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米国のスクリーニング試験から、年1回の前立腺癌スクリーニングに早期死亡率改善の有益性がないことが示される

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米国のスクリーニング試験から、年1回の前立腺癌スクリーニングに早期死亡率改善の有益性がないことが示される

NCIニュース 2009年03月18日

NCI主導の17年間に渡るプロジェクトである、前立腺癌・肺癌・大腸癌および卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験の主要な最新報告によると、6年間に渡り年1度の前立腺癌スクリーニングを受けることにより、同疾患の診断数は増加したが、死亡数の減少は認められなかった。PLCOは前立腺癌のスクリーニングの有効性を検討するためにデザインされた試験である。


米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)の一機関である米国国立癌研究所(NCI)の17年にわたるプロジェクト、前立腺癌・肺癌・大腸癌および卵巣癌(PLCO)スクリーニング試験の主要な最新報告によると、6回にわたる前立腺癌の年1回のスクリーニングの結果、より多くの疾患の診断につながったが、前立腺癌の死亡数の減少にはつながらなかったことが分かった。PLCOは前立腺癌スクリーニングの有効性について答えを出すようにデザインされていた。

「この報告で分かることは、前立腺癌と診断され、勃起不全、尿失禁など治療の副作用があり、ほとんど利益を得られない男性がいるかもしれないということである。」 とNCIのディレクターであるJohn E. Niederhuber, M.D.氏は言った。「明らかに、最も早期ステージで前立腺癌を発見するより良い方法と同様にどの腫瘍が進行するものなのか判定できる方法が必要である。私たちが現在出資している数多くの分子研究がうまくいけば、どの男性に治療が必要なのか、あるいは経過観察を考慮できるのかを明確に分類する為の新しいより良い方法を作成できるだろう。新しい方法を開発し、その利益と不利益を検証するまでは、PLCOで行ったように定期的に医者に通い、健康状態を観察することが強く推奨される。」

試験の結果は、スウェーデンのストックホルムで開催されたヨーロッパ泌尿器科学会での発表に合わせて2009年3月18日のNew England Journal of Medicine電子版に発表され、印刷版は2009年3月26日版に掲載される。

NCIでは前立腺癌スクリーニングを推奨していない。その推奨が臨床予防医療サービスのゴールドスタンダードとされている米国予防医療サービス専門作業部会(U.S. Preventive Services Task Force)は最近75歳未満の男性への前立腺癌スクリーニングの利益と不利益のバランスを評価するエビデンスが不十分であるとし、75歳以上の男性に対しての前立腺癌スクリーニングに対しては反対する立場をとっている。

PLCO試験では76,693人の男性が参加し、米国内の10施設で実施された。試験に参加した男性のうち、38,343人がランダムに年1回の前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)テストを計6回、直腸診(DRE)を計4回受けるよう割り当てられた。DREは医師が直腸に潤滑させたグローブをはめた指を入れ、正常でないものがないか触診するテストである。その他の38,350人の男性は通常ケアにランダムに割り当てられ、年1回の前立腺癌スクリーニングに関しては推奨も反対もされなかった。

年1回のスクリーニングを受けた男性の85%はPSAテストを受け、86%はDREを受けた。通常ケア治療群においても、スクリーニングに対する一般の需要が高まったため、これらのテストを受けた男性もいた。通常ケア群でのPSAスクリーニングは試験当初の40%からスクリーニング実施最後の年には52%に増加し、DREは41%から46%に増加した。スクリーニング群の男性はPSAレベルが4.0ng/mLより高かった場合やDREで異常が見つかった場合は、前立腺癌のフォローアップのテストの為、患者のかかりつけの医療機関に紹介された。

このレポートには全ての被験者における試験参加後7年間のデータと参加者の67%に対する試験参加後10年間のデータが含まれている。そのほかの重要な結果は以下のとおりである:
・ 7年の時点で、でスクリーニング群では前立腺癌と診断された者は22%多かった。(通常ケア群が2,322人だったのに対して2,820人だった。)この差は10年間までで集積されたデータでも観察され続けた(現在は17%多く、2,974人に対して3,452人)。

・ 両群とも、前立腺癌を発症した患者の大多数が比較的早期のステージⅡ(ステージⅣが最終ステージ)で診断されており、より遅いステージで診断された人数はどちらの群にも差がなかった。しかし、腫瘍の侵襲性を評価するグリーソンスコアを使うと通常ケア群の男性は、侵襲性が高いとされるグリーソンスコア8から10までの前立腺癌がより多かった。介入群でのグリーソンスコア8から10の前立腺癌患者数が少ないことは、最終的に両群間での死亡率の違いとなる可能性があるが、今のところ分析されたデータではそのような差は示されていない。

・ 前立腺癌の同じステージと診断された両群の男性は同様の治療を受けた。これは特定の治療を指示しないというPLCO試験のデザイン方針によるものである。

・ 7年間でスクリーニング群では前立腺癌による死亡例が50例あり、通常ケア群では44例であった。10年間では、スクリーニング群には前立腺癌による死亡例が92例、通常ケア群では82例であった。両群間の死亡数の差は統計的に有意ではなかった。したがって、通常ケアと比べてスクリーニングには死亡率の改善に有益性はなかった。

PSAテストの死亡率の改善の利益についての不確実性を受けて、NCIは新しい前立腺癌のスクリーニング方法を見つけるため多くの手段を追求している。その中には、Early Detection Research Network (EDRN)で評価されている複数のバイオマーカーがあり、そのいくつかはPLCOの組織や血液のバイオレポジトリーからの検体を使用している。バイオマーカーの例としてはRNAのマイクロストランドを使って疾患を発見したり、GSTP1のような遺伝子の変化を調べたり、前立腺癌組織中のタンパク質を画像化したりすることなどがある。

「NCIは、なぜ前立腺癌のなかには年1回のスクリーニングで早期に発見されたとしても死亡に至るものがあり、効果的に治療をうけることができる時点でこういった侵襲性の高い癌を特定するためにどのような手段がとれるのかを知りたいのです。」とPLCO試験のNCIリーダーであり、この試験の筆頭著者であるChristine Berg, M.D.氏は言う。「PLCOのバイオレポジトリーは、そのような研究にとってとても貴重な資料で、被験者から集めた約300万人分の生物学的試料がある。我々はPLCOの全ての側面から、どの患者を積極的に治療すべきで、どの患者を過剰治療しないようにすべきか、判断させてくれる情報を集めたいと思っている」

同NEJM電子版には、ヨーロッパで実施された前立腺癌の大規模無作為スクリーニング試験(ERSPC)の結果も掲載され、それによると前立腺癌による死亡率は20%低下したが、同時に過剰診断のリスクも高かった。ERSPCではPLCOとは違い、PSA値が3.0ng/mL以上の男性患者に対しフォローアップテストの紹介を行い、スクリーニングもPLCOの年1回に対し平均4年に1回行った。

「PSAの異常値とされる閾値を3.0ng/mLに下げることにより、より多くの患者が前立腺癌と診断されることになるが、それが死亡につながる可能性の高い前立腺癌を特定しているかどうかは全くわからない」とBerg氏は言う。

6ヶ月毎に開かれる独立した審査委員会であるデータ安全性監視委員会(Data Safety and Monitoring Board (DSMB))がスクリーニングが前立腺癌による死亡を減少させるというエビデンスが継続的に不足していることと、スクリーニングにより不必要に男性が治療を受けることになる可能性があると示唆したため、PLCOのデータは現在公表されている。またDSMBは、試験参加から少なくとも13年間、全ての被験者が追跡できるようにフォローアップを続けるよう支援している。

PLCOは、NCIの癌予防部門(Division of Cancer Prevention)が出資し、実施している大規模臨床試験であり、特定の癌スクリーニング試験が前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、卵巣癌による死亡を減少させる手助けになり得るかどうか判断するため1992年に開始された。試験の理論的根拠は、癌に対するスクリーニングにより医師が疾患を早期に発見、治療することが出来るようになる可能性があることにある。

55歳から74歳までの約155,000人の男女がPLCO試験に参加した。被験者は登録時にランダムに2群に割り当てられた。1つの群はかかりつけ医からの通常のケアを受けた。もう1つの群は前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、卵巣癌に対する一連のスクリーニングテストを受けた。被験者のスクリーニングは2006年後半に終了した。被験者のフォローアップはあと数年続くと見られる。

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2009年3月17日(火)12:00pm(EDT)に視聴者参加型テレビ会議が行われ、この結果から推測されることを議論し、これらの結果についての報道記者からの質問に答えた。このテレビ会議の様子はMP3で入手可能。再生ファイルのコピーについては、電話 (301) 496-6641、または電子メールncipressofficers@mail.nih.gov にてNCI広報に連絡下さい。

PLCOからの前立腺癌スクリーニング結果についてのQ&Aは以下のサイトを参照のこと。[url=http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/PLCOprostateResultsQandA]http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/PLCOprostateResultsQandA[/url].

最新の前立腺癌の治療に関するNCIのBenchMarks最新号については以下のURLにて入手可能。[url=http://www.cancer.gov/newscenter/benchmarks-vol8-issue1]http://www.cancer.gov/newscenter/benchmarks-vol8-issue1[/url].

Andriole GL, Grubb RL, Buys SS, Chia D, Church TR, Fouad MN, Gelmann EP, Kvale PA, Reding DJ, Weissfeld JL, Yokochi LA, Crawford ED, O’Brien B, Clapp JD, Rathmell JM, Riley TL, Hayes RB, Kramer BS, Izmirlian G, Miller AB, Pinsky PF, Prorok PC, Gohagan JK, and Berg CD. Mortality Results from a Prostate-Cancer Screening Trial. Online March 18, 2009. In print, March 26, 2009. Vol. 360, No. 13. NEJM.

NCIは予防や癌生物学の研究、新たな治療法の開発、新たな研究者の育成や指導を通じて癌による負担を大幅に軽減し、癌患者やその家族の生活を改善するための国家癌プログラムやNIHの取り組みを統率している。癌についての詳細はNCIのウェブサイト(http://www.cancer.gov)を参照または、NCI癌情報サービス1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)へ連絡のこと。

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平川 麻衣子 訳
榎本 裕(泌尿器科)監修

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原文

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