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ジョンズホプキンスの研究者らが細胞分裂と酸素濃度の関連性を示す/ジョンズホプキンス大学

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ジョンズホプキンスの研究者らが細胞分裂と酸素濃度の関連性を示す/ジョンズホプキンス大学

2011年6月11日

研究結果は長年のパラドックスも解明

 

細胞は酸素が存在すると盛んに増殖し、通常、酸素が不足すると増殖を停止する。これは簡単なようだが、酸素を感知する細胞機構と細胞分裂を制御する細胞機構との直接的な関連性はこれまで解明されていなかった。しかし、ジョンズホプキンス大学の研究者らは、細胞分裂を促進するMCMタンパク質が酸素センサーであるHIF-1(低酸素誘導因子)タンパク質も直接制御することを、6月10日付のMolecular Cell誌で発表した。

 

「なぜ超過量のMCMタンパク質が細胞内に存在するのか、ずっと謎でしたがようやくその理由の一つを発見しました。」とジョンズホプキンス大学C. Michael Armstrong 医学部教授、細胞工学研究所血管細胞工学プログラムディレクター、および McKusick-Nathans遺伝子医学研究所の一員であるGregg Semenza医学博士は述べる。「われわれのデータから、MCMタンパク質は細胞分裂機構と細胞の環境変化への適応を助長するタンパク質との間のクロストークを仲介することが示唆されます。」

 

1990年代にHIF-1タンパク質を発見して以来Semenza氏のチームは、酸素濃度を感知し低酸素環境下でも細胞生存率を高める遺伝子を活性化する仕組みを研究してきた。HIF-1が物理的に相互作用するタンパク質を見つけるため、チームは根気よく生化学的な探索を行い、HIF-1を使用してMCM7を抽出した。MCM7は、細胞分裂の準備ができるとDNAに結合して複製を開始することで知られている、より大きな関連タンパク質群のひとつである。また別のタンパク質結合法を用いて、チームはその後HIF-1がMCM3に結合することも発見した。

 

HIF-1は低酸素濃度を感知すると、新生血管の成長を促進する遺伝子や、エネルギー産生のための酸素消費量を変化させるため細胞の代謝を変える遺伝子など、細胞が適応できるように遺伝子を活性化する。MCMタンパク質のHIF-1に及ぼす影響あるいはHIF-1への反応を理解するために、研究者らはMCM3もしくはMCM7の存在下ならびに非存在下でのHIF-1の遺伝子活性度を調査した。その結果、MCMタンパク質濃度を上昇させるとHIF-1活性は低下し、MCMタンパク質の濃度を低下させるとHIF-1活性の上昇につながることを見出した。「より多くの細胞が酸素をさらに消費して酸素不足を一層悪化させるため、HIF-1は細胞に分裂しないよう指示を出します。一方MCMタンパク質の役割は、細胞分裂を誘発することです。したがってMCMタンパク質がHIF-1の作用に拮抗するのも当然です。」とSemenza氏は説明した。

 

チームは、細胞が低酸素環境下に24時間曝されるとMCM7が少なくなるようにみえることにも注目した。これがHIF-1と関係があるかどうかを確認するため、先ず、HIF-1を低酸素環境下に曝す方法あるいはHIF-1生成を促進する薬剤を使用する方法で、細胞内のHIF-1濃度を上げた結果、24時間後にMCMタンパク質濃度が低下していることを見出した。同時に、細胞からHIF-1を取り出した後、細胞を低酸素環境下に曝した結果、MCMタンパク質濃度に変化はみられなかった。これによって研究チームは、HIF-1はMCMタンパク質も制御するため、MCMタンパク質とHIF-1は互いの作用に拮抗すると結論づけた。「まるで綱引きのようです。」とSemenza氏は述べる。「酸素と栄養が豊富だとMCMタンパク質が勝ち、細胞は分裂する。酸素が不足するとHIF-1が勝ち、細胞分裂は阻止される。酸素の有無に基づいて細胞増殖を厳密に制御するためには、この相互拮抗作用が非常に重要であるかも知れません。」

 

本研究は米国国立衛生研究所(NIH)とジョンズホプキンス大学細胞工学研究所の資金提供を受けた。

本稿の著者は以下の通りである:Maimon Hubbi氏、Weibo Luo氏、Jin Baek氏そしてGregg Semenza氏(全員ジョンズホプキンスのメンバー)。

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マクドナルド 晋子 訳
峯野 知子 (分子薬化学)高崎健康福祉大学薬学部 准教授 監修
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 原文

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