2011/06/28号◆研究者に聴く「携帯電話と癌リスク―Dr. Martha Linet氏との対話」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/06/28号◆研究者に聴く「携帯電話と癌リスク―Dr. Martha Linet氏との対話」

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2011/06/28号◆研究者に聴く「携帯電話と癌リスク―Dr. Martha Linet氏との対話」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年6月28日号(Volume 8 / Number 13)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 研究者に聴く ◇◆◇

携帯電話と癌リスク―Dr. Martha Linet氏との対話

国際がん研究機関(IARC)は、6月22日付Lancet Oncology誌電子版に掲載された、人体に対する発癌リスク評価の研究論文の概要を公表した。この研究論文は、携帯電話による通話を「人体に対する発癌の可能性」と分類している。NCI癌疫学・遺伝学部門の放射線疫学主任であるDr. Martha Linet氏が、IARCの作業部会の決定と、携帯電話と癌リスクについて現在進行中の研究の要約を説明する。

携帯電話使用により癌リスクが増加するというエビデンスはありますか?

今日の多くの研究では、携帯電話の使用全般と腫瘤の発生には関連性が認められていません。しかし、少数ではありますが、通話時間が最長と分類された携帯電話使用者に、神経膠腫(グリオーマ)のリスク増加が認められた研究も一部存在します。肯定的な研究のなかには、結果が矛盾するものもあり用量反応関係を示していません。さらに、生物学的にもっともらしいメカニズムや、携帯電話が発癌原因となるという動物実験の裏づけもありません。

研究間に矛盾があるのはなぜですか?

多くの研究は、携帯電話の使用パターンについて脳腫瘍患者と対照者からの聞き取り調査のデータを基にしています。この種の自己報告データは必ずしも正確でないことが知られています。患者群は対照群より過大報告する傾向があり、また、左右どちら側で携帯電話を使ったのか記憶違いをしているかもしれません。携帯電話の技術は時間とともに劇的に変化していますが、研究の及ぶ期間と異なっています。また、携帯電話の使用方法も時とともに変化してきており、正確な記憶を呼び起こすことを一層難しくしています。

さらに脳に影響する無線周波暴露を実際に測定した疫学研究は一つもないため、暴露量は聞き取り調査データからの推測なのです。

携帯電話による通話を「人体に対する発癌の可能性がある」と分類したIARCの決定に対して、疫学団体はどのように対応していますか?

疫学専門家の間では活発な議論がなされており、また、疫学学会も関心をもっています。私たちは、研究においていくつか隔たりがあることを特定しており、現在実施中の研究で対処すべく努めています。以下が3つの主なものです。まず、13カ国の神経膠腫あるいは髄膜腫の患者5千人以上を対象として実施された携帯電話使用に関する国際的大規模研究Interphoneを含め、いずれの研究においても、多数の携帯電話ヘビーユーザーを長期間対象としたものは存在しません。そのため、癌リスクと高暴露の関係は極めて少数を対象としています。

2つ目には、小児期や青年期に携帯電話を使い始めた人における癌リスクについて、発表された研究はありません。

3つ目は、今日までに行われた動物実験は限られた数しかありませんが、現在、米国国家毒性プログラムで、何千ものげっ歯類を対象とした非常に大規模かつ良好な設計の実験が進行中です。この実験結果は、2014年に公表される予定です。

今後の研究についていくつか説明してください。

COSMOSと呼ばれる、主にスカンジナビアと北欧諸国が関与しているヨーロッパでの大規模研究があります。この研究は30~59歳の25万人を対象とし、繰り返しの聞き取り調査、携帯電話の契約者データとの比較、定期的に癌登録データとの連携などを行っています。

NCIが主導している米国内での研究は、異なる集団における携帯電話や無線周波の暴露と、髄膜腫やその他の脳腫瘍のリスクを調査しています。(詳細は下記囲み記事を参照ください)

そして、ヨーロッパ主導のもう1つの取り組みは、Interphoneを真似たMobi-Kidsと呼ばれるものです。Mobi-Kidsは、10~24歳の携帯電話使用者を対象とした脳腫瘍リスクを調査しています。

これらから受け取れる重要なメッセージは何ですか?

IARCの作業部会は、携帯電話による通話は発癌の可能性があると分類しました。可能性とは「起こりうる」という意味だという点に留意すれば肯定的な報告と解釈できますが、全般的には一貫したデータはありません。現在進行中の研究では、鍵を握るこうした研究ギャップに取り組んでおり、これまで放置されてきた疑問を解明する上で重要な情報がもたらされることでしょう。そして、脳腫瘍の発生傾向をモニターし続けることが大事です。

暴露を減らすために米国食品医薬品局(FDA)と米国連邦通信委員会により提案された手段には、携帯電話での通話時間や通話回数を減らす、携帯電話の代わりに有線電話を使う、ハンズフリーの携帯電話に変えるなどがあります。

もちろん、一般的な安全性で一番重要な提案は、運転中には携帯電話を使わないことです。

髄膜腫の疫学的な危険要因の研究についてNCIの癌制御・人口学部門の疫学と遺伝子研究プログラムは、髄膜腫に関する4つの集団の症例対照研究に財政支援をしています。研究者らは、頭蓋内髄膜腫患者及び比較のために性別、民族性、地域、年齢を同じくする健康な対照者から、携帯電話の使用などリスク要因の可能性がある情報を収集しています。これらの研究は、髄膜腫における環境や遺伝的リスク要因を分析する初めての集中的な取り組みです。

 

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野川 恵子 訳
小宮 武文(呼吸器内科/NCI Medical Oncology Branch) 監修
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