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1.放射線治療は二次癌の発生に影響するか?

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1.放射線治療は二次癌の発生に影響するか?

NCIベンチマーク

– 国際標準

7巻 第1号

-原文-

Heather Maisey氏とMike Miller氏の報告
 2007年1月24日

米国では1,000万を越える人々—約30人に1人—が癌生存患者である。癌生存者数のこれほどの増加は、癌の発見および治療における進歩を反映している。しかし癌生存者数の増加と共に、寿命が延びて生涯に一種類以上の癌にかかる人の数も益々増えることになる。New Malignancies among Cancer Survivors: SEER Cancer Registries, 1973-2000(癌克服者における新たな癌:SEER癌レジストリ)というタイトルのNCIの新しい研究論文によると、全体的に見て、癌生存者が新たな原発性悪性腫瘍を発症するリスクは、一般集団と比較して、14%高いということである。二次癌に関わる危険因子は、喫煙、過度のアルコール摂取、食事と栄養、および遺伝性素因など、初回の腫瘍につながる危険因子と同じかもしれない。しかしながら、人によっては、最初の癌の治療時に受けた放射線療法もしくは化学療法が、全く新しい原発癌を発症する寄与因子となる可能性もある。


放射線治療(放射線療法)は、1920年代から、ある種の癌を治療するために日常的に用いられてきた。最も一般的な放射線療法は、放射線を外部放射線源から照射する外照射療法、および放射線源を体腔もしくは体内組織に留置する小線源療法である。放射線療法により、腫瘍を完全に破壊したり、症状を緩和するほど十分に腫瘍を縮小したり、もしくは外科手術で切除できるほど腫瘍の大きさを小さくしたりすることが可能となる。放射線を用いて、口腔癌、食道癌、呼吸器系癌、女性生殖系癌、精巣腫瘍および脳腫瘍など、数多くの癌並びにリンパ腫の治療を行う。放射線療法は、単独でまたは、化学療法、ホルモン療法もしくは外科手術など、他の癌治療法と併用して用いられる場合もある。

これらの癌治療法は有効ではあるが、発癌物質つまり癌誘発剤として作用することがある。治療を行うことによって、最初の治療から何年も経過した後でも、癌克服者の二次癌発生リスク増大の原因となる可能性がある。しかしながら、ほとんどの症例において、治療効果が治療によって誘発される二次癌リスクを大幅に上回っている点、また治療の長期に及ぶ有害な影響がより明らかになっているのは多数の癌治療に成功しているからにすぎない点を重視することが大切である。

放射線に関連する固形癌
疫学的研究から、放射線療法における電離放射線はある種の二次癌リスクを高める原因となることが明らかにされている。個々の放射線に関連した、もしくは放射線誘発による二次癌リスクは照射される放射線の種類および線量、身体の治療範囲(照射野)、身体の照射部分および本来備わっている組織感受性、並びに照射時の年齢といった、重要で、しばしば相互依存的な因子に依存する。

放射線被曝の影響に対する感受性は、個々の臓器および臓器系によって異なる。前立腺のように比較的放射線に耐性のある臓器もあれば、放射線に感受性が高いとされている臓器もある。日本の原爆被爆者および放射線治療を受けている患者を含む放射線被曝集団に関する複数の疫学的研究では、乳房、甲状腺、および肺は特に放射線の発癌効果に対して感受性が高いことが示されている。放射線に関連する固形癌は、最初の放射線被曝から少なくとも5年、10年、もしくは20年経過するまで発見されないことがよくある。これほど長い潜伏期(被曝から癌診断までの期間)は、大量の放射線被曝を受けた元癌患者の長期に及ぶ監視の必要性を指摘するものである。遺伝的感受性などのその他の因子も、放射線誘発固形癌が発現するまでの期間に影響を及ぼす可能性がある。

放射線被曝時の年齢もまた、放射線誘発癌の強力な因子である。放射線感受性は、小児の組織で特に著しい。「小児は成長の過程にあります。急速に成長している間には、より多くの細胞回転が起こることから、長期にわたると遺伝子変化が誘発される可能性が多くなると考えられます」と説明するのは、NCIの(癌疫学および遺伝学部門:DCEG)の 遺伝疫学科主任であるMargaret A. Tucker医師である。治療時の年齢からして、元小児癌患児が後年になって他の癌になるリスクは特に高い。「幼年時に癌を克服した人々は、年長で癌を克服した成人よりもはるかに長く生存します。ですから、放射線関連の合併症が発症するまでの長い時間があるのです」と同氏は続けた。小児癌の治療に用いられる放射線治療は、甲状腺、乳房、骨格、および脳が大量の放射線量を被曝する場合、これらの領域で後に癌が発症するリスクの増加に関連する。頭蓋照射を受けた元小児癌患児が後年になって脳腫瘍を発症する可能性も放射線療法時の年齢に関係しており、5歳以前に治療を受けた小児癌生存者のリスクが最も高くなっている。

青年および若年成人にも特に放射線の晩期障害が現れやすい。ホジキンリンパ腫の治療を受けた女性患者の大規模調査で、最も多く診断された固形腫瘍は乳癌であり、30歳もしくはそれ以前に治療を受けた女性のリスクが著しく高くなっていた。これらのリスクは一般的に、胸部への高線量、大照射野によって生じる。「放射線療法および化学療法の両療法が果たす役割を詳細に調査したその後の大規模な国際的調査では、後に癌が診断される乳房領域への放射線量が増すにつれて乳癌のリスクが著しく増加することが分かりました」と、DCEGの放射線疫学科の幹部調査官であるLois B. Travis医師は語った。「逆に、化学療法のサイクル数が増加するにつれて乳癌のリスクは著しく減少していました」と同氏は続けた。「乳癌リスクの低下は、治療後に閉経する女性の割合とほぼ並行していました。」化学療法のこのような予防効果は、恐らく、治療に関連する卵巣の障害によって起こるホルモン産生の低下を反映するものであり、それはさらに治療の晩期障害を判断する複雑さを例示している。

成人では、放射線に関連する癌のリスクは特定の癌で増加することが認められている。例えば、乳癌に対する最初の放射線療法後、肺と食道における癌、肉腫のリスクを増やすことが認められ、また子宮頸癌に対する高線量の放射線療法は、胃、直腸、骨格、膀胱およびその他の部位におけるその後の癌発症リスクの上昇に関連する。

まれな遺伝性遺伝子変異を持つ患者の中には、放射線療法後に二次癌にかかりやすくなる患者もいる。研究者らは、Rb-1癌抑制遺伝子の遺伝性変異によって小児に発生するまれな眼球の癌である遺伝性網膜芽細胞腫の元患児において、特に放射線療法後に、骨格および軟部組織の肉腫が発症するリスクが高いことを明らかにした。遺伝性変異のない網膜芽細胞腫の元患児においては、二次癌を発症するリスクは高くない。

 

放射線に関連する白血病
一般的には化学療法との関連のほうが強いが、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病など、いくつかの種類の白血病は放射線による癌治療後に発症することがある。放射線誘発白血病は被曝後の早い時期に、早ければ治療後2年ほどで、発見されることがあるが、リスクの増加は主として照射後5〜9年の間でピークを迎えその後は緩やかに減少する。骨髄への放射線量および被曝した骨髄の割合を含む、複数の因子がリスクに影響を及ぼすと考えられている。癌患者に関する研究から、白血病のリスクは、骨髄の高線量の放射線被曝後、恐らく骨髄細胞の破壊つまり「細胞致死」効果のためと思われるが、横ばい状態になるかもしくは減少さえする可能性があることが分かっている。対照的に、精巣癌生存者に関する研究では、骨髄の大きな体積が被曝する原因となる胸部、腹部-骨盤への高線量放射線治療に関連して白血病を発症するかなり高いリスクが報告されている。

将来への期待
放射線に関連する二次癌は、明確に発癌性を有することが知られている線量による被曝後の癌の発生を研究するまたとない機会を提供している。癌生存者の長期間に及ぶ研究では、最初の癌治療で照射された放射線量と新たな癌を発症するリスクの間の関連性が数値化されている。小児および若年成人の研究から、多くの固形腫瘍に関して、放射線に関連する癌の発症率は放射線量が増すにつれて増加する傾向にあることが提示されている。この研究結果を受けて、研究者らは、治療効果を維持しながら、固形腫瘍の長期に及ぶリスクを低下するために放射線量を減らす方法を模索している。放射線治療の技術が進歩するにつれて医師の技術も向上し、照射する放射線量を最小限に抑えるように治療戦略を調整すること、そして健康な組織を避けながら腫瘍位置を正確に特定するように放射線治療を慎重に進めることができるようになっている。

さらに医学者が発癌について多くを学ぶにつれ、特定の治療で最も効果を得ると思われる患者、並びに放射線療法およびその他の治療法での晩期障害に影響を及ぼすような共通の遺伝的変異を特定する助けとなるバイオマーカーの開発の可能性が大きくなるであろう。将来は、これらの技術によって、医師が放射線療法に関連する二次癌のリスクを軽減する治療計画を個別に立てることができるようになるかもしれない。「遺伝的に癌治療の晩期合併症を起こしやすい患者を予め特定することによって、治療上の効果を最大にするだけでなく、二次癌を含むすべての種類の重篤な晩期毒性を最小限に抑える治療を個別化する機会がもたらされることになります」とTravis氏は言及する。

豊 訳
平 栄(放射線腫瘍医) 監修

 

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