乳癌の標的療法に関する新規試験が世界規模の臨床試験モデルを確立 | 海外がん医療情報リファレンス

乳癌の標的療法に関する新規試験が世界規模の臨床試験モデルを確立

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

乳癌の標的療法に関する新規試験が世界規模の臨床試験モデルを確立

NCIニュース 2008年2月29日

悪性度の高い乳癌の治療のために設計された2つの標的療法についての新規試験が、6大陸50カ国で8,000人を対象に実施されている。試験担当者らは、この臨床試験により国際的な癌研究の新たなモデルを提供したいと願っている。この試験はALTTO(Adjuvant Lapatinib and/or Trastuzumab Treatment Optimization study、ラパチニブおよびトラスツズマブの単独または併用アジュバント療法の最適化試験)と呼ばれ、初の世界的イニシアチブの一つになるとみられる。このイニシアチブのもとに、世界の様々な地域にわたる大規模な2つの学術的乳癌研究ネットワークが共同し、患者がどこで治療を受けたかにかかわらず治療とデータ収集を全て標準化した試験を開発した。

このネットワークとは、米国のTBCI (The Breast Cancer Intergroup of North America)と、ベルギーのブリュッセルにあるBIG(the Breast International Group)である。TBCIは米国癌研究所(NCI)が資金援助する6つの臨床試験協力団体からなる。NCIは米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である。

ALTTOが設計された目的は、2つの汎用癌治療薬の使用について、どちらがより効果があり安全性が高いか、またベネフィットについては両剤の単独投与、連続投与、同時投与の場合でどうかといった、最緊急課題に対応することにある。本臨床試験は、薬剤の有効性を示す確固たる手段とされるランダム化第3相試験として実施された。

ALTTOで試験される両剤は、HER2陽性腫瘍を治療するためにデザインされている。このHER2陽性腫瘍は非常に悪性度の強い癌であり、乳癌患者の約20〜25パーセントを占めている。トラスツズマブ(ハーセプチン[Herceptin])とラパチニブ(タイカーブ [Tykerb])はともに、HER2陽性乳癌治療の使用に米国食品薬品局(FDA)からすでに承認されている。ALTTOは、最も早期で治療可能な段階の癌に対して、トラスツズマブとラパチニブを初めて直接比較した試験になるとみられる。また同試験は、早期乳癌治療においてラパチニブの有効性を評価する初の大規模試験のひとつになるとみられる。

HER2陽性乳癌は、HER2遺伝子が過剰となり、言い換えるとそのタンパク質である細胞表面受容体のHER2が過剰に産生されて引き起こされる。トラスツズマブは大型の抗体からなり、投与すると癌細胞外面に現れているHER2タンパクの一片をしっかりと覆い、一方ラパチニブは癌細胞に入り込み細胞表内面下からHER2タンパクに部分的に結合し、作用する。

ALTTO試験の独自な点は、ステージIまたはⅡの乳癌患者がすでに化学療法を受けているか否かにより、2種類に分けてデザインされていることである。したがって本試験では標的療法のレジメン4種類を、52週間投与し比較することになる。患者らは、トラスツズマブまたはラパチニブの単独投与、トラスツズマブ投与後にラパチニブ投与、または両剤の併用療法のいずれかに無作為に割り付けられる。

「早期乳癌患者の管理は過去数年間で大幅に向上しました。そうした知見に基づくこの新規試験は、科学の進歩や友好的国際協力に象徴される新時代の模範となるものです。」と癌専門医であるEdith Perez医師博士(メイヨークリニック(フロリダ州ジャクソンビル)内、North Central Cancer Treatment Group(NCCTG))は述べている。Perez氏博士はTBCIでの試験主導者である。「HER2陽性乳癌に対して作用の仕方が異なる2つの治療法を用いれば、単剤よりも強力で相互補完的な方法になると考えられます。」

ALTTOは、研究室内から臨床現場への応用を図るための橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)が重要な役割を果たした、初めての試験の1つとなるであろう、と試験担当者らは言う。ALTTOでは、薬剤が最も奏効する腫瘍プロファイルを決定するために、生体試料が採取されることになる。そこで得られる情報は患者個人に合わせた治療につながるものとみられ、あるいは次世代の薬剤開発の可能性も見込まれる。

「本試験がこれまでの多くの試験と異なる点は、試験終了後ではなく、試験実施中に生体試料物質が採取されることです。そのような試験に進んで投資をする企業や組織は、例外はありますが、以前は多くはありませんでした。」とMartine J Piccart医学博士(the Université Libre de Bruxelles(ベルギー)腫瘍学教授、BIG(1996年同氏により設立)主任試験責任医師)は述べている。「各患者にとって最善の治療を提供するために、強力な薬剤を使用した療法を最適化するチャンスを、われわれはついに手にしたのです。」

Perez氏およびPiccart氏は、ALTTO試験開発チームの主導に携わっており、本試験の共同試験統括者となるとみられる。両氏博士はBIGとTBCIを代表し、主任試験責任者として長年にわたり共同臨床試験に向けて取り組んできた。両氏博士によれば、ALTTO試験はBIGとTBCIの高度なシステムを融合させた新たな模範となるもので、世界の多くの女性に可能な限り有効な最新の乳癌治療を試験することを目的としている。

「メイヨークリニック、TBCI、およびBIGが取り組んでいる研究のおかげで、様々な種類の乳癌の根底にある複雑な機序への理解を深めることができ、NCIはこの研究を高く評価しています。」とNCI臨床試験部の試験責任医師であるJo Anne Zujewski医師は述べている。「この国際的協力モデルは、今後私達が確立できるものであることを願っています。」

ラパチニブは、進行性または転移性のHER2陽性乳癌治療のために、アントラサイクリン、タキサン、ハーセプチンの3剤の投与歴がある患者に対し、化学療法剤カペシタビンとの併用で、2007年3月にFDAから承認を受けた。グラクソ・スミスクライン社(GSK)は、ALTTO試験に追加的資金援助を行うとともに、試験薬も提供している。全ての薬剤には副作用のおそれがあり、ラパチニブとトラスツズマブの副作用に関する詳細は、http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/ALTTOQandAのQ&Aにて閲覧可能。NCIとGSKによる意見はALTTOに反映されている。

NCCTGは北米でのALTTOの治療拠点になるとみられる。BIGは米国を除く世界の41の研究グループからなるネットワークである。ブリュッセルのBIG内BrEASTデータセンターでは、世界規模の研究(米国を含む)のために集中してデータを管理している。TBCIの他のメンバーは以下のとおりである。the Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG), the Cancer and Leukemia Group B (CALGB), the Southwest Oncology Group (SWOG), the American College of Surgeons Oncology Group (ACOSOG), and the National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group (NCIC CTG)。

現在までに世界の300を超える施設で患者がALTTOに登録済である。登録が定員に達すれば米国で約500施設、ヨーロッパその他の地域で800施設を超えるとみられる。ALTTO参加施設の全リストは、http://www.cancer.gov/clinicaltrials/EGF106708でALTTOを検索し閲覧可能。

*****
Chachan 訳
大藪友利子(生物工学)

******


原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward