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乳癌リスク増大のおそれのある遺伝的多様性を研究者らが確認

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乳癌リスク増大のおそれのある遺伝的多様性を研究者らが確認

NCIニュース 2009年3月29日

散発性乳癌のリスクに関連するおそれのある新たな遺伝的多様性が、1番染色体と14番染色体の2つのDNA領域で、研究者らにより確認された。また、特定のゲノム領域と乳癌リスクとの関連が過去に確認されているが、その一部についても本研究により立証されている。この発見は、米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らを含む、癌感応遺伝マーカー(CGEMS)チームにより報告された。本研究は、Nature Genetics誌2009年3月29日号電子版に掲載されている。

ヒトのほとんど全ての細胞には46の染色体があり、父母から半分ずつ受け継いだひも状のDNAがしっかりと詰まっている。ヒトのDNAはその99%超が同一である一方で、残りの一部のDNAは個人により異なり、疾患リスクに関して重要な役割を果たしている可能性がある。最もよく見られる多様性は一塩基多型(SNP)と呼ばれ、DNAのたった一つの構成単位に影響している。SNPは、疾患に関連する染色体領域を同定するゲノムワイド関連解析の研究に利用されている。

「CGEMSの調査では疾患を持つ人、持たない人、両方を対象とした大規模研究により、乳癌に関連するSNPの多様性について強力な指標を提供することができます。」とStephen Chanock医師(NCIの遺伝子解析中核施設(Core Genotyping Facility)所長で癌遺伝子学・疫学部門(DCEG)のゲノム翻訳研究室主任)は述べている。「われわれの研究で確認された2つの新たな領域によって、乳癌発症の一因となる新たな経路を調査する可能性が大きく切り開かれるのです。同様に、こうした遺伝的多様性が一因である生態を深く理解することは、将来、乳癌の治療や予防への新たなアプローチにつながる可能性があるのです。」

「乳癌は複雑な病気であり、重要なことは、多様な遺伝的変化がリスクと予後の予測に関わるであろうと認識し、これを治療へとつなげることです。次の重要なステップは、さらに研究を進め、このリスクの関連性を使い、特定の遺伝的欠陥を生物学的機能変化と結びつけることです。」とNCI所長であるJohn E.Niederhuber医師は言う。「遺伝的経路の変化を理解することで、遺伝的多様性とリスクについての知見を、薬剤開発のための新たなターゲットに利用することが将来可能になり、乳癌を予防し管理する能力が強化されるでしょう。」

1番染色体に確認された領域にはrs11249433SNPがあった。このSNPの機能は分かっていないが、CGEMSチームのその後の分析により、この領域が主に、最も多い乳癌のサブタイプであるエストロゲン受容体陽性乳癌に関連していることが明らかになった。

14番染色体に新たに確認された領域はrs999737を含み、以前乳癌リスクに関与するとされた経路にあるRAD51L1という興味深い遺伝子の近くに位置する。この遺伝子がコードするタンパク質は、DNA修復およびDNA鎖間の物質交換に関わる他の遺伝子のタンパク質と直接相互作用する。

また、この他に2番、5番、8番、10番、16番染色体に位置する6つのゲノム領域が乳癌リスクに関連するという過去の報告についても立証された。さらにこの領域を研究していけば乳癌発症の一因と思われる機序の確認に役立つと考えられる。

「乳癌リスクを高める数個の遺伝子については10年以上前から分かっていました。」とChanock医師は言う。「しかし、CGEMSのような研究によって、乳癌リスクの一因となるゲノム領域をリストに追加しているのです。」

CGEMSの共同主導者はChanock医師の他、以下のとおり。Joseph Fraumeni Jr., M.D.; Gilles Thomas, M.D., Ph.D.; and Robert Hoover, M.D., Sc.D., also of NCI’s DCEG; Daniela Gerhard, Ph.D., of NCI’s Office of Cancer Genomics; and David Hunter, M.D., Sc.D., from the Harvard School of Public Health, Boston, Mass. CGEMSプロジェクトは、NCIおよびその他数ヶ所の研究所の疫学専門家、バイオ統計学専門家、ゲノム専門家らの協力に支えられ、NCI助成金から援助を受け成功を収めている。NCIは共同で、NCI支援による乳癌と前立腺癌の研究から得た何千もの症例や対照群のDNAの分析を行っている。

CGEMSチームは、乳癌に関連するSNPを同定するため、ヨーロッパ系女性を対象に3段階のゲノムワイド関連解析を実施した。このCGEMS研究のデータは、CGEMSデータポータルサイトhttp://cgems.cancer.gov/で専門家向けに閲覧可能。

乳癌は、米国女性の癌による死因の第2位である。乳癌の家族歴がある女性は、血縁者に乳癌の家族歴のない女性よりも若年時で診断される場合が多く、乳癌では遺伝的感受性が重要であることを示している。BRCA1とBRCA2遺伝子などのいくつかの遺伝的多様性が、遺伝的乳癌発症リスクの一因であることが確認されている。しかし、このような多様性が乳癌の原因に占める割合は低く、よくみられる遺伝的多様性と未だ確認されていない遺伝的多様性が組み合わさってリスクを増大させる可能性があると考えられている。

CGEMSチームは前立腺癌に関する類似したデータを過去に発表している(www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/CGEMSprostateUpdate)。前立腺癌は男性の癌による死因の第3位である。前立腺癌リスクに関連する同義遺伝子の多様性が専門家らにより発見されている。

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Thomas G, Jacobs KB, Kraft Pらは乳癌の多段階ゲノムワイド関連分析により、1p11.2 と14q24.1 (RAD51L1)に新たな2つのリスク対立遺伝子を確認した。Nature Genetics誌電子版2009年3月29日号に掲載。

NCIの癌感応遺伝マーカー(CGEMS)プロジェクトについての問い合わせは、http://cgems.cancer.govを参照。

NCIは米国国立癌プログラムとNIHの取り組みを主導し、癌予防と癌生物学についての研究、新たな治療の開発、新人研究者の研修や指導により、癌による負担を劇的に軽減させ、癌患者とその家族の生活を向上させている。癌についての問い合わせは、NCIホームページwww.cancer.gov、またはNCI癌情報サービス:電話1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)まで。

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柴田 慶子訳
原 文堅(乳腺科)監修
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原文

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