。COX酵素は、体内で炎症、前癌組織、癌組織に反応し誘導されます。多くの医学症状(アスピリンなど)から痛みと炎症を和らげる薬は、COX-1酵素と COX-2酵素を阻害します。(質問 1参照)

・30才以上、2,000人以上の男女対象者でのセレコキシブ腺腫予防試験(Adenoma Prevention with Celecoxib (APC) Trial )では、セレコキシブ投与を受けた対象者はプラセボ投与を受けた対象者より、新しい腺腫の出現が33%から 45%少なくみられました、しかしセレコキシブ投与を受けている対象者はプラセボ投与を受けている対象者と比較して重大な心血管イベントのリスクがほぼ2倍におよびました。(質問4参照)

・NCIは、癌に関するCOX経路の重要性を示す明確な実験室、動物、疫学的方法、臨床によるデータから、癌のリスクが高い患者における進行中の臨床試験でセレコキシブを研究し続けます。(質問11参照)


1. シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤とは、何ですか?

シクロオキシゲナーゼ(COX)抑制剤はシクロオキシゲナーゼ酵素の作用を阻害する合成物で、この酵素は炎症の反応として、また前癌組織と癌組織から作られます。非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)は、これらの両方の酵素(COX-1COX-2)を阻害することで、多くの医学的状態からくる痛みと炎症を和らげます。COX-2酵素だけを阻害するNSAIDは使用者の痛みと炎症を和らげ、一方でNSAIDを長期間、定期的に摂取することで起こりうる、胃出血のような特定の内科的な疾患を避けるためにつくられました。

2.なぜ、NCIは癌防止と治療でCOX阻害剤を研究していますか?

10年以上の疫学的研究では、COX酵素を阻害する薬を定期的に飲む人は特定の前癌状態、癌、および癌に関連した死亡率を下げることが示唆されています。データは結腸直腸癌でもっとも一貫していますが、このリスクの低下は他の癌にも見られます。いろいろなNSAIDとCOX2特有の阻害剤を使った動物と実験室での試験では、これらの合成物を使うことで癌発生率の減少を示しています。分子レベルでは、試験はCOX経路の抑制が細胞増殖を減らし、プログラムされた細胞死を増やし、癌細胞に栄養を与える血管の形成を減らして、体の免疫反応を変えることで癌細胞の特性を変えることを示しました。
加えて、COX-2を産生しない結腸直腸癌細胞の実験室での研究では、これらの細胞をセレコキシブで治療することがCOX-2に関係なくタンパク質産生の広範囲な変化を起こすことを示しました。これらの細胞のセレコキシブ治療後、研究者らは代謝、DNAとタンパク質合成、タンパク質の折りたたみ状態、タンパク質に追えられた化学的装飾のパターンを含むさまざまな細胞機能に関するタンパク質の全体的な変化を観察しました。これらの結果はCancer Epidemiology Biomarkers and Preventionの2006年9月号に発表され、COX-2を阻害して結腸直腸腺腫形成を防ぐセレコキシブの能力の解明を助け、この薬剤が高用量で与えられるとき、観察されるセレコキシブの有害な作用の解明も提供できる可能性もあります。


.セレコキシブ(Celebrex™)とは、何ですか?

セレコキシブ(Celebrex™)は、ニューヨークにあるファイザーで製造されたCOX-2を阻害する薬剤です。セレコキシブは、1998年12月に変形性関節症と成人慢性関節リウマチ(関節の炎症)の治療の承認を、アメリカ食品医薬品局(FDA)から得ました。科学的な結果が、COX-2阻害剤による癌の防止と治療の可能性を示唆したので、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health (NIH))の一部である国立癌研究所(NCI)は様々な癌の予防と治療のためこの薬を研究する目的でファイザーと契約をしました。

.セレコキシブによる腺腫予防(APC)試験とは何ですか?

セレコキシブによる腺種予防試験(Adenoma Prevention(APC)Trial)は、酵素COX-2を阻害する関節炎薬セレコキシブが、前癌症状のポリープをすでに切除した人の結腸と直腸で新しい腺腫(前癌症状のポリープ)の出現を減らすかどうか確定する臨床試験です。30才以上、2,000人以上の男女が3年間、200 mgのセレコキシブの投与を1日に2回、400 mgのセレコキシブ投与を1日に2回、またはプラセボを1日に2回のいずれかの群に無作為に割付けされました。セレコキシブの投与を受けた対象者はプラセボの投与を受けた対象者より、新しい腺腫の出現が33%から 45%少なくみられました。試験に参加した90以上のセンターは主にアメリカにありますが、イギリス、オーストラリア、カナダにもあります。試験は、1999年後半から2002年2月まで対象者を登録しました。

5.なぜ、NCIはAPC試験でセレコキシブの使用を中止しましたか?

APC試験のセレコキシブの使用は2004年12月17日に中止されました。理由として、独立したData Safety and Monitoring Board (DSMB)(データ安全性監視委員会) による最初の分析によると、重大な致命的または非致死性心血管イベント(心血管死、心臓発作、脳卒中または心不全)のリスクがプラセボで投与を受けている対象者と比べ、2.5倍も高いことを示したからです。APC 試験の責任医師らは試験の薬物使用を直ちに中止しましたが、対象者は計画された残りの試験期間中は経過観察されます。

.APC試験での心血管イベントの分析で、何が示されましたか?

2004年12月の試験の中止後、NCIによる独立した安全委員会の設立、APC試験と他のセレコキシブ試験である、散発性結腸直腸腺腫ポリープの予防(PreSAP)試験の独立したデータ安全性監視委員会(DSMB)が設立され、これらの2つの試験でセレコキシブによる心血管リスクが評価されました。APC 試験では、委員会は1日に2回200mgのセレコキシブの投与を受けている患者は、心血管死、心臓発作、脳卒中、心不全のリスクが2.6倍も高いと判明しました。これらの重大な心血管イベントのリスクは、1日2回400mgの投与を受けている患者では、3.4倍も高くなりました。 PreSAP試験の対象者は1日1回400mgのセレコキシブの投与を受け、これらの有害心血管の転帰のリスクがわずかに(1.3倍)、統計学的に有意でない増加がみられました。結果は、2006年8月31日、米国心臓協会(Journal of the American Heart Association)の発行誌Circulationで発表されました:。

APC 試験のプラセボ群では、679人中7人(1.0%)は、1症例の心血管死を含む重大な心血管イベントがみられました。1日に2回200mgのセレコキシブの投与を受けているグループにおいて、685人中18人(2.6%)に、5症例の心血管死を含む、重大な心血管イベントがみられました。1日に2回400mgのセレコキシブの投与を受けている対象者では、671人中23人(3.4%)に、6症例の心血管死を含む重大な心血管イベントがみられました。PreSAP 試験では、プラセボ群の628人中12人(1.9%)に、4症例の心血管死を含む重大な心血管イベントがみられました。1日に1回400mgのセレコキシブの投与を受けている対象者では、933人中23人(2.5%)に、4症例の心血管死を含む重大な心血管イベントがみられました。

APC 試験とPreSAP試験の対象者は、心筋保護のために低用量アスピリン(81mg/日)の投与が許可されました。低用量アスピリンの投与を受けた対象者は、アスピリンの投与を受けなかった対象者と比べ重大な心血管イベントが起きるリスクに違いはありませんでした。しかし、重大な心血管イベントのリスクは、過去の心血管疾患の病歴を持つ患者において、明らかにもっと高くなりました。 2つの試験の併合した分析では、リスク、心血管イベント病歴のない対象者で1.8倍、心血管イベント病歴のある対象者で2.3倍増加しました。

.なぜセレコキシブが重大な心血管イベントのリスクを増加させるのか?

リスク増加の理由は、明白ではありません。米国心臓協会ジャーナルCirculationに発表されたAPC 試験からの心血管イベントの分析によると、セレコキシブの投与を受けている試験対象者では明らかな血圧の上昇があり、それが心臓病になるリスクに悪い影響を及ぼしたかもしれないと示されています。どのような人に、これらの重大な心血管イベントのリスクがあり、どのような人には安全に薬を飲むことができるかどうかを特定できるよう、研究者らは、可能性のある機序を理解するために研究しています。 今後も、セレコキシブの投与量を少なくしたり、異なる投与方法(1日に2回投与の代わりに、一回投与にする)にしたりして、鎮痛効果やポリープ防止効果を維持しながら、心血管のリスクをより少なくできるかどうかの研究が続けられるでしょう。

8. NCIは、重大な心血管イベントのリスクについてCOX-2阻害剤臨床試験で患者に通知するために、何をしましたか?

NCIは、APC試験でみられた心血管リスクの増加についてCOX-2阻害剤に関するスポンサー付きの試験の全ての試験責任医師らに知らせました。試験責任医師らは、この新情報を治験審査委員会(IRB)、データ安全性監視委員会(DSMB)と試験の対象者らに通知するように命じられました。NCIはまた、この新情報を反映してこれらの試験の同意書の内容を修正し、試験の対象者からの再同意を得ることを義務づけました(試験のリスクとベネフィットに関する更新された情報で新しい同意書の署名が必要)。

9.何がこれらの試験の同意書に追加されましたか?

NCIにより推奨され、以下の部分が改訂同意書に加えられました:「最近、心臓または血管病が原因になっている心臓発作、脳卒中や死亡のリスクの増加が、臨床試験においてセレコキシブの投与を受けている患者で報告されました。このリスクの増加はセレコキシブの投与を受けなかった患者のリスクに比べ2~3倍高くなりましたが、これらの重大な有害事象はまれにしかおこりません。セレコキシブの投与で、あなたがこれらの事象のいずれかを起こすリスクが増すかもしれません。」

 

10.何件の臨床試験が、この情報で影響を受けましたか? 中止になった試験がありましたか?

2004年12月現在、NCIはセレコキシブを使った、多様多種規模のおよそ50の予防と治療臨床試験が試験中、あるいは予定の段階でした。26の予防試験は、10人以下の対象者から2,000人以上の対象者の規模で、多発性骨髄腫と、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸直腸癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌、肺癌、口腔癌、前立腺癌の予防のためでした。NCIは、大規模予防試験の殆どをファイザー社と協力していました。23の治療試験は、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、他の固形癌などの主に小規模の第1相臨床試験あるいは第2相臨床試験でした。治療試験には乳癌の女性での2つのランダム化、第3相臨床試験が含まれます。

NCIは全試験を中止とはしませんでしたが、試験責任医師らが彼らの臨床試験審査委員会、データ安全性監視委員会と対象者らに新情報を知らせることを義務づけました。新情報に応じて、試験責任医師、治験審査委員会とデータ安全性監視委員会は、倫理的、実際的な問題の両面から、各試験を続けるリスクとベネフィットを考慮しなければなりませんでした。たとえば、一部の試験は終了間近でした、試験責任医師はその治療を続行せず、試験を中止して、その時点でデータを分析する方針をとりました。多くの治療試験で、セレコキシブの使用は主な治療ではなく、その効果は試験の主な目的ではありませんでしたので、これらの主な研究では、セレコキシブの使用は中止になりました。他の試験では、セレコキシブの試用期間が短く、低用量であり、その集団は癌のリスク増加があったために、計画どおりに続行されました。
NCIは、多数の実験室での試験と同様に、予防のため18の臨床試験と治療のため1つの臨床試験を行いセレコキシブのテストを続けます。

11.セレコキシブの投与を受けているリスクの可能性をより理解するためにNCIがサポートした他のどんな分析が行われていますか?

NCIがスポンサーの試験医師らは、セレコキシブをテストしている6つのランダム化された、プラセボ対照試験からセレコキシブを使っているデータの心血管と脳血管安全性を評価しています。セレコキシブの使用は、全てのこれらの試験でほとんど終了、停止、中止になりました。これらの試験(そして、これらのイベントの一貫した定義使用)から心血管と脳血管安全性のデータを分析することによって、セレコキシブのリスクプロファイルのより明確な実態が明らかになるかもしれません。分析は進行中で、完成は2006年後半に予想されています。
安全性の分析は以下からのデータです:

NCI スポンサーによる3つの試験

・結腸直腸腺腫の病歴のある男性と女性による試験のセレコキシブ腺腫予防試験(APC)
・結腸直腸腺腫の病歴のある男女による試験のSelCel試験
・ エストロゲンレセプター陽性の乳癌の閉経後の女性の試験のMA27 Breast Adjuvant Trial(MA27 乳癌術後化学療法試験)。

国立医薬品食品衛生研究所の他の医療機関による2つの試験

・ アルツハイマー病のリスクがある男性女性を含んだNational Institute on Aging’s ADAPT試験
・ 糖尿病と糖尿病性黄斑浮腫の人々のNational Eye Institute’s Diabetic Retinopathy 試験
・ 結腸直腸腺腫の病歴のある男性と女性の、スポンサーがファイザーによるPre-SAP試験。

12. 人々は、鎮痛のためにセレコキシブを使い続けなければなりませんか?

骨関節炎と成人の慢性関節リウマチ患者(/日)で鎮痛のために使われるセレコキシブの平均量は1日1回200mgで、APCとPreSAP試験で研究されたすべての用量より少量です。したがって、試験での多目の用量を使う事で見られた心血管リスクが、セレコキシブの低用量をつかっているこれらの患者にみられるかどうか、分かっていません。
FDAは、ウェブサイト(http://www.fda.gov)で、鎮痛剤とセレコキシブに関して服用者および医師にアドバイスをしています。

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(HAJI 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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