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2.癌生存者に発生する新たな癌

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2.癌生存者に発生する新たな癌

NCIベンチマーク

– 国際標準

7巻 第1号

-原文-

Heather Maisey氏の報告
 2007年1月24日

癌生存者の中には他の人よりも新たな腫瘍を発症しやすい人がいるが、このようなリスクの増加をもたらす因子の複雑な相互作用についてはほとんど知られていない。二次癌発症率は、生活習慣や環境暴露、遺伝的感受性、並びに遺伝子-遺伝子および遺伝子-環境の相互作用を含むリスク因子の組み合わせなど、共通の原因因子を含む、様々な因子によって影響を受ける。癌生存者が直面する問題に対して、多くの研究が重点的に取り組まれている中、医学者は治療法およびケアを改善できるような解決策を提供することを望んでいる。研究者もこれらの研究から得られる知識によって、すべての癌患者の生活の質が高まると信じている。


NCIの癌疫学および遺伝学部門のヒト遺伝子プロクラム責任者であり遺伝疫学科主任であるMargaret A. Tucker医師は、癌生存者の間で発生する新たな腫瘍に関する第一人者である。このNCIベンチマーク(国際標準)では、二次癌のいくつかの原因および二次癌の詳細を知るために、どのようなことが起こっているのかについて、同氏と話した。

どのような種類の癌で二次癌が関与しているのか?
二次癌によくある種類の一つに同じ臓器に新たに発生する癌があります。例えば、最初の乳癌後に最もよく見られる癌は二次乳癌です。研究者は、女性の右乳房には左乳房に受けた(化学療法剤や放射線などへの)暴露の一部もしくは同等の暴露を受けていることを前提として考えます。つまり、片方の乳房に暴露を受けた女性が乳癌を発症した場合、反対側の乳房に二次腫瘍が発生することは考えられないことではありません。同じような多発性原発部位は、結腸癌および肺癌、並びに皮膚黒色腫にも見られます。

「フィールド効果(field effect)」と呼ばれる理論がありますが、そこでは、呼吸器および上気道・消化器系など、異なる臓器であっても直列臓器系であれば同じ発癌物質にさらされると、二次癌に発展する可能性のある同じもしくは隣接する臓器系にはprimed cell(刺激を受けた細胞)が存在する、とされています。しかし、癌の再発および転移性腫瘍は二次癌とはみなされない点に留意することが大切です。同じ場所であれ離れた位置であれ、再発癌および転移性腫瘍は、同じ癌の再現であり最初の癌から発生するからです。

 

しかしながら、二次癌の圧倒的多数は、異なる部位もしくは最初の癌とは離れている別の臓器系に発生するのです。

二次癌を発生するリスク因子は?
二次癌を発生するリスク因子は数多く存在し、その中には環境および遺伝的リスク因子が含まれています。遺伝的感受性は、乳癌に対するBRCA-1/ -2変異のように、対象集団のごく一部に影響を及ぼす重要な素因を伝達する遺伝子変異のことを指しているだけでなく、対象集団ではよく見られますが、伝達リスクが低榎本 裕(泌尿器科)た環境における特定の暴露との相互作用を伴うことが多い膨大な数の未確認の遺伝的変異も含みますので非常に広義にわたります。

治療によって誘発される腫瘍を研究しようと思った動機は?
癌疫学者としてNCIへ来たとき、私は主に家族性癌および癌の遺伝的素因に対して研究を行っていました。このため、間もなく、元小児癌患児の二次癌を調査する史上初の症例対照研究に関わることになりました。多くの小児癌は、ご存じのように、その発症が極めて稀で、Rb-1の変異のような、小児に高いリスクである種の腫瘍を発症させる、継承された遺伝的因子に関連していることがよくあります。私はすぐに、癌治療によって誘発される腫瘍は、興味深いパラダイムを提供している、つまり、通常よく管理された環境下で人が受ける強力な発癌物質の正確な量を知る絶好の機会である、ことを知りました。汚染およびリスクの特定や計測はかなり正確に行えます。私たちは、なぜ二次癌が発生するのか詳しく理解し、可能な場合には、元癌患者だけでなく一般集団に発症する場合にこれらの癌についての仮説を展開する手段として、その情報を用いることができるのです。

最も気に掛けていることは?
癌専門医やその他の臨床医は、癌と診断される人々に対する有効な治療およびその生存に全力を尽くしています。患者が癌生存者となった時点で、私たちは彼らの生活の質および健康が維持されているかを確認するために、最善を尽くさなければなりません。癌生存者がしばしば癌の再発もしくは新たな癌の発見を恐れていることは十分理解していますので、適切なフォローアップケアを受けることができるようにしなければなりません。そこには、定期検診、スクリーニング、および、二次癌のリスクを最小限に抑えるために、禁煙、バランスの取れた食事および運動を含んだ、健康的な生活習慣に則った生活を送れるよう勧めることなどが含まれます。

治療によって誘発される二次癌のリスクに関わりのある遺伝子変異の存在は?
抗癌療法の有害な影響に対して人の感受性を高める可能性のある、ある種の遺伝因子が確かに存在しているようですが、まだどのようなものであるかを確実に言えるほどよく分かっていません。例えば、最もよく知られている症例は、Rb-1遺伝子の特異的変異を持つ、遺伝性網膜芽細胞腫と診断される人に見られます。十分な理由がわかっていないですが、この変異を持つ患者が放射線療法を受けると、骨格もしくは結合組織のいずれかに肉腫を発症するリスクが高くなります。

癌生存者における二次腫瘍リスクの遺伝子機構に関する研究は、その実施に途方もなく手間がかかります。発症が稀であることから、研究機関には、治療によって誘発される癌の感受性遺伝子を明確に同定するのに十分な症例数を対照にした研究が多くないのです。

興味を引く研究分野は、特定の化学療法薬剤を活性化もしくは無害化する際に重要な遺伝子の変異を同定することです。その薬剤の有効性および毒性の予測に、これらの変異が役に立つことがあります。将来性のある新しい研究の道筋となるもので、多くの人が時間と労力を注ぎ込んでいます。今後5〜10年の間に、私たちは今よりもはるかに多くの情報を入手することになると思います。

長期的な影響のリスクを軽減するために抗癌治療の改善に向けてなすべきことは?
最近の20〜30年の間、研究者は、治療毒性を軽減する一方で生存期間を伸ばすことを目指して、多くの臨床試験を実施してきました。彼等の関心は、長期的な影響および癌生存者が抱える問題点を明らかにすることです。二次癌に対するだけではなく心臓への影響、神経学的な影響および受胎能への影響に対する、癌治療後ケア、生活の質、並びに、長期的な毒性への最近の関心は、リスク因子を解明し治療法を改善するために大切だと思います。将来これらの問題を軽減することに大きな関心が寄せられています。

この研究分野における現在の「ホットな話題」は?
今後2〜3年は、禁煙、食生活の改善、減量や運動など、行動および環境の改善が一次・二次癌の予防に及ぼす影響についての研究を、より多く目にすることになると思います。大規模な分子疫学研究は、放射線および化学療法後の組織修復に関わる遺伝因子並びに生物学的経路に対する唯一の手掛かりとなるでしょう。さらに私たちは、NCIの癌登録を介して、今まで集められた中で最も大きい癌生存者集団の生存転帰を継続してモニターすることができます。二次癌のリスクおよび臨床試験におけるその他の長期的な健康転帰を研究することによって、特に正確な治療計画が分かっている場合、将来的に癌を予防するための臨床的判断および管理戦略を提供することができます。うまくいけば、新しい情報を基に、ある種の薬物および放射線に関わりのある長期的なリスクだけでなく短期的な毒性も、予測することができるようになるでしょう。癌の治療を受けた人々の生活の質は、これによって大いに改善されるでしょう。

豊 訳
中村光宏 (医学放射線) 監修

 

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