遺伝子治療法が腫瘍の血管破壊に有望であることが、マウス実験で明らかになった | 海外がん医療情報リファレンス

遺伝子治療法が腫瘍の血管破壊に有望であることが、マウス実験で明らかになった

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

遺伝子治療法が腫瘍の血管破壊に有望であることが、マウス実験で明らかになった

NCIニュース 
2008年12月17日

癌研究者らは、マウスの腫瘍の血管に特異的に治療遺伝子を導入するという新たな手法の開発について報告した。遺伝子が生成するタンパクは、いったん導入されると、血管を損傷して腫瘍への血流を阻害するが、周辺組織の血流には影響しない。この手法は、腫瘍へタンパク質を送り込む他の手法よりも安全で副作用も少ない可能性があるため、これらのモデル実験の結果は前途有望なものである。本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である国立癌研究所(NCI)と、ヒューストンのM.D.アンダーソンがんセンターによって行われており、2008年12月17日にインターネット上で発表され、2009年1月1日号のCancer誌で誌上発表される。[pagebreak]血管は、腫瘍が成長および身体の他部位へ転移するのに必要な酸素と栄養分を供給している。腫瘍壊死因子アルファ(TNF-a)は免疫細胞によって作られるタンパク質で、血管を損傷することで腫瘍の成長を阻害することが証明されている。TNF-aは非癌組織の血管も損傷するため、血流を通しての全身投与は深刻な副作用を起こしうる。

現在TNF-aを用いての治療は、患者の四肢や臓器の黒色腫や肉腫に対し、その四肢や臓器へ供給を行っている血管を分離して行われている。この治療方法では局所的な毒性は現れるものの、全身への毒性は非常に少ない。NCIの癌研究センターのSteven K. Libutti医師とAnita Tandle博士が中心となり、共同研究者としてM.D.アンダーソンのRenata Pasqualini博士とWadih Arap医師で構成された研究チームでは、体内の腫瘍のほとんどがこの方法を使えない部位に存在することから、TNF-aを腫瘍の血管を標的として送り込み、非癌組織への損傷を回避する新たな遺伝子治療法を開発した。

遺伝子治療では、標的となる細胞や組織に遺伝子を運ぶためにベクターが用いられる。一度遺伝子が導入されるとスイッチが入る、あるいは発現し、タンパク質が生成される。彼らの研究では、アデノ随伴ウィルスファージベクター(AAVP)として知られるベクターが、マウスのヒト黒色腫の血管に、TNF-a遺伝子を効果的に導入することがわかった。AAVPは、通常細菌にしか感染しないバクテリオファージと呼ばれる細菌ウィルスと、ヒトと他のいくつかの種の霊長類に感染するアデノ随伴ウィルスの複合型ベクターである。バクテリオファージベースのベクターは、ヒトへの導入の安全性が古くから確認されている。バクテリオファージは、その表面のタンパク質の発現を置き換えることで、特定の哺乳類の細胞、すなわち腫瘍の血管の細胞を狙って感染するよう設計されている。
アデノ随伴ウィルスによる構成要素は、遺伝子の導入を向上させる。

TNF-a遺伝子を組み込んだAAVPベクターが腫瘍を持つマウスの尾静脈に注射された4日後、ヒト腫瘍組織でTNF-aが検出された。本研究中に腫瘍は小さくなり、血管の数は減少したが、これは腫瘍血管系、つまり腫瘍に血液を供給する血管ネットワーク損傷の兆候である。心臓、肺、腎臓、骨格筋、脳組織を含むマウスの非癌組織において、TNF-aあるいは標的化ベクターは検出されなかった。肝臓と脾臓ではベクターは見つかったが、TNF-a遺伝子は発現していなかった。

「TNF-aは有望な抗癌剤だが、その毒性ゆえに使用方法が限られている」と、Tandle氏は述べた。「私たちの研究結果によって、AAVPのような複合型ベクターは、他組織への毒性は最小限にし、TNF-aを腫瘍へと直接運ぶよう標的化するのが可能であることが示された。さらに、このベクターは、腫瘍の血管を標的とする他の薬剤でも使用できる可能性がある。」

Libutti氏とTabdle氏のチームでは、自然発生癌(つまり、移植された癌に対して、自然にできる癌のこと)の動物モデルでAAVPベクターの検証を行っている.これにより、臨床試験における本治療法戦略の査定に向けて、進捗を早めることができる。

###

Tandle A, Hanna E, Lorang D, Hajitou A, Moya CA, Pasqualini R, Arap W, Adem A, Starker E, Hewitt S, and Libutti SK. Cancer, Volume 114, Issue 1.
比較腫瘍学試験コンソーシアム(Comparative Oncology Trials Consortium)についてのより詳しい情報はこちら http://ccr.cancer.gov/resources/cop/COTC.asp.
Libutti医師の研究についてのより詳しい情報はこちら http://ccr.cancer.gov/staff/staff.asp?profileid=5759.

NCIは国家癌プログラムとNIHを先導し、癌予防および癌生物学の研究、新たな診療の開発、新人の研究者の研修・指導を通して、劇的に癌の負担を軽減し癌患者とその家族の生活向上のために尽力しています。癌についてのさらなる情報は、NCIウェブサイトhttp://www.cancer.gov を閲覧いただくか、またはNCI癌情報サービス1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)までお電話ください。

*****
水向絢子 訳
中村光宏(医学放射線)

******


原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3卵巣がんの起源部位は卵管であることが示唆される
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  6. 6がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10がん治療の悪心・嘔吐管理に関するASCOガイドライン...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward