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メラノーマワクチン療法が奏効率および無増悪生存期間を改善/MDアンダーソンがんセンター

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メラノーマワクチン療法が奏効率および無増悪生存期間を改善/MDアンダーソンがんセンター

奏効率を向上させる初の癌ワクチン
MDアンダーソンがんセンター
2011年6月1日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびインディアナ大学 Health Goshen Center for Cancer Careの科学者らの主導による研究によると、最も致命的な癌のひとつである進行性メラノーマに対し、ワクチンと免疫療法薬のインターロイキン2を併用した場合、奏効率および無増悪生存期間の改善が認められた。

New England Journal of Medicine誌6月2日号に発表された本知見は、同疾患に対する無作為化第3相臨床試験において、臨床的有用性を示した初のワクチン試験であり、癌領域全体のなかでも初めての研究である。また奏効率の改善を示した初の癌ワクチンでもある。

本研究は、2009年米国臨床腫瘍学会(ASCO)のプレナリーセッションで初めて発表された。

米国癌協会によれば、癌全体のなかでメラノーマは最も急速に発生率が上昇している癌のひとつである。2010年米国において、メラノーマと診断された患者は68,130人を超え、8,700人が同疾患で死亡した。5年生存率は、局所性病変が65%、転移性疾患病変では16%である。

「進行期において、さらに効果的な治療法が必要であることは言うまでもない」と本研究の統括著者であるメラノーマ腫瘍内科教授兼部長Patrick Hwu医師は述べた。「本研究によって、メラノーマおよび癌治療全体においてワクチンが果たす役割に対する原理の裏付けが得られた。腫瘍細胞を攻撃する体内防御システムを利用することができれば、正常な組織に損傷を与えることなく癌を体内からなくすメカニズムを得られる。」

米国国立癌研究所(NCI)での在任期間において、Goshen Center for Cancer CareのメディカルディレクターであるHwu医師とDouglas Schwartzentruber医師は、本ワクチンの開発、基礎研究および臨床試験に携わった。gp100:209-217 (200M)の名でも知られる本ペプチドワクチンは、免疫反応を制御するT細胞を刺激することによって効果を発揮する。

「本ワクチンは、患者の細胞傷害性T細胞を活性化し、腫瘍細胞の表面に存在する抗原を認識させる。その後、そのT細胞は、腫瘍細胞膜に孔を開ける酵素群を分泌し腫瘍細胞を崩壊させる。」と本試験の責任著者で試験責任医師であるSchwartzentruber医師は説明する。

本ワクチンとインターロイキン2(IL-2)を併用したNCI主導の第2相試験で、転移性メラノーマ患者において42%の奏効率が認められ、10年以上前に同併用を用いた第3相試験へと移行した。

しかしIL-2を用いた大規模多施設共同試験には、独特の課題や条件があり、すべての癌センターおよび地域病院において、本免疫療法が実施可能な状況ではないとHwu医師は説明する。IL-2の投与は、高度な専門治療であり、低血圧や毛細血管漏出症候群などの心肺に対するリスクをもたらす重大な副作用を伴うため、集中治療室で投与されることが多い。 MDアンダーソン(以前に同施設内ICUで免疫療法の実施を提案)は、この薬剤投与のために設計された専用の入院患者ユニットを備える数少ない治療施設のひとつである。

第3相試験においては、全米の21施設で患者185人を本試験に登録した。対象患者はいずれも進行転移性メラノーマであり、IL-2に対する反応性の指標とされる皮膚転移により患者を層別化した。高用量IL-2単独投与群、またはIL-2とワクチン併用投与群のいずれかに無作為に割り付けた。IL-2単独投与群では、登録患者94人のうち、93人に治療および奏効の評価を実施し、IL-2とワクチン併用投与群では、登録患者91人のうち、86人に治療を行い、85人に奏効の評価を実施した。本試験の主要評価項目に臨床的奏効を、副次的評価項目に毒性作用および無増悪生存期間を設定した。

本試験のワクチン併用群において、16%の奏効率と、2.2カ月の無増悪生存期間が認められ、これに対して、IL-2単独投与群では、それぞれ6%と1.6カ月であった。本試験では、全生存期間の検討に力点を置くことはなかったものの、ワクチン併用群で良好な傾向が認められた(17.8カ月対11.1カ月)。

「本試験は、癌領域における初めての有効性が示されたワクチンの無作為化試験のひとつであり、この試験結果は、進行性メラノーマ治療に対する大きな前進を示すものである。」とSchwartzentruber医師は言及する。「しかし、本ワクチンは、患者の組織型やHLAの適合が必要であるために、対象メラノーマ患者の半数に投与するにとどまった。重要な優先課題としてわれわれは、適格患者を増やすために、混合ペプチドの使用など幅広いアプローチの方法を模索していく必要がある。」

研究者らは、新規のワクチンアジュバントをはじめ、サイトカイン類および免疫細胞をさらに活性化させる抗体などの別の免疫刺激剤を用いて治療成績の向上を試みる予定である。

「この研究によってメラノーマの分野は、胸を躍らせるような活気のある時代となる。この数年間に、BRAFを標的とするような標的治療や免疫システムを刺激する治療などが加わることにより、情勢全体が変化してきた。しかしながらこれらの薬剤は、依然として少数の患者のみに効果が認められ、耐性の発現も多い。」とHwu医師は見解を述べた。「現在は、一連の新規治療法の併用法を検討する方向に焦点を当て、より多くの転移性メラノーマ患者を対象とする試験の研究を行うと同時に、さらなる有効なワクチンの模索を継続していく必要がある。

本研究は、米国国立癌研究所から一部資金援助を受けた。

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酒井 伸茂 訳
田中 謙太郎 (呼吸器・腫瘍内科、免疫/
テキサス大学MDアンダーソンがんセンター免疫学部門) 監修
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原文

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