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テロメア:癌細胞内での伸長に関連する2つの遺伝子/ジョンズホプキンス大学

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テロメア:癌細胞内での伸長に関連する2つの遺伝子/ジョンズホプキンス大学

テロメア:癌細胞内での伸長に関連する2つの遺伝子

ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らは、テロメアと呼ばれる細胞DNAの「先端のキャップ構造」が短縮せずに伸長するという、ある種の癌においてあまり解明されていない現象の1つについてさらなる手がかりを提供した。

6月30日付Science誌電子速報版に発表された研究において、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らは、遺伝子の欠失時にテロメアを伸長させる可能性のある2種の遺伝子を同定したと述べている。

テロメアは、正常細胞で細胞分裂のたびに縮小するDNAの繰り返し配列を含有する。テロメアがない場合は、細胞分裂に関連する短縮により、細胞の遺伝子が切断され、主要な細胞機能が破壊される。ほとんどの癌細胞は、自然に急速に分裂し、テロメラーゼという大量の酵素を使用して、テロメアを無傷に保つ。しかし、ある種の癌細胞はテロメラーゼの作用がなくてもテロメア長を維持することがわかっている。

テロメラーゼの産生が増加しない状態で、癌細胞がどのようにテロメアを維持したか、つまり「テロメア代替伸長」として知られる現象について研究者らは疑問を抱いた。

「テロメア代替伸長の役割を担う遺伝子を発見することは、このプロセスを理解する第一ステップであり、新たな薬物療法を開発する機会になります」とジョンズ・ホプキンス大学の Kimmel がんセンター准教授で Ludwig センターのトランスレーショナル遺伝学部門の部門長のNickolas Papadopoulos博士は述べる。

このプロセスに関連する遺伝子の最初の手がかりは、1月20日付Science誌電子速報版に発表された膵神経内分泌腫瘍のゲノムをマッピングしたPapadopoulos氏の指揮した研究から得られた。これらの腫瘍内に最も頻繁に認められた遺伝子変異は、ATRXおよびDAXXが含まれる遺伝子群内に生じた。これらの遺伝子により産生されたタンパク質はDNAの特異的な部分と相互作用し、塩基配列を読み取る方法を変化させる。ATRXおよびDAXXはテロメア領域内の類似の機能にも関連していた、とジョンズ・ホプキンス大学の病理学、泌尿器科学、腫瘍学講座の助教のAlan Meeker博士は言う。

Meeker氏らは勘に従って、テロメア伸長における2種の遺伝子とそれらの特異的機能をさらに詳しく調べた。研究者らは、ゲノムマッピングプロジェクト中に膵神経内分泌腫瘍患者41人から採取した組織のうちの25検体で、テロメア代替伸長に特徴的な徴候を認めた。Meeker氏によれば、テロメアを特異的な標的とする蛍光色素によって、25検体で「テロメアDNAの巨大な凝集」がみられ、それぞれの蛍光スポットは正常細胞の約100倍のテロメアDNAを有していた。

テロメア代替伸長に対する陽性蛍光を発した25検体中19検体で、ATRX遺伝子またはDAXX遺伝子の変異が認められた。25検体中6検体では、ATRX遺伝子にもDAXX遺伝子にも変異は認められなかったが、腫瘍細胞ではこれら2つの遺伝子の発現が認められなかった。代替伸長の認められない残りの16検体には変異は認められず、十分なATRXおよびDAXXの発現が認められた。

「私たちは、ATRX遺伝子およびDAXX遺伝子内の変異とテロメア代替伸長の間に100%の相関関係を認めました」とMeeker氏は言う。

Meeker氏およびPapadopoulos氏らが解析を行った他の439個の腫瘍検体のうち、デューク大学のHai Yan博士(M.D., Ph.D.)およびDarell Bigner博士(M.D., Ph.D.)より提供された小児および成人の神経グリア芽細胞腫検体などの特定のの脳癌型においてATRX遺伝子に変異が認められた。

Meeker氏らは、分析可能な組織を用いて、神経グリア芽細胞腫検体のテロメアの状態を調べた。ATRX遺伝子に変異を有する8個のすべての神経グリア芽細胞腫組織検体で、テロメアの特徴である明るい蛍光が認められ、代替伸長およびATRX遺伝子発現の欠如が示唆された。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、遺伝子が癌細胞内で伸張するしくみについてまだ説明していないが、変異によってテロメアDNAのパッケージ方法が変化し、これらの領域が不安定になる、とMeeker氏は推測する。

Papadopoulos氏のゲノムマッピング研究において、ATRX/DAXX遺伝子に変異がある膵神経内分泌腫瘍患者は、変異のない患者に比べ生存率が良好であることが示された。

 「相関関係が維持された場合、テロメアの代替伸張とATRX/DAXX遺伝子の変異を、これらの遺伝子を標的とする治療法開発だけでなく、患者の予後の判定法として利用できます」とMeeker氏は述べる。

 

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本研究は以下より資金援助を受けた:Caring for Carcinoid Foundation(カルチノイド、膵神経内分泌腫瘍、関連する神経内分泌系癌の研究に資金助成を行っている非営利財団)、ラストガーテン膵臓がん研究財団、Virginia and D.K. Ludwig Fund for Cancer、米国国立衛生研究所、Sol Goldman膵がん研究センター、アメリカ癌協会、Pediatric Brain Tumor Foundation Institute、デューク大学医学部総合がんセンターコア、Fundacao de Amparo a Pesquisa do Estado de Sao Paulo、米国国防省乳癌研究プログラム。

本稿の共著者は以下の通りである: ジョンズ・ホプキンス大学のChristopher M Heaphy氏、Roeland F de Wilde氏、 Yuchen Jiao氏、Alison P Klein氏、Barish H Edil氏、 Kenneth W Kinzler氏、Bert Vogelstein氏、Ralph H Hruban氏、Anirban Maitra氏、Chetan Bettegowda氏、Fausto J Rodriguez氏、Charles G Eberhart氏、 Sachidanand Hebbar氏、ヴァンダービルト大学のChanjuan Shi氏、ユトレヒト大学医療センター(オランダ)のJohan A Offerhaus氏、デューク大学のRoger McLendon氏、B. Ahmed Rasheed氏、Yiping He氏、Hai Yan氏、Darell D. Bigner氏、サンパウロ大学(ブラジル)のSueli Mieko Oba-Shinjo氏、Suely Kazue Nagahashi Marie氏。

膵神経内分泌腫瘍の蛍光テロメアの画像は請求により入手可能。

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吉田加奈子 訳
石井一夫(ゲノム科学/東京農工大学) 監修
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原文

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